概要
- 米コアCPIが前月比で伸びが鈍化したものの、少なくともあと1回は利上げを実施する見込み
- リッチモンド連銀バーキン総裁「政策当局者らには物価抑制に向け、まだやるべき仕事がある」
- 米小売売上高は市場予想を大きく下回り、2か月連続での減少
- シカゴ連銀グールズビー総裁「景気の熱を冷ますためにFRBが講じてきた措置が効果を表しつつある可能性を示唆する」
- 植田新総裁「YCCとマイナス金利は継続適当」
- 市場関係者「植田総裁が慎重な姿勢を示したことが材料視され、円売りに安心感」
米コアCPIが前月比で伸び鈍化も5月は利上げか
3月の米消費者物価指数(CPI)は総合CPIが前年同月比で市場予想が5.1%上昇、結果が5.0%上昇、前月比では市場予想が0.2%上昇、結果は0.1%上昇となり、どちらも結果が市場予想を下回りました。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは前年同月比で市場予想が5.6%上昇、結果も5.6%上昇、前月比では市場予想が0.4%上昇、結果も0.4%上昇となり、どちらも結果と市場予想が一致しています。
ただし、コアCPIは2月が0.5%上昇となっており、3月は0.1%ではあるものの伸びが鈍化しました。総合CPIは前年同月比で2月の6.0%上昇からは大きく伸びが鈍化しましたが、ロシアのウクライナ侵攻直後でエネルギー価格が急騰していた昨年3月と比べていることが要因です。
物価の基調を把握するために利用されることの多いコアCPIが前月比で伸びが鈍化し、総合CPIも前年同月比で大きく伸びが鈍化したものの、3月の雇用統計では労働市場の強さが続いていることが示されました。そのため総合的に考えれば、米連邦準備制度理事会(FRB)は少なくともあと1回は利上げを実施する可能性が高そうです。
市場関係者は「今夏にわたって住居費からの強いディスインフレ(インフレ率が低下していく状態)圧力が想定される。ただし、労働市場の堅調継続やOPECプラスの減産などを踏まえれば、連邦公開市場委員会(FOMC)は来月に0.25ポイントの追加利上げを決定する見込みだ」と語りました。また、米リッチモンド連銀のバーキン総裁は「政策当局者らには物価抑制に向け、まだやるべき仕事がある」との認識を示しています。
米CPIの発表後はドルが主要通貨に対して全面安となり、ドル円は133円台前半から30分後には132円台半ばまで下落しました。
米小売売上高が2か月連続で減少、市場予想も下回る
3月の米小売売上高は市場予想が0.5%減、結果は1%減となり、結果が市場予想を下回りました。市場予想を大きく下回っただけでなく、2か月連続での減少となっています。自動車販売が1.6%減、ガソリンスタンドの売上高は実に5.5%減と2020年4月以来の大幅な減少です。
今回の結果は、物価上昇や借り入れコストの上昇の影響などから、家計支出が冷え込みつつあることを示唆しています。金融状況が引き締まり、景気減速が始まっているとも考えられるでしょう。
米シカゴ連銀のグールズビー総裁は小売売上高について、「景気の熱を冷ますためにFRBが講じてきた措置が効果を表しつつある可能性を示唆する」との見解を示しました。ただし、「物価に関する一部のカテゴリーには明らかな粘着性がある」とも指摘しています。
現在、市場では5月に0.25%の利上げをして金利は5〜5.25%でピークとなり、9月には0.25%の利下げをすると予測されています。
植田日銀新総裁「YCCとマイナス金利は継続適当」
日銀の植田和男新総裁が就任記者会見をおこない、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)政策とマイナス金利政策について、「共に継続が適当」との認識を示しました。植田総裁は「現状の経済・物価・金融情勢を鑑みると、現行のYCCを継続するということが適当」とし、マイナス金利政策に関しては「現在の基調的なインフレ率がまだ2%に達していないという判断の下では、継続するのが適当である」としています。
一方、足元の物価動向には「良い動き、良い芽が出てきていることは確かであり、基調的なインフレ率が少し上がってきている」と述べました。高水準の賃上げとなっている今年の春闘のような動きが持続した場合、「より高い基調的なインフレ率、2%の安定的・持続的なインフレの達成につながる可能性は十分ある」との見解も示しています。
市場関係者は「YCC政策の変更についてもう少し踏み込むという期待が肩透かしに終わった」と指摘しました。別の市場関係者は「植田総裁が会見で、現行の政策維持や正常化に向けて慎重な姿勢を示したことが引き続き材料視されて、円売りに安心感がみられている」としています。
植田総裁がYCCやマイナス金利政策について現状維持が適当との認識を示したことを受け、ドル円は132円台前半から一時133円台後半まで上昇しました。