概要
- 7月の米CPIは、コアCPIが4カ月連続での下落となった
- FOMCが9月会合で政策金利を据え置くとの観測が強まっている
- 第2四半期の英GDPが四半期として、この1年余りで最も高い数値に
- 英中銀に追加利上げを求める圧力が維持される見通し
- 7月のPPIは総合が前年同月比で前月から伸びが加速
- サービス価格が約1年ぶりの高い伸びとなったことが大きな要因に
米CPIのコア指数が4カ月連続で低下
7月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想前年同月比3.3%上昇、結果が3.2%上昇となり、結果が予想を下回りました。また、食品とエネルギーを除くコア指数は市場予想前年同月比4.7%上昇、結果も4.7%上昇となり、こちらは結果と市場予想が一致しています。
ただし、インフレの基調を示唆するコアCPIが4カ月連続で下落したことにより、「FRBがリセッション(景気後退)を引き起こさずにインフレを沈静化する」との期待が一段と高まりました。さらに、米連邦公開市場委員会(FOMC)が、9月会合で政策金利を据え置くとの観測も強まっています。
今後の方針を巡ってはFOMCのメンバー内で意見が割れており、「過去1年半の利上げで任務は完了したと主張する」ハト派と、「拙速に利上げを終了すればインフレの再加速を招きかねないと懸念する」タカ派に分かれています。市場は利上げ終了との見方が主流ですが、パウエル議長が7月と9月の会合での連続利上げの可能性を排除していないことには注意すべきでしょう。
米国の要人は今後の政策決定について、入手されるデータに左右されるとの考えを再三にわたって示しており、9月の会合までに発表される8月のCPIと雇用統計に注目が集まりそうです。米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁はCPIの結果について、「これはわれわれの勝利を告げるデータではない。やるべき仕事はまださらにある。」としつつ、FOMCの将来の行動に関して、「自身はさらなる情報やデータに依存している」と発言しています。
市場関係者は「FRBが9月に金利を据え置くには十分だが、勝利宣言するには不十分だ」との見方を示しました。また、別の市場関係者は「FRBが十分な措置を講じたとは思わない。FRBが年末までに自らの仕事ぶりを自画自賛し、その直後にインフレ率が再加速するリスクがある」との見解を示しています。
英GDPが1年強ぶりの強い結果に
4〜6月(第2四半期)の英経済成長率(GDP)速報値は市場予想が前期比0.0%、結果は0.2%となり、結果が市場予想を上回りました。四半期としてはこの1年余りで最も高い数値であり、イングランド銀行(英中央銀行)に追加利上げを求める圧力が維持されそうです。
GDPでは貿易収支が重しになりましたが、製造業や建設業、個人消費がそれぞれ堅調でした。しかし、新型コロナウイルス流行前の水準には依然として回復できていません。
第2四半期のGDPは新型コロナウイルス流行前の19年終盤を0.2%下回っており、今後の見通しについても厳しい状況を予想する声が多くなっています。市場関係者は「金利上昇の悪影響は大半がまだこれから出てくる。年内に浅い景気後退に向かうというコンセンサスより弱気な予想を維持する」と述べました。
ただし、ハント財務相は「政府のインフレ対策が効果を上げ始めている。経済成長に必要な強い基盤が築かれつつあるということだ」と語っています。加えて、JPモルガンは今回のGDPの結果を受けて、2023年の英経済成長率見通しを従来の0.5%から0.6%に引き上げました。
ポンド円は追加利上げを求める圧力が続くとの思惑からポンドが買われて急騰し、183円台半ばから一時184円台前半まで上昇するも、その後は大きく下落する荒っぽい展開になりました。
米PPIの伸びが加速、サービス価格が約1年ぶりの高い伸び
7月の米生産者物価指数(PPI)は総合が市場予想前年同月比0.7%上昇、結果が0.8%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。また、食品とエネルギーを除くコア指数は市場予想が前年同月比2.3%上昇、結果が2.4%上昇となり、こちらも結果が市場予想を上回っています。さらに、6月は総合が前年同月比0.2%上昇、コア指数が2.4%上昇であり、総合は前月から伸びが加速しています。
PPIは消費者物価指数(CPI)の先行指標とされており、インフレ率低下の向かい風になる可能性がありそうです。サービス価格が約1年ぶりの高い伸びとなったことが、今回のPPIの結果の大きな要因になりました。
ドル円はPPIの発表後に乱高下した後上昇し、一時145円を試す動きを見せましたが144円台半ばで取引を終えています。金利の先行きについてはPPIの結果によって、9月のFOMCで政策金利を据え置くとの見方がやや高まりました。