概要
- 米ISM非製造業景況指数は、活動の拡大と縮小の境目を示す50を大きく上回った
- 仕入価格指数が4カ月ぶりの水準に上昇したことから、インフレの長期化並びに利上げ観測の強まりにつながる可能性も
- 日本の4~6月期のGDP改定値が、速報値から下方修正
- 設備投資や個人消費などの内需の弱さが示唆された
- 中国の不動産開発大手碧桂園は、11日に同社が提案した社債の償還延長に関する債権者の投票が終了する
- 社債の償還延長の承認獲得に失敗すれば、14日にもここ数カ月で最大規模の返済を強いられる可能性
米ISM非製造業景況指数が半年ぶりの高水準に
米ISM非製造業景況指数は市場予想が52.5、結果が54.5となり、結果が市場予想を上回りました。活動の拡大と縮小の境目を示す50を大きく上回っています。
今回の結果は米国の個人消費と経済全体の強さを示唆しており、米国がリセッション入りを回避できるとの楽観的な観測が強まりました。中でも雇用指数は2021年11月以来の高水準となり、雇用統計で見られた堅調な雇用が確かであることを感じさせるものになっています。
ただし、仕入価格指数が4カ月ぶりの水準に上昇したことから、インフレの長期化並びに利上げ観測の強まりにつながる可能性がありそうです。また、在庫景況感指数が20年4月以来の高水準となったことによって、今後数カ月の間に製造業者やサービス業者への発注が削減されることも考えられます。
米ISM非製造業景況指数の発表後、米ダラス連銀のローガン総裁と米シカゴ連銀のグールズビー総裁が政策金利についての見方を示しています。ローガン総裁は「連邦公開市場委員会(FOMC)の9月会合で利上げのスキップが適切である可能性がある」とした上で、「インフレ率を2%に戻すには追加利上げが必要となるかもしれない」と述べました。
そして、グールズビー総裁は「金利をどこまで引き上げるべきかが議論の内容にならない時期が、かなり急速に近づいている」との認識を示しています。ただし、「全体的なインフレ水準はなおわれわれが望む水準を上回っている」とも語りました。
2人の発言からは9月は金利据え置きとなる可能性が十分にあることを感じさせますが、今週13日に発表される消費者物価指数(CPI)の結果も、利上げをするかどうかに大きな影響を与えそうです。
日本の4~6月期GDPが下方修正、市場予想も下回る
日本の4~6月期の実質国内総生産(GDP)改定値が、速報値から下方修正されました。速報値は前期比1.5%増でしたが、改定値は1.2%増となっています。
加えて、市場予想の1.4%増も下回ることになりました。設備投資が速報値の横ばいから前期比1.0%減に大きく引き下げられ、個人消費も速報値の0.5%減からわずかではあるものの、0.6%減に引き下げられています。
設備投資や個人消費などの内需の弱さが示唆される結果となり、経済の見通しが悪化しそうです。市場関係者は「足元で外需が結構弱い。自動車とインバウンド絡みは底堅いが、それ以外が世界経済の減速に伴って動きが慎重になっている」と説明しました。
今後も弱い結果の経済指標が続けば、デフレ脱却の見通しが弱まり、日銀の政策修正が遠のくとの予想から円売り圧力につながる可能性がありそうです。
中国碧桂園、人民元建て債延長失敗なら巨額の支払いに
今月5日、中国の不動産開発大手碧桂園は、本来の期日までに利払いを実施できなかったドル建て社債2本の利払いを、何とか猶予期間内に実施しました。
そして、11日には同社が提案した、社債の償還延長に関する債権者の投票が終了します。もし社債の償還延長の承認獲得に失敗すれば、14日にもここ数カ月で最大規模の返済を強いられる可能性があります。
現在、碧桂園は複数の人民元建て債で、元本支払いの3年延長を提案している状況です。提案の承認についての投票は7日に始まっており、11日に終わる予定となっています。
最も期限が差し迫っているのが、元本残高14億3500万元(約290億円)の債券であり、
14日には投資家の償還要求が可能になります。さらに、24日には、より規模が大きい元本残高20億元(約402億円)の債券の償還要求ができるようになるという危機的な状況です。
加えて、碧桂園は14〜19日に債券5本で計3160万ドル(約47億円)相当の利払いも控えています。市場関係者は「碧桂園の将来的なデフォルトリスクは、なお非常に高く、今後の利払い期限はいずれもリスクイベントになり得る」との見解を示しました。
実際にデフォルトが起きれば、リスクオフの流れで円が買われる展開になる可能性もありそうです。