概要
- 6月のCPIは総合とコアの伸びが急激に鈍化
- ただし、7月のFOMCで利上げを再開する見通し
- ECBが6月に開催した政策委員会の議事要旨で、当局者らが0.5ポイントの利上げも検討していたことが分かった
- 7月も利上げをする可能性が非常に高いが、9月以降は要人が慎重な姿勢を示している
- 元日銀理事の早川氏が、「日銀が今月開く金融政策決定会合で、YCCにおける政策修正を行う可能性がある」との見解を示した
6月の米CPIは伸びが急激に鈍化、高まる利上げ終了観測
6月の米消費者物価指数(CPI)は総合が市場予想前年同月比3.1%上昇、結果が3%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。3%上昇という数字は過去2年余りで最も低い伸びであり、前月は4%上昇だったことから1%も低下したことになります。
また、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアCPIは市場予想前年同月比5%上昇、結果が4.8%上昇となり、こちらも結果が市場予想を下回りました。2021年終盤以来の低い伸びとなり、前月は5.3%上昇だったことから0.5%低下したことになります。
約1年前に総合が9.1%でピークを付けて以降、約6%低下しており、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標とする2%まで残り1%となりました。ただ、依然として2%には距離があることから、FRBは7月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げを再開すると見られます。
総合CPIが急激に減速したのは、総合CPIの伸びがピークになった2022年6月と比較していることが主な理由です。当時はロシアのウクライナ侵攻を受け、エネルギー価格が急騰し、インフレ率は40年ぶりの高水準でした。7月からは前年同月比の数字は、相対的に低い数字との対比になります。
リッチモンド連銀のバーキン総裁は、「CPIは6月に鈍化したとはいえ、まだ高過ぎる」との認識を示しています。加えて、「手を引くのが早過ぎればインフレが再び強まり、そうなればFRBはさらなる行動が必要になる」と説明しました。
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁も、「インフレ率を目標水準に下げる取り組みが終了したと宣言するのは時期尚早だ」との見方を示しています。さらに、CPIのデータについては「非常にポジティブだった」と評価しつつ、「インフレ率を2%に押し下げる決意は変わらないため、これについては様子見モードだ」と語りました。
特にウォラーFRB理事は、「インフレ率を当局目標まで押し下げるには年内2回の追加利上げが必要だ」と非常にタカ派的な姿勢を見せています。ニューヨーク市場ではCPIの結果を受けてドル円が急落し、一時138円70銭台を付けました。
ECB議事要旨、0.5ポイントの利上げも検討
欧州中央銀行(ECB)が6月に開催した政策委員会の議事要旨を公表し、当局者らが0.5ポイントの利上げも検討していたことが分かりました。議事要旨によれば、「0.25ポイントの利上げを支持する非常に幅広いコンセンサスがあった」が、「高インフレが根付くリスクを考慮し、0.5ポイントの引き上げを望む意見も当初表明された」そうです。
大幅な利上げが提案された背景には、基調的なインフレへの懸念があったとみられます。基調的なインフレを示すコアCPI(消費者物価指数)が中々低下しないことが、0.5ポイントの利上げの検討につながりました。
また、コアCPIが6月も前年同月比5.4%と引き続き目標の2%を大きく上回ったことから、ECBは7月も利上げをする可能性が非常に高いです。ECBの利上げはすでに8会合連続ですが、根強いインフレを踏まえて利上げを継続することになりそうです。
ただし、9月以降の政策委員会については、今までタカ派的な発言が多かった要人も、最近は「次のステップは今後のデータ次第」といった慎重な姿勢を見せています。27日にはユーロ圏の政策金利が発表されますが、その後に行われるラガルドECB総裁の記者会見が9月に利上げを行うかの大きなヒントになるかもしれません。
元日銀理事の早川氏「7月会合でYCC修正の可能性」
元日銀理事の早川英男氏が、「日銀が今月開く金融政策決定会合で、イールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)における、長期金利の変動幅を拡大する政策修正を行う可能性がある」との見解を示しました。「経済・物価情勢の展望(展望リポート)を議論する子今月の会合では、2023年度の消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)上昇率の見通しが従来の1.8%から2%台半ばに上方修正される公算が大きい」とし、「それだけ物価見通しを上げるのにYCCを維持するのは無理がある。何らかの修正を行うだろう」と語っています。
もし実際に物価見通しの上方修正と合わせた政策修正を行った場合、政策正常化の思惑が強まることでドル円の下落圧力になりそうです。