先行き不透明なファースト・リパブリック、日銀が多角的レビューに着手

FXマーケットニュース。2023年5月1日
目次

概要

  • ファースト・リパブリック・バンクの総預金残高が昨年末から約4割減少
  • 関係者「FDICは今週末にも、ファースト・リパブリックを管理下に置いて売却する可能性」
  • 日銀が政策金利のフォワードガイダンスを廃止し、1年から1年半程度の時間をかけて「多角的なレビュー」をおこなうことを発表
  • 発表後はユーロ円が150円台まで上昇し、2008年9月以来の高値に
  • 3月の米PCEは、基調的なインフレの高止まりを示唆
  • 「FOMC会合で0.25ポイントの追加利上げがおこなわれる」との見方が強まった

米ファースト・リパブリック・バンクは先行きが見えない状況に

米地銀を巡る緊張は緩和の兆しが見えていましたが、銀行システムへの懸念がまた高まっています。これはファースト・リパブリック・バンクが発表した四半期決算を受け、改めて経営破綻のリスクが意識されたことが要因です。

四半期決算では、複数の大手銀行が3月半ばに計約300億ドル(約4兆円)を預け入れたにも関わらず、総預金残高が昨年末から3月31日までに約4割も減少して1045億ドルとなったことが示されました。

ファースト・リパブリックは「前例のない預金流出」に対応するため、「人員を最大25%削減する計画」で、「資本基盤の強化に取り組む中で戦略的選択肢を検討している」と説明しています。もし他の銀行も預金の流出に備えて、融資を絞るなど貸し渋りに動くようなことがあれば、企業の設備投資や個人の住宅購入の抑制につながり、景気減速に拍車がかかることも考えられそうです。

ファースト・リパブリックの預金や資金調達の動向は、米連邦預金保険公社(FDIC)が監視しています。しかしながら、複数の関係者によると、介入の決定はまだ下しておらず、一部のFDIC高官は、「ファースト・リパブリックの経営陣が財務強化に向け民間レベルの協議を継続する」との見解を示しました。

現在、大手金融機関は政府がファースト・リパブリックを管理下に置いた上で、ファースト・リパブリックや、その資産への買収提案を募る可能性に備え始めています。大手銀行はここ数日間、ファースト・リパブリック救済のための資金提供に後ろ向きな姿勢でしたが、一部の銀行は入札がおこなわれた場合には参加することに前向きなようです。

JPモルガン・チェースなどの大手銀行はファースト・リパブリックについて、「政府の管理下に置かれた後、買収する提案をおこなうことを計画している」と報じられています。また、関係者は「FDICは今週末にも、ファースト・リパブリックを管理下に置いて売却する可能性がある」としています。

ファースト・リパブリックの株価は、4月28日の終値が3ドル台となり、3月の終値である13ドルの4分の1以下になっています。銀行システムへの懸念が高まり続ければ、米政策金利の利下げ時期に影響を与える可能性も十分あるでしょう。現在、市場では5月に利上げを停止し、11月に利下げを開始すると予想されています。

日銀が政策金利指針を廃止、多角的レビューに着手

日銀は金融政策決定会合で政策金利のフォワードガイダンス(指針)を廃止し、1年から1年半程度の時間をかけて「多角的なレビュー」をおこなうことを決めました。長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)政策を軸とした、現行の大規模な金融緩和策は維持されています。

日銀は発表文で、「様々な金融緩和策がわが国の経済・物価・金融の幅広い分野と、相互に関連し、影響を及ぼしてきたことを踏まえて多角的レビューを実施する」としました。金融政策の先行きについては、「内外の経済や金融市場を巡る不確実性が極めて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していく」と説明し、当面は金融緩和を続ける姿勢を明確にしています。

日銀の発表後は週末で市場が閉じる時間まで円売りが優勢となり、特にユーロ円は150円台まで上昇し、2008年9月以来の高値を付けました。

米3月個人消費支出、基調的なインフレの高止まりを示唆

3月の米個人消費支出(PCE)は、総合が市場予想前年同月比4.1%上昇、結果が4.2%となり結果が市場予想を上回りました。コアPCEは市場予想前年同月比4.6%上昇、結果も4.6%となり結果と市場予想は同じとなっています。

米連邦準備制度理事会(FRB)は総合で2%を目標にしていますが、物価の基調を測る上ではコア指数の方が優れているとして特に注目しています。今回のPCEの結果は基調的なインフレの高止まりが示唆されており、「米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で0.25ポイントの追加利上げがおこなわれる」との見方を強める内容になりました。

ただし、市場が予測する6月の利上げ確率は、まだ20%程度であり、依然として5月での利上げサイクル終了が予測されています。

FXマーケットニュース。2023年5月1日

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