概要
- 民主党のバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長が、債務上限問題についての原則合意を取りまとめた
- 債務上限の適用停止に加え、非国防支出を今後2年間にわたり、ほぼ現行の水準に据え置く歳出合意が盛り込まれた
- 4月の米PCEは、総合とコアが共に前月から伸びが加速
- クリーブランド連銀のメスター総裁「現時点においてデータやインフレ数値の現状を見る限り、もう少し引き締める必要があるだろうと強く思う」
- 5月の東京都区部コアコアCPIが、約41年振りの高い伸びに
- コアCPIは前月から伸びが鈍化しているものの、日銀の想定とは距離がある
バイデン大統領が共和党と債務上限引き上げで原則合意
民主党のバイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長は、デフォルトにおちいる恐れがある期限が9日後に迫る中で、交渉が難航していた連邦政府の債務上限問題についての原則合意を取りまとめました。後は法案として上下両院で可決される必要がありますが、合意には民主党と共和党の両方の強硬派から反対が出ることが想定されています。
マッカーシー下院議長は上限の実質的な引き上げに向けて法案を作成し、5月31日に採決をおこなう方針を表明しました。一方、バイデン大統領は「合意内容は妥協の産物であり、誰もが望むわけではないことを意味する」と指摘しています。
事情に詳しい関係者は、「原則合意には債務上限の適用停止に加え、非国防支出を今後2年間にわたり、ほぼ現行の水準に据え置く歳出合意が盛り込まれた」と語っています。債務上限適用停止の期間は2025年1月までで、24年11月の大統領・議会選挙後までとなりました。
2025年に1月近くになると、また債務上限問題が発生することになりますが、今回に関しては問題の先送りがほぼ確定したと言っていいでしょう。ただ、「補助的栄養支援プログラム(SNAP)」として知られる低所得者向け公的食料費補助は、就労義務の適用される年齢が段階的に54歳にまで引き上げられることになりました。
ドル円は140円台に到達し、昨年に日本政府と日銀が24年ぶりとなる円買い介入に踏み切った145円台にどんどん近づいてきています。ここからさらに上昇するようであれば、まずは日本の要人による口先介入に注意すべきかもしれません。
米PCEは伸びが加速、FRBに利上げ圧力
4月の米個人消費支出(PCE)は、市場予想が前年同月比4.3%上昇、結果が4.4%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。さらに、前月の4.2%上昇から伸びが加速しています。
また、食品とエネルギーを除くコアPCEは、市場予想が前年同月比4.6%上昇、結果が4.7%上昇となり、こちらも結果が市場予想を上回りました。加えて、前月の4.6%上昇から伸びが加速しています。
物価上昇圧力と堅調な需要が続いていることが明らかになり、米連邦準備制度理事会(FRB)への利上げ圧力につながりそうです。現在、市場は6月の0.25ポイント利上げ、11月には0.25ポイント利下げを予想しています。
基調を示すコアPCEは昨年ピークを付けて以降鈍化してきていますが、数値があまり下がっていないため、物価上昇圧力が強い状況は続くかもしれません。さらに、FRBのパウエル議長が重要としている、住宅・エネルギーサービスを除くサービス業の価格指数は前月比0.4%上昇と、1月以来の高い伸びを見せました。
クリーブランド連銀のメスター総裁はPCEの結果について、「発表されたデータは、我々の仕事がまだ終わっていないことを示唆した」との見方を示しています。加えて、「現時点においてデータやインフレ数値の現状を見る限り、もう少し引き締める必要があるだろうと強く思う」とも述べました。
東京都区部コアコアCPIが約41年振りの伸びに
全国の物価の先行指標となる5月の東京都区部の消費者物価指数は、生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIが市場予想前年同月比3.9%上昇、結果も3.9%上昇となり、結果と市場予想が一致しました。3.9%上昇は1982年4月以来となる約41年振りの高い伸びであり、基調的なインフレ圧力の強さを示しています。
生鮮食品を除くコアCPIは、市場予想が前年同月比3.4%上昇、結果が3.2%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。前月の3.5%上昇から伸びが鈍化しており、再生可能エネルギー発電促進賦課金が引き下げられ、電気代のマイナス幅が1970年1月以降で最大となったことが主な要因になっています。
日銀は「輸入物価の鈍化などを背景に、2023年度半ばにかけて目標とする2%を下回る水準にプラス幅を縮小していく」との見通しを示しています。しかしながら、市場関係者は、「価格転嫁力は長引いており、円安の影響の一巡も見られず、日銀の想定する23年度1.8%には距離がある」と指摘しました。