概要
- クレディ・スイスの経営不安・買収・清算が問題に
- クレディ・スイスの時価総額約1兆円を大幅に下回る形で買収がまとまる
- 2月の米コアCPIが前月比で市場予想を上回る伸びに
- 市場関係者「今回のCPIは、FOMCに様子見を決め込む余裕などないことを浮き彫りにしている」
- ECBが当初の計画通り政策金利を0.5ポイント引き上げ
- 今年のコアインフレ率予想が引き上げられた
クレディ・スイスが経営不安、中銀は利上げできるか
グローバルバンクであるクレディ・スイスの経営不安、それにともなう買収、清算が問題になっています。さらに、それに続く国際資本市場の激動を受け、各国中銀の次の動きは非常に難しくなりました。
現在のインフレ率は欧米の中銀の目標である2%よりはるかに高く、ユーロ圏のコア消費者物価指数(CPI)が過去最高を更新するなど、一部の経済指標で悪い結果が見られています。これらのことから、銀行の与信が低くなることが考えられ、景気の見通しに悪影響が出てきそうです。
欧州中央銀行(ECB)は今月、当初の予定通りに政策金利の0.5ポイント引き上げを決定しましたが、今後の金融政策の具体的な方向性は示していません。米連邦準備制度理事会(FRB)も今後の動きについては慎重な姿勢を取っていますが、ECBを参考にするのであれば、少なくとも今月に0.25ポイントの利上げをすることが想定されます。
シリコンバレー銀行(SVB)の破綻から始まった危機の深刻化回避を目指すFRBは、顧客の預金引き出し需要に応える安全装置を提供するため、通常より貸し付け条件が緩やかな「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」を導入すると発表しました。BTFPは米国債や住宅ローン担保証券を含む適格担保を、償還前でも額面通りの価格でFRBが評価し、担保にして、最長1年の融資をおこなうという措置です。
スイス国立銀行(中銀)も資金供給の枠組みを通じて、「クレディ・スイスに対し流動性を供給する用意」を表明しています。その後、クレディ・スイスは最大7兆円を借入れると発表しました。
今週月曜日の東京市場が始まる前にはなんとかUBSによる買収がまとまり、市場はポジティブな反応を見せています。約4300億円の株式交換と政府の約1.3兆円保証が買収の条件であり、クレディ・スイスの時価総額約1兆円を大幅に下回る形になりました。
市場関係者は「最終的にはリングフェンスが機能し、FRBが利上げに戻るというのが、われわれの見解だ。FRBは結局インフレと闘わざるを得なくなるだろう」との見方を示しています。一方、3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送りや利下げを見込む市場関係者もおり、やや落ち着いてきたものの混乱はまだ続いているようです。
現在、市場ではFRBが3月に0.25ポイントの利上げをし、6月からは利下げするという予想が中心になっています。とはいえ、最近は毎日のように金利の見通しが変わる状況であり、今回は軽く参考にする程度でとどめておいた方がよさそうです。
米コアCPIが予想を上回る伸びに
2月の米CPIは市場予想が前月比0.4%上昇、結果も同じになりました。しかし、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアCPIは、市場予想が前月比0.4%上昇、結果は0.5%上昇となり、結果が市場予想を上回っています。
今回の結果はリスクが増大している銀行セクターへの悪影響を押さえつつ、インフレも抑え込まなければならないFRBにとって、厳しい結果になりました。コアCPIは前年同月比では5.5%上昇であり、FRBが目標に掲げる2%にはまだ遠い数値です。
SVBの破綻が起きる前には、パウエルFRB議長は利上げペースの再加速に言及していました。とはいえ、現在は小幅利上げや利上げ休止、さらには利下げを予想する市場関係者もいるほどの状況になっています。
市場関係者は「今回のCPIは、FOMCに様子見を決め込む余裕などないことを浮き彫りにしている」との見解を示しました。加えて、「全預金者の資金を保証するための措置には、金融危機を封じ込めて金融引き締め継続の余地を作るという意味もあった。それにより、FRBは金融安定と物価安定のどちらかを選ぶことを回避できる」と語っています。
ECBが計画通り0.5ポイントの利上げを実施
ECBが当初の計画通り政策金利を0.5ポイント引き上げました。クレディ・スイスが問題になっていますが、今後の動きについては示唆しませんでした。今回の利上げ幅は市場予想通りで、ユーロ圏の政策金利は3.5%となりました。
ECBのラガルド総裁は政策金利発表後の記者会見で、将来の金利の軌道について「現時点で決定することは不可能だ」との認識を示しています。さらに、「われわれが想定する基本シナリオが確認され、それが持続するならば、さらなる行動が必要だ」と語りました。
政策決定と共に公表された四半期経済予測では、今年のインフレ率予想が下方修正される一方、コアインフレ率予想は引き上げられています。ECBが重視するコアインフレ率予想が引き上げられているということは、今後も利上げを続ける可能性が高いと言えるかもしれません。