概要
- 9月のCPIは総合が市場予想を上回った
- 次回のFOMC会合で利上げが実施されれば、サプライズでドル円が急騰する可能性
- FOMCの9月会合では、「景気抑制的な政策を当面維持すべきだ」との認識で政策当局者が一致
- 一部のFRB関係者は、次回の会合で利上げを見送る可能性をほのめかしている
- 9月のECB政策決定会合では、追加利上げが「拮抗した判断」と認識されていた
米CPIが予想を上回る伸びに
9月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が前年同月比で市場予想3.6%上昇、結果が3.7%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。一方、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は前年同月比で市場予想4.1%上昇、結果も4.1%上昇となり、結果と市場予想が一致しています。
コア指数が前年同月比で2021年以来の低い伸びとなりましたが、米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%からはほど遠く、総合も市場予想を上回る伸びとなったことで、政策金利を高水準に維持する方針を掲げるFRBの姿勢が正当化されることになりそうです。力強い労働市場が消費者の需要を支えており、インフレ率の高止まりにつながっています。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合では、インフレ率を向こう2年間でFRBが目標とする2%に近づけるため、「後1回の利上げがおそらく適切」との認識を参加者の過半数が示していました。ただ、最近は複数のFRB関係者が、10月31日から11月1日にかけて開かれる、次回のFOMC会合での金利据え置きの可能性を示唆しています。
総合CPIの約3分の1を占める住居費がインフレ率の高止まりの大きな要因となっており、住居費がしっかりと鈍化していくかどうかがインフレ率低下のキーになりそうです。市場関係者は「9月のCPIでは、大半の金融当局者は政策金利が十分に景気抑制的だと確信できないだろう。FOMCは年内金利を据え置くというのが我々の基本シナリオだが、追加利上げが実施されるリスクは無視できない。このリスクについては市場は恐らく織り込みが不十分だ」との認識を示しています。
また、ボストン連銀のコリンズ総裁はCPIについて、「物価安定回復には時間がかかることを再認識させるものだ」と指摘しています。現在、市場は金利について、すでにピークを迎えており、来年6月には0.25ポイントの利下げを行うと予想していることから、もしサプライズで利上げが実施されれば、ドルが一気に買われてドル円が急騰する可能性もありそうです。
FOMC議事要旨「景気抑制的な政策を当面維持すべき」
FOMCの9月会合では、「景気抑制的な政策を当面維持すべきだ」との認識で政策当局者が一致した一方で、「引き締め過ぎのリスクとインフレ鈍化を維持することとの、バランスを取る必要がある」との見解も示されていたことが、議事要旨の公開で明らかになりました。市場関係者は、「脇に停車しようとしているが、まだ荷ほどきはしないであろう状況だ」とした上で、「インフレは容認できないほど高く、さらなる上振れリスクがあるとみている」と述べています。
9月会合で政策金利は5.25〜5.5%で据え置かれたものの、年内に後1回追加で金利を引き上げ、その後は高水準の金利をより長期にわたって維持する公算が大きいことが示唆されていました。ただし、一部のFRB関係者は背景を分析するため、次回のFOMC会合で利上げを見送る可能性をほのめかしています。
ジェファーソンFRB副議長は、「今後の政策軌道を見極める上で、債券利回り上昇を通じた金融環境の引き締まりに引き続き留意する」とし、ダラス連銀のローガン総裁も債券市場のリスクプレミアム上昇について、「それが経済の沈静化に向けた金融当局の仕事を一部肩代わりし、当局としては政策を追加で引き締める必要性が低下する可能性がある」との認識を示しました。他にも複数のFRB関係者がハト派的な見解を述べており、次回のFOMC会合では利上げが見送られるという意見が市場の多数派となっています。
ECB政策決定会合議事要旨「利上げは拮抗した判断」
9月の欧州中央銀行(ECB)政策決定会合の議事要旨が公開され、0.25ポイントの追加利上げが「拮抗した判断」と認識されていたことが分かりました。議事要旨によると、政策決定会合のメンバーらは「引き締め過ぎのリスクと引き締めが足りないリスクは、より均衡した」と判断し、「かなりの不確実性に照らし、利上げか利上げ休止かは拮抗した判断で、戦術的な考慮も働いたとメンバーらは強調した」とされています。
市場では「金利はピークを迎えた」との声も多いですが、最近ではECBのラガルド総裁が「必要に応じて金利を再度引き上げる」という意向を示しており、今後も経済指標の結果に注目していく必要がありそうです。