米雇用統計が労働市場の力強さを示す、日本のGDP改定値は下方修正

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目次

概要

  • 11月の非農業部門雇用者数は、結果が市場予想を上回った
  • サマーズ元米財務長官「インフレが制御下に戻ったか、経済が低迷しつつあるとの証拠が決定的に示されるまで、利下げ方向へのシフトをとどまるべき」
  • 日本の7〜9月期のGDP改定値は、速報値から下方修正された
  • コロナ禍からの日本経済の回復の弱さが浮き彫りに
  • 11月のISM非製造業総合景況指数は、結果が市場予想を上回り、米経済の堅調さを示唆した
  • 個人消費が底堅く、労働市場も依然としてタイトであることが示された

米雇用統計は労働市場の力強さを示す

11月の非農業部門雇用者数は市場予想前月比18万5000人増、結果が19万9000人増となり、結果が市場予想を上回りました。ストライキを実施していた自動車メーカー従業員の職場復帰が、今回の結果の大きな要因となりました。

また、失業率は市場予想が3.9%、結果は3.7%となり、前月の3.9%からも低下しています。平均時給は市場予想が前月比0.3%増、結果が0.4%増となり、0.4%増は今年最大の伸びに並ぶ数値です。

今回の雇用統計では総じて労働市場の力強さが示され、「インフレ率を確実に2%という目標に下げるため、高水準の政策金利を維持する」という米連邦準備制度理事会(FRB)の方針を裏付けるものになりました。パウエルFRB議長はこれまで、市場で強まる早期利下げ観測を押し返し続けています。

ある市場関係者は「1~3月(第1四半期)を皮切りに、来年数多くの利下げが行われるとの期待は後退しそうだ」との見方を示しました。別の市場関係者は「今回のデータの全体像を見れば、米連邦公開市場委員会(FOMC)はインフレ率を確実に目標に戻すため、辛抱強い姿勢を維持できるだろう」と語っています。

また、サマーズ元米財務長官は今回の雇用統計について、「これらは良好な数字で、少なくとも11月時点で経済がまだかなり堅調な様子だったことを示している」との認識を示しました。さらに、「インフレが制御下に戻ったか、あるいは経済が低迷しつつあるとの証拠が決定的に示されるまで、FRBは利下げ方向へのシフトをとどまるべきだ」としています。

市場は来年3月に0.25ポイントの利下げがあることを見込んでいましたが、雇用統計の発表後は5月に意見を変更しており、早期利下げ観測は後退を見せました。

日本のGDP改定値が下方修正、回復の弱さ浮き彫りに

日本の7〜9月期の実質国内総生産(GDP)改定値は、前期比年率で2.9%減、前期比では0.7%減となり、速報値の2.1%減、0.5%減から下方修正されました。マイナス成長は4四半期ぶりであり、コロナ禍からの日本経済の回復の弱さが浮き彫りとなっています。

個人消費の下振れや、在庫変動が主な要因となりました。日銀の植田総裁や氷見野副総裁から金融政策の修正に前向きともとれる発言が出たことで、市場では早期の正常化観測が急速に広がっていますが、成長鈍化の兆しを示した今回のGDP改定値によって、難しいかじ取りを迫られることになりそうです。

ある市場関係者は、「既に景気が悪くなってきている中で、マイナス金利解除に動くのは日銀にとってリスクが高い」とし、「来年の欧米景気が腰折れして、日本への悪影響が本格的に出てくる前にマイナス金利解除を考えていると思う。基本は物価見通しが更新される1月に動こうと思っているのではないか」との見解を示しました。別の市場関係者は「賃金は確かに上がっているものの2%物価目標の達成にはまだ距離がある」とし、政策修正に関して「もうちょっと慎重になってくるのではないか」と述べています。 早期の正常化観測が後退すれば円買いの勢いが落ち着き、ドル円の下落が一段落する可能性もありそうです。まずは、13日に発表される10〜12月期日銀短観に大きな注目が集まることになるでしょう。

米ISM製造業指数が13カ月連続で縮小

米供給管理協会(ISM)が発表した11月の非製造業総合景況指数は、市場予想が52.3、結果が52.7となり、結果が市場予想を上回りました。前月の51.8も上回り、米経済の堅調さを示唆しています。
サービス業は米経済の3分の2超を占めており、ISM非製造業指数は全米の非製造業375社の購買担当役員に対するアンケート調査を実施し、その結果を基に景況感を表すことから注目度の高い経済指標です。指数は50が活動の拡大と縮小の境目を示しますが、今年に入り50を常に上回って推移しています。
米国の個人消費の好調さは今後長くは続かないと予測されているものの、今回の結果も底堅さを見せました。雇用指数も上昇を見せ、労働市場が依然としてタイトであることが示されています。

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