概要
- 米SVBが破綻、過去10年余りで最大規模の銀行破綻に
- 事情に詳しい関係者「資産の部分的売却もしくは会社全体での売却が検討されており、13日までの取引完了を目指している」
- 2月の非農業部門雇用者数は結果が予想を上回ったが、平均時給は前月比ベースでは過去1年間で最低の伸びとなった
- 雇用統計の結果やSVBの問題から、市場は再び年内の利下げを織り込み始めた
- 日銀金融政策決定会合は現状維持となり、一部で警戒の声があったサプライズは無しに
- 一部では4月会合での政策修正が予想されているが、就任早々は動けないとの見方もある
SVBが破綻、過去10年余りで最大規模の米銀行破綻に
テクノロジー新興企業が主要顧客の米シリコンバレー銀行(SVB)が経営破綻し、連邦預金保険公社(FDIC)の管理下に置かれました。SVBの破綻は、過去10年余りで最大規模の米国の銀行破綻です。
SVBは増資を計画していましたが上手くいかなかったことで、破綻処理に動いたカリフォルニア州の金融当局がFDICを管財人に選任しました。金利の急上昇によるポートフォリオの価値の下落やSVBの健全性への懸念から顧客が資金引き揚げを急いだこと、いわゆる取り付け騒ぎがSVBの破綻における主な要因となっています。
イエレン財務長官は「国内銀行システムの強靱さに変わりはない」との認識を示しました。さらに、SVBを巡る事態の展開に関しては「効果的なツールが規制当局にはある」と語っています。
しかしながら、SVBの破綻の影響はすでに世界中に広がり始めています。英国ではSVB・UK部門の破産手続きが申請される見込みであり、ハイテク企業約180社の経営トップらがハント英財務相に介入を求める書簡を送りました。
市場関係者は「最悪のシナリオは金融安定を巡る問題の兆候があるにもかかわらず、来週のCPIが高い数字になり、米当局が行動を強いられることだ」との見方を示しています。SVBの事情に詳しい関係者は、「資産の部分的売却もしくは会社全体での売却が検討されており、13日までの取引完了を目指している」と明らかにしており、13日までに実際に取引が完了すれば混乱は沈静化に向かいそうです。
SVBの問題から米金融セクターに対する懸念が広がり、銀行株は世界的に大きく売られています。資産の逃避先として安全資産とされる円が買われ、米国債利回りの低下によってドルが売られたことでドル円も急落を見せました。
雇用統計は雇用者数が予想を上回るも賃金は下回る
2月の非農業部門雇用者数は市場予想が22.5万人増、結果が31.1万人増となり、結果が予想を上回りました。雇用者数の増加が市場予想を上回ったのは、これで11カ月連続です。
平均時給は市場予想が前月比0.3%増、結果が0.2%増となり、こちらは結果が予想を下回っています。平均時給は前月比ベースでは、過去1年間で最低の伸びとなりました。
今回の雇用統計の結果は、雇用市場がなおタイトであることを示しています。とはいえ、平均時給の伸びが鈍化したことで、FRBが利上げペースを加速させるかどうかは難しい判断になりそうです。
FRBのパウエル議長は利上げペースについて、「経済データ全体が正当化するのであれば、加速させる用意があるだろう」とタカ派的な発言を述べています。雇用統計が強弱入り交じる内容となり、利上げペースの判断材料として2月消費者物価指数(CPI)の重要性が一段と高まりそうです。
なお、市場は先週まで利下げは2024年までないと見込んでいましたが、雇用統計の結果やSVBの問題から再び年内の利下げを織り込み始めています。
日銀金融政策決定会合は現状維持でサプライズ無しに
日銀は金融政策決定会合で、長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)政策を中心とした大規模な金融緩和策の現状維持を決めました。長期金利の許容変動幅も上下0.5%のままになり、一部で警戒の声があったサプライズは無しとなっています。
今回現状維持となったことで、市場の関心は植田次期総裁の政策修正のタイミングやSVBの問題に移ることになるでしょう。一部では4月会合での政策修正が予想されていますが、政治面への影響やタカ派的な印象を避けるため、就任早々は動けないとの見方もあります。
黒田総裁は過去10年の大規模な金融緩和について、「2%の物価安定目標を実現できなかったことは残念」との認識を示しました。しかしながら、金融政策の具体的な効果として「デフレを解消して経済を活性化させ、400万人以上の雇用創出で就職氷河期と言われた状態を完全に解消したこと」などを挙げ、大規模緩和を続けてきたことに関しても「間違っていなかった」と語っています。
金融政策決定会合後はサプライズが無かったことで円を売りなおす動きが見られ、ドル円は下落することになりました。