概要
- 5月のPCEは総合が前年同月比で約2年ぶりの低い伸びに
- パウエル議長「年内に少なくともあと2回利上げがあると、大半の政策当局者は予想」
- 6月のユーロ圏CPIは総合が3カ月連続の低下も、コアは前月から上昇
- デギンドス副総裁「7月の利上げは既成事実」
- 6月の東京都区部コアCPIの伸びが加速
- 市場関係者「(政策修正に関して)総裁も慎重にみているので引き締めには簡単にはいかない」
米PCEが約2年ぶりの低い伸びに
5月の米個人消費支出(PCE)は総合が市場予想前年同月比3.8%上昇、結果も3.8%上昇となり、市場予想と結果が一致しました。一方、食品とエネルギーを除くコアは市場予想が前年同月比4.7%上昇、結果が4.6%上昇となり、結果が市場予想を下回っています。
総合は前年同月比で下落基調を見せており、今回は約2年ぶりの低い伸びとなりましたが、コアに関しては昨年12月以降ほぼ横ばいです。PCEは米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する経済指標であり、総合の伸びが鈍化していることはFRBにとってポジティブなことですが、目標とする2%まではまだ長い道のりになるでしょう。
市場関係者は「消費の伸び鈍化は、FRBにとっては歓迎すべきことだろう」とした上で、「金融政策のごく短期の軌道がこれで変わる公算は小さく、FRBは政策金利を一段と引き上げ、より景気抑制的なスタンスにする必要があるとの見解にコミットしている」と指摘しました。パウエルFRB議長も欧州中央銀行(ECB)フォーラムのパネル討論会で、「政策は景気抑制的だが、十分に抑制的ではない可能性がある。抑制的な政策はまだ十分に長い期間行われていない」とタカ派的な発言をしています。
さらに、米シカゴ連銀のグールスビー総裁も「米連邦公開市場委員会(FOMC)が7月に利上げを行うべきか否かを判断するには時期尚早だ」としつつ、「インフレ率は依然として目標を大幅に上回っており、その状態が予想以上に持続的であることが明らかになっている」と語りました。
パウエル議長は「年内に少なくともあと2回利上げがあると、大半の政策当局者は予想している」としていますが、市場は7月に0.25ポイントの利上げを行い、来年3月に0.25ポイントの利下げをすることを予想しています。
ユーロ圏CPIは総合の伸びが鈍化するもコアは加速
6月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想前年同月比5.6%、結果が5.5%となり、結果が市場予想を下回りました。加えて、燃料や食料品など変動の激しい項目を除くコアも市場予想が前年同月比5.5%、結果が5.4%となり、こちらも結果が市場予想を下回っています。
総合はエネルギーコストの低下が主な要因となり、前月の6.1%から5.5%へと大きく低下し、ロシアがウクライナに侵攻して以来最も低い水準となりました。総合は3カ月連続の低下です。
ただし、コアは前月の5.3%から5.4%に増加しており、来月の利上げは確定的になったと言えます。欧州中央銀行(ECB)のデギンドス副総裁も、「7月の利上げは既成事実だが、続く9月はどうなるか分からない」と語っていることから、少なくとも7月は利上げをする可能性が高いです。
また、ECB理事会メンバーのマクルーフ・アイルランド中銀総裁は、「利上げ停止時期を巡る判断は複雑になっている」と述べています。9月の会合で利上げするかどうかは、今後の経済指標の結果に大きく左右されそうです。
東京都区部コアCPIの伸びが加速、電気代が寄与
全国の物価の先行指標となる6月の東京都区部の消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くコアが市場予想前年同月比3.4%上昇、結果が3.2%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。ただし、前月の結果が速報値の3.2%上昇から3.1%上昇に改定されたことから、前月と比べて伸びが加速しています。東京電力による家庭向け電気料金の値上げが、今回の伸び加速の主な要因になりました。
生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは市場予想前年同月比4.0%上昇、結果が3.8%上昇となり、こちらも結果が市場予想を下回っています。1982年4月以来の伸び率となった前月の3.9%上昇を下回っており、2022年1月以来の伸び鈍化となりました。
日銀はコアCPIが輸入物価の下落などの影響で、2023年度半ばにかけてプラス幅を縮小すると予想しています。しかし、インフレの基調が強いことから、次回7月の金融政策決定会合で、物価見通しが来年度以降を含め上方修正されるとの見方もあります。
とはいえ、市場関係者は「底堅い内需を見ても、経済は正常化してきている」としつつ、政策修正に関して「日銀が望むような価格転嫁や賃金上昇を伴う物価上昇が定着していく可能性は極めて低く、総裁も慎重にみているので引き締めには簡単にはいかない」と述べました。