概要
- 10月の米PCEは、総合とコア共に前月から伸びが鈍化
- パウエルFRB議長「金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早」
- 11月のユーロ圏CPIは、総合とコア共に前月から伸びが大きく鈍化
- ECBが目標とする2%が視界に入り、利下げ観測が強まっている
- 米ISM製造業指数が、拡大と縮小の境目を示す50を13カ月連続で下回った
- 市場関係者「製造業部門で需要が過大評価されていたことが示され、生産は向こう数カ月でさらに減速する可能性がある」
米PCEの伸びが鈍化、インフレ率の低下続く
10月の米個人消費支出（PCE）は、総合が市場予想前年同月比3.0%上昇、結果も3.0%上昇となり、結果と市場予想が一致しました。ただし、前月の3.4%上昇からは伸びが鈍化して、2021年3月以来の小幅な伸びとなっています。
また、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコア指数は、市場予想前年同月比3.5%上昇、結果も3.5%上昇となり、こちらも結果と市場予想が一致しました。そして、前月の3.7%上昇からは伸びが鈍化しています。
米連邦準備制度理事会（FRB）が目標とする2%にはまだ遠い数値ですが、インフレ率の低下が続いていることはFRBにとって朗報です。PCEはFRBが特に重視している経済指標であり、市場の利上げ打ち止め観測や利下げ観測が強まりそうです。
ある市場関係者は政策金利について、「FRBは今のところ据え置きの姿勢を保っているが、利下げへの軸足転換は近づいている」との見方を示しました。シカゴ連銀のグールズビー総裁も、「3%で停滞していることを示す証拠は一切ない」とし、「2%への軌道にあると引き続き考えている」とハト派的な発言をしています。
一方、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は金利について、「過去25年で最も景気抑制的だと推定される」としつつも、「景気抑制的なスタンスを、かなりの期間維持するのが適切になると想定される」との認識を示しました。パウエルFRB議長も「連邦公開市場委員会（FOMC）は慎重に行動するが、追加利上げの選択肢も維持する」と述べ、「金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早」との見方を示しています。
市場では来年3月に早くも利下げすると見込まれており、市場とパウエル議長などのFRB要人との間には、意見に大きな隔たりがあります。
ユーロ圏CPIの伸びが大きく鈍化、2%が視界に
11月のユーロ圏消費者物価指数（CPI）は、総合が市場予想前年同月比2.7%上昇、結果が2.4%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。前月の2.9%上昇から伸びが大きく鈍化し、2年ぶりの低水準となっています。
また、燃料や食品など変動の大きい項目を除いたコア指数は、市場予想前年同月比3.9%上昇、結果が3.6%上昇となり、こちらも結果が市場予想を下回りました。前月の4.2%上昇から伸びが大きく鈍化し、4カ月連続での低下となっています。
欧州中央銀行（ECB）が目標とする2%が視界に入ったことで、市場では利下げ観測が強まっています。ただし、ECBの要人は「インフレ率を2%に確実に戻すためには、金融引き締めを続けなければならない」とのスタンスを依然として崩していません。
例えば、ギリシャ銀行（中銀）のストゥルナラス総裁は市場の利下げ観測について、「4月を見込む現在の数字はやや楽観的なようだ」との認識を示しています。加えて、ドイツ連邦銀行（中銀）のナーゲル総裁も、「すぐに金利を引き下げたり、そのような措置について推測したりするのは時期尚早だろう」と指摘しています。
さらに、ラガルドECB総裁も「金利を現水準で十分に長く維持すれば、物価安定の回復に大きく貢献するだろうとわれわれは見込んでいる」と述べていることから、来年4月に0.25ポイントの利下げを予想している市場は楽観的過ぎる可能性もありそうです。
米ISM製造業指数が13カ月連続で縮小
米供給管理協会（ISM）が発表した11月の製造業総合景況指数は、市場予想が47.6、結果が46.7となり、結果が市場予想を下回りました。活動の拡大と縮小の境目を示す50を、13カ月連続で下回っています。
13カ月連続での縮小はITバブル崩壊後以来であり、高金利が製造業に打撃を与え続けていることが浮き彫りになりました。借り入れコストの上昇によって、多くの企業は設備投資計画の見直しを余儀なくされています。
特に、先行指標となる新規受注指数が15カ月にわたって縮小しており、1981〜82年以来の長さとなっています。ある市場関係者は、「製造業部門で需要が過大評価されていたことが示され、生産は向こう数カ月でさらに減速する可能性がある」との見解を示しました。
