日銀がYCCを再修正も金融緩和は継続、FOMCは今後の利上げの可能性残す

目次

概要

  • 日銀は金融政策決定会合で、YCCにおける長期金利の上限である、1%を超える取引を容認する柔軟化措置を決定
  • 長期金利の誘導目標や資産買い入れ方針などは維持し、大規模な金融緩和政策は継続
  • FOMCは政策金利の据え置きを決定したが、パウエルFRB議長は追加利上げの選択肢を残した
  • アトランタ連銀ボスティック総裁「金融政策は十分に景気抑制的」
  • 米非農業部門雇用者数は結果が市場予想を下回り、失業率も約2年ぶりの高水準に

日銀がYCCを再修正、金融緩和は継続

日銀は金融政策決定会合で、長短金利を操作するイールドカーブコントロール(YCC)における長期金利の上限である、1%を超える取引を容認する柔軟化措置を決定しました。ただし、長期金利の誘導目標や資産買い入れ方針などは維持し、大規模な金融緩和政策は継続します。

長期金利の誘導目標は引き続きゼロ%程度としつつ、上限の1%は「めど」となり、上限を一定程度上回る金利上昇を容認した形です。「めど」が許容する範囲は具体的に示されておらず、長期金利は神経質な展開になるかもしれません。

日銀の植田総裁は金融政策決定会合後の記者会見で、「長期金利の厳格な上限は設定しないが、こうした調節の下で長期に上昇圧力がかかる場合であっても、1%を大幅に上回るとはみていない」と述べました。しかし、市場関係者は「事実上、上限の撤廃」だとし、「YCCの形骸化を意味している」との見方を示しています。

また、同時に公表した新たな経済・物価情勢の展望(展望リポート)では、消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の予想を全ての年度で引き上げました。23年度は2.5%から2.8%に、24年度は1.9%から2.8%に、25年度は1.6%から小幅に引き上げ1.7%としています。

22年度は実績値が3.0%であるため、3年連続で日銀の目標である2%を超える見通しです。市場では2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に関して一歩前進したと見られていますが、植田総裁は「十分な確度を持って見通せる状況にはなお至っていない」との見解を示しています。

YCC再修正があったものの想定の範囲内であり、金融緩和も維持されたことから、金融政策決定会合後は円安が進み、ドル円は151円台、ユーロ円は15年ぶりとなる160円台まで上昇を見せました。

FOMCは金利据え置きも利上げの可能性は残す

米連邦公開市場委員会(FOMC)は、前会合に続き政策金利を5.25〜5.5%に据え置くことを決定しました。ただし、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は12月の次回FOMC会合で利上げがあり得ることを示唆し、インフレ抑制のための追加利上げの選択肢を残しています。

「政策当局者の過半数がなお年内の追加利上げを見込んでいるのか」との質問に対し、パウエル議長は「我々が答えを求めているのは『さらに引き上げるべきか』という問いだと言えよう」と述べました。しかし、金融状況について「複数ある要因の中でも、特に長期債利回りの上昇により、ここ数カ月に顕著に引き締まった」との見解も示しています。

これらはパウエル議長が追加利上げの選択肢を残す一方で、過去40年で最も積極的に進めた金融引き締めサイクルが終了した可能性があるとの見方も示唆しているということです。市場関係者は「当局者は今、足を止め、自らの行動が奏功しているかを確認することが可能だ」と指摘しています。

また、アトランタ連銀のボスティック総裁は、「インフレ率をFRBの目標である2%まで低下させるのに、金融政策は十分に景気抑制的だ」と語っています。加えて、「リセッションに至ることなく、インフレ率を目標に近づけることは可能だと考えている」との認識を示しました。

FOMCの結果とパウエル議長の発言は「金利がピークに達した」との観測を強め、ドル安が進む要因となりました。現在、市場は金利がすでにピークに達しており、来年5月には0.25ポイントの利下げがあると予想しています。

米雇用者数は予想以上の伸び鈍化、失業率も高水準に

10月の非農業部門雇用者数は、市場予想が18万人増、結果が15万人増となり、結果が市場予想を下回りました。失業率は市場予想が3.8%、結果が3.9%となり、約2年ぶりの高水準になっています。

個人消費と経済全般を支える雇用市場の軟化が続けば、米経済が今後リセッションに陥るとの見方が強まりそうです。市場関係者は「今回の雇用統計は、ソフトランディングに向けた労働市場の緩やかな緩和とも、より厄介な景気悪化の始まりという可能性とも整合する」との見方を示しました。

平均時給も前年同月比で4.1%上昇と、2021年半ば以降で最も小幅な伸びとなっており、労働者には厳しい環境となっていますが、FRBにとってはインフレ率を目標の2%に戻す上で心強い内容と言えるでしょう。

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