米CPIが総合とコア共に伸び鈍化、日本の実質GDPは3期ぶりの減少に

目次

概要

  • 10月の米CPIは、総合とコアが共に前月から伸びが鈍化した
  • 市場関係者や米要人はインフレの伸びの鈍化について肯定的にとらえつつ、インフレ率が2%まで低下するかについては不透明さを感じている
  • 10月の米小売売上高は、マイナス幅が市場予想を下回った
  • 個人消費は米経済の主要エンジンであり、経済が想定より底堅いことを示唆
  • 日本の7〜9月期GDP速報値のマイナス幅が、市場予想を上回った。
  • 3四半期ぶりのマイナス成長でもあり、政策正常化が遅れる可能性も

米CPIの総合とコアが共に伸び鈍化、利上げ観測弱まる

10月の米消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想前年同月比3.3%上昇、結果が3.2%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。前月は3.7%上昇であり、前月から伸びが大幅に鈍化しています。

また、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数は、市場予想前年同月比4.1%上昇、結果が4%上昇となり、こちらも結果が市場予想を下回りました。前月は4.1%上昇であり、前月から小幅に伸びが鈍化しています。

米国のCPIは昨年6月の9.1%上昇という40年ぶりの高水準から、すでに大幅に低下してきています。ただし、一部の米連邦準備制度理事会(FRB)の関係者から、利上げ打ち止めを示唆する声が聞かれる一方、パウエルFRB議長は「必要があれば追加利上げを実施する可能性がある」ということを繰り返し強調している状況です。

市場関係者は「10月のコアCPIが驚くほど軟調だったため、FRBは政策金利が景気に対して十分に抑制的だとの確信を強めるだろう。それでも、連邦公開市場委員会(FOMC)が利上げサイクルの完全な終了を宣言するには、コアCPIがあと数カ月はこの動きを続ける必要がある」との見方を示しました。シカゴ連銀のグールスビー総裁も、CPIの結果を歓迎しつつ、「2%目標の達成までには、まだ距離がある」との見解を示しています。

さらに、リッチモンド連銀のバーキン総裁も、「インフレの伸びの鈍化で、この数カ月に実質的な進展が見られる」としながらも、「2%の目標に向けた明確な軌道にあるとは確信していない」と語っています。インフレの伸びの鈍化について肯定的にとらえつつ、米経済が底堅いことからFRBの目標とするインフレ率が2%まで低下するかについては不透明さを感じているようです。

とはいえ、10月の米生産者物価指数(PPI)も市場予想前年同月比1.9%上昇、結果が1.3%上昇となり、結果が市場予想を下回っており、インフレ圧力が経済全般で和らぎつつある兆候が示されています。CPIが総合、コア共に市場予想を上回る鈍化となったことで、FRBが来年半ばまでに利下げを開始するとの観測がトレーダーの間で強まり、ドルインデックス(ドル指数)はここ1年で最大の下落を記録することになりました。

米小売売上高は小幅な減少にとどまる、経済の底堅さを示唆

10月の米小売売上高は市場予想が前月比0.3%減、結果が前月比0.1%減となり、マイナス幅は結果が市場予想を下回りました。個人消費は米経済の主要エンジンであり、経済が想定より底堅いことを示唆しています。

今回の結果は市場関係者のリセッション観測の弱まりにつながりましたが、経済の底堅さがどこまで続くか予想することは難しいです。市場関係者は「消費者は借り入れコストの上昇、与信の厳格化、物価の高止まりといった障害に依然として直面しているが、労働市場はなお力強く、所得は増加傾向にあり、物価圧力も緩和しつつあるため、当面は消費と成長の堅調さは持続するはずだ」との見方を示しています。

小売業界は重要な年末商戦を迎えますが、クレジットカード金利の上昇や貯蓄の減少、学生ローンの返済再開が、いずれも年末商戦の消費を抑える可能性があります。ホームセンター大手のホーム・デポや、スポーツブランドのアンダーアーマーなど、小売大手はすでに需要低迷を警告しており、今後の見通しに悲観的な市場関係者も少なくありません。 小売売上高は市場予想ほどの減少を見せなかったものの、CPIが総合とコア共に鈍化したことから、市場関係者は米国の金利がすでにピークを迎えており、来年5月には0.25ポイントの利下げがあると予想しています

日本の実質GDPが3期ぶりに減少、政策正常化に影響も

日本の7〜9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、市場予想が前期比0.4%減、結果が0.5%減となり、マイナス幅は結果が市場予想を上回りました。加えて、3四半期ぶりのマイナス成長でもあり、日銀による金融緩和からの政策正常化が遅れる可能性がありそうです。日本経済が3四半期ぶりのマイナス成長となったことで円売りの流れが強まりましたが、米CPIが予想を下回る伸びであったため、米金利の大幅低下を受けたドル売りでドル円の下落は限定的なものとなりました。

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