日銀「主な意見」で早期政策修正観測が後退、米失業保険申請件数が予想を上回る伸びに

FXマーケットニュース。2024年1月2日
目次

概要

  • 日銀が12月に開いた金融政策決定会合での「主な意見」を公表
  • 物価安定目標の実現や金融政策の正常化のタイミングについて、意見が分かれている状況が明らかに
  • 米新規失業保険申請件数は、結果が市場予想を上回る伸びに
  • 増加したものの歴史的な低水準付近で、労働市場の底堅さがあらためて示された
  • 11月の米中古住宅販売成約指数は前月から横ばいで、統計上最低の数値が続いた
  • 市場関係者「2024年は住宅販売の改善が見込まれる」

日銀「主な意見」で早期政策修正観測が後退

日本銀行が12月18〜19日に開いた金融政策決定会合での「主な意見」を公表し、2%の物価安定目標の実現や金融政策の正常化のタイミングについて、政策委員の間で意見が分かれている状況が明らかになりました。早期の金融引き締め観測が後退して円売りが優勢になったことで、ドル円は公表後に上昇を見せています。

金融政策決定会合の1か月程度後には、議論の流れを記述する「議事要旨」が公表されますが、1週間程度後には、政策委員が決定会合での自身の発言内容を自ら選んで紹介する、「主な意見」が公表されます。今回の「主な意見」はサプライズ的な内容は見られなかったものの、マイナス金利解除やYCC修正に関しては慎重姿勢だったことが再確認されました。

ある市場関係者は「意見が割れており、前のめりに1月の会合でマイナス金利解除はないということだ」と語りました。別の市場関係者は「早期のマイナス金利解除を期待している市場参加者には期待外れの内容」と述べています。

「主な意見」では、「来春の賃上げが予想よりかなり上振れたとしても、そのために基調的な物価上昇率が2%を大きく上回ってしまうリスクは小さい」との意見が出ていました。「主な意見」が公表された2日前には、日銀の植田総裁が「2%物価目標を持続的・安定的に実現する確度が少しずつ高まっている」とし、「十分な確度になれば政策変更を検討する」と語りました。ただし、政策変更の時期は「決め打ちできない」としています。

こちらは金融政策決定会合後の記者会見での発言とほぼ同じ内容であり、為替市場への影響は限定的となっていました。ただ、その数日後には「来年1月の会合までに、かなりの情報が得られる可能性もゼロではない」などと述べたとして、円買いの一因になっています。

日銀の政策修正期待は弱まったり強まったりを繰り返しており、今後も要人発言での市場の一喜一憂が続くかもしれません。

米失業保険申請件数が予想を上回る伸びに

米新規失業保険申請件数は市場予想が21万件、結果は21万8000件となり、結果が市場予想を上回りました。前週からは1万2000件増となっています。

また、失業保険の継続受給者数は市場予想が187万5000人、結果も187万5000人となり、市場予想と結果が一致しました。新規失業保険申請件数が増加したものの、依然として歴史的な低水準付近にとどまっており、労働市場の底堅さがあらためて示された形です。米国はインフレ率が継続して低下しており、労働市場の底堅さは「失業率の急上昇を避けつつインフレを抑制する」というソフトランディング(軟着陸)に成功するとの見方を支えています。

ただ、サマーズ元米財務長官は市場で米国の金融緩和への期待が急速に高まる中、「投資家はインフレのリスクを恐らく過小評価している」との認識を示しています。さらに、「いわゆるソフトランディングが起こったと宣言するのは時期尚早だ」との見解も示しました。

また、連邦政府の賃上げやストライキ活動、労働市場の逼迫、地政学リスク、住宅価格の上向きをインフレ圧力の潜在的要因として挙げており、これらには注意しておいた方がよいかもしれません。現在、市場は今年1.75ポイントの利下げを予想していることから、楽観的過ぎる可能性がありそうです。

米中古住宅販売成約指数は歴史的低水準が続く

11月の米中古住宅販売成約指数は市場予想前月比0.9%上昇、結果が0%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。前月から横ばいとなり、統計上最低の数値が続いています。

米国では中古住宅の市場規模が新築住宅に比べてはるかに大きく、その後に家具や家電製品などの耐久財に対する家計の需要を誘うこともあり、景気に対して先行性が高いとされています。

今回の結果で、中古住宅の在庫不足と高価格が、引き続き市場を圧迫している状況が示唆されました。ただ、秋には8%近くもあった住宅ローン金利は、数週間前から7%を割り込み、需要を押し上げています。

ある市場関係者は「ローン金利が12月にさらに下げ、金利サイクルのピーク時に比べて月間で300ドル(約4万2000円)ほどの節約になる。2024年は住宅販売の改善が見込まれる」と述べました。

FXマーケットニュース。2024年1月2日

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