パウエル議長「一段の引き締め正当化される可能性」、植田総裁「物価の伸び依然鈍い」

FXマーケットニュース。2023年8月28日
目次

概要

  • パウエルFRB議長「金融政策の一段の引き締めが正当化されることもあり得る」
  • サマーズ元米財務長官「FRBは恐らく、少なくともあと1回利上げする必要がある」
  • 植田日銀総裁は「基調的インフレは依然として目標の2%を若干下回っていると、我々は考えている」
  • 7月の米新築一戸建て住宅販売件数が1年半ぶりの高水準に
  • 足元の住宅ローン金利の上昇加速によって、住宅建設業者の景況感は弱まっている

パウエルFRB議長「一段の引き締めが正当化される可能性も」

米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長がジャクソンホール会合で講演を行い、「潜在成長率を上回るペースでの成長が根強く続いている証拠が新たに示されれば、インフレのさらなる改善がリスクにさらされ、金融政策の一段の引き締めが正当化されることもあり得る」との見解を示しました。潜在成長率とは、中長期的に持続可能な経済成長率のことです。

2022年12月に連邦公開市場委員会(FOMC)が示した潜在成長率の予測中央値は1.8%でしたが、2023年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率2.4%増となり、市場予想の1.8%増を大きく上回っていました。また、市場で強まるインフレ目標の引き上げ観測については、「現在、そして今後も2%がわれわれのインフレ目標だ」と名言しています。

物価については、新型コロナのパンデミック後に起きた供給制約の改善が進んだことを背景に、米国の物価上昇ペースが減速したことを歓迎しつつも、「このところはデータが改善してきているものの、このプロセスはまだ先が長い」との見方を示しました。加えて、FOMCが次回9月の会合で、市場の予想通りに政策金利を据え置く可能性があることを示唆しています。

サマーズ元米財務長官は、現時点では景気減速の兆候はそれほどないという考えなどから、「FRBは恐らく、少なくともあと1回利上げする必要がある」との認識を示しています。一方、フィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、「引き締めの累積効果をシステムに浸透させるため、政策金利を現行水準に据え置くことが望ましい」ことを示唆しています。

パウエル議長の発言を受けてドル円が146円台半ばまで上昇したことから、市場はパウエル議長の発言について想定よりタカ派だと捉えたようです。金利についても市場は11月に0.25ポイントの引き上げを予想しており、先週までの据え置きから意見を変更しています。

植田日銀総裁「物価の伸びが目標より依然鈍い」

植田日銀総裁はジャクソンホール会合でのパネル討論会で、「基調的インフレは依然として目標の2%を若干下回っていると、我々は考えている」と述べました。加えて、「日銀が現行の金融緩和の枠組みを堅持しているのは、それが理由だ」と説明しました。

前年同月比3.1%上昇となった7月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)についても、「年末にかけて鈍化する見込みだ」としており、ハト派的な発言内容になっています。為替レートについてのコメントはありませんでしたが、昨年に介入があった水準にドル円が到達していることから、市場では介入への警戒感が継続しそうです。

また、「中国の最近の景気減速は失望を誘うもの」だとし、「根本的な問題は不動産セクターの調整と経済全般への波及だと思われる」との見方を示しました。ただし、「日本にとっては、その影響を比較的強い米経済が幾分埋め合わせている」と指摘しています。

米新築住宅販売が1年半ぶりの高水準に

7月の米新築一戸建て住宅販売件数は市場予想が前月比1.0%増、結果は4.4%(年率換算71万4000戸)となり、結果が市場予想を上回りました。6月は4カ月ぶりのマイナスでしたが一転して増加し、1年半ぶりの高水準となりました。

住宅ローン金利がおよそ20年ぶりの高水準に跳ね上がっているため、住宅所有者が自宅を手放して住み替えることに消極的になっており、中古住宅市場の在庫不足が起きていることが新築住宅を求める動きにつながっています。さらに、建設業者が住宅購入者に対する優遇措置を拡充していることも大きな要因です。

しかし、足元の住宅ローン金利の上昇加速によって、住宅建設業者の景況感は弱まっています。30年物固定住宅ローン金利は7.31%を記録し、2000年後半以来の高水準となりました。

住宅関連指標は景気に対して先行性があると言われており、今後再びマイナスに転じるようなことがあれば、市場関係者は「米経済がリセッション入りする」との観測を強めるかもしれません。最近では、JPモルガンやバンク・オブ・アメリカがリセッション予測を撤回しています。

FXマーケットニュース。2023年8月28日

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