概要
- ECBが10会合連続となる利上げを実施し、政策金利が0.25ポイント引き上げられた
- ECBの要人の間で、今後の利上げについての見解が分かれている
- 8月の米コアCPIは、前月比で結果が市場予想を上回った
- 前月比で伸びも加速しており、市場のインフレ懸念が強まっている
- 7月の英GDPは市場予想を大きく下回り、大幅なマイナスになった
- 市場ではリセッション入りの懸念が強まっている
ECBが10会合連続となる利上げを実施
欧州中央銀行（ECB）が10会合連続となる利上げを実施し、政策金利が0.25ポイント引き上げられました。今回の利上げで、ユーロ圏の政策金利は4.5%となっています。
市場は今回の利上げが最後の利上げ、すなわち金利のピークと見込んでいますが、ECBのラガルド総裁はピークに達したかは「言えない」と語っています。ラガルド総裁は「現在の判断では、今日の決定でインフレ率を適時に目標に戻すために十分な貢献をしたと考えている」としつつ、「焦点は恐らく若干、期間へと移るだろう。しかし、これがピークだと言っているのではない。そうは言えないからだ」と指摘しました。
「政策委員会の確かな過半数が利上げを支持した」ものの、「何人かは利上げ停止を望んだ」とことも明かされ、ECBが利上げ停止に傾いていることは確かです。とはいえ、インフレが予想以上に長く高止まりした場合は追加利上げの可能性もあり、ラガルド総裁は将来の利下げの可能性について、「そのような言葉を口にすることさえしなかった」と述べています。
シムカス・リトアニア中銀総裁は利上げについて、「0.25ポイントの利上げという薬の服用はこれが最後だと期待したい」と語りました。さらに、ECBのデギンドス副総裁も、「インフレ率を目標の2%へと収束させるためには、今回の利上げで引き上げられた金利をその水準でしばらく維持すれば十分ではないかと我々は考えている」と述べました。
ミュラー・エストニア中銀総裁は、よりハト派的な見解で「我々の知る限りにおいて、政策当局者は、今後数カ月間に追加利上げは見込まれていないことを明確に示した」としています。ただし、タカ派的な見解を示す要人もいることには一定の注意が必要でしょう。
バスレ・スロベニア中銀総裁は、「賃金動向と財政政策がなお重大なリスクをもたらしている」とし、「追加利上げが必要になる可能性を否定できないだろう」との見方を示しています。加えて、カザークス・ラトビア中銀総裁は、「私は現在の金利に満足しているが、必要であれば適切な決定を下すだろう。今がピークだと言うことはできない」と語りました。 ECBが利上げを発表したのにも関わらず、ユーロが買われるのではなく売られたことから、市場が今回の利上げを最後と見ているのは明らかであり、今後の経済指標の結果によってはユーロが大きく売られることもありそうです。
米コアCPIが市場予想を上回る伸びに
8月の米消費者物価指数（CPI）は、変動の激しい食品とエネルギーを除くコアが市場予想前月比0.2%上昇、結果は前月比0.3%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。前年同月比では市場予想4.3%上昇、結果も4.3%上昇で同じとなっています。
また、総合は市場予想が前月比0.6%上昇、結果も0.6%上昇となりました。前年同月比では市場予想が3.6%上昇、結果が3.7%上昇となり、結果が市場予想を上回っています。
7月のコアCPIは前月比0.2%上昇であり、前月比で伸びが加速するのは半年振りです。インフレの基調を示すコアCPIの伸びが加速したことで、市場のインフレ懸念が強まっています。
パウエル議長を始めとする米連邦準備制度理事会（FRB）は、リセッションに陥ることなくインフレを抑制できるとの楽観的な見方を強めていますが、インフレが再び加速すれば利上げ再開が必要になり、それが経済を冷やしてしまう可能性があります。現在、市場は金利がすでにピークに達しており、来年6月には利下げすると予想していますが、9月や10月のCPIの結果によっては利上げを見込む市場関係者が多数派になるかもしれません。
英GDPが大幅なマイナスに
7月の英国の国内総生産（GDP）は、市場予想が前月比0.2%減、結果が前月比0.5%減となり、結果が市場予想を大きく下回りました。GDPが大幅なマイナスになったことで、市場ではリセッション入りの懸念が強まっています。
ストライキや悪天候が英国の経済活動に予想以上の打撃を与えたことが、今回の結果によって示されました。21日には0.25ポイントの利上げが予想されており、経済にさらなるダメージを与える可能性があります。
