米雇用者数が予想を上回る、ユーロ圏CPIは総合、コア共に予想を下回るも伸び加速

週刊 注目ニュース 2024年1月8日
目次

概要

  • 昨年12月の米雇用統計は非農業部門雇用者数の結果が市場予想を上回り、前月からの伸びも加速
  • 市場関係者「FRBが市場の織り込みより長く政策金利を据え置く可能性がある」
  • 12月のユーロ圏CPIは総合、コア共に結果が市場予想を下回った
  • 市場は2024年のECBの利下げについて、慎重な見方にシフトしてきている
  • FOMCが昨年12月に開いた会合の議事要旨が公表され、「景気抑制的な政策スタンスを当面維持するのが適切」との見解で一致していたことが分かった

米雇用者数が予想を上回る、伸びも加速

昨年12月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想前月比17万5000人増、結果が21万6000人増となり、結果が市場予想を上回りました。前月は17万3000人増(速報値19万9000人増)であり、前月から伸びが加速しています。

米国の政策金利は約20年ぶりの高水準となっていますが、それでも労働市場は堅調であり、安定した消費支出と健全な経済成長の原動力となっています。平均時給も市場予想が前月比0.3%増、結果が0.4%増と結果が市場予想を上回っており、労働市場の堅調さを示唆しています。

米連邦準備制度理事会(FRB)は、物価上昇が経済全般にわたって鈍化している一段の証拠を得るまで、政策金利を高水準に維持する姿勢です。ある市場関係者は「雇用市場は底堅いが、徐々に冷えつつあるというのが全般的な姿だ」としつつ、「ただ平均時給の伸びを受け、FRBが市場の織り込みより長く政策金利を据え置く可能性がある」との認識を示しました。

また、イエレン米財務長官は「今見られる状況はソフトランディングと表現できると考える。これが続くことを期待している」と語っています。加えて、バイデン大統領の側近である経済諮問委員会(CEA)のバーンスタイン委員長は、雇用統計の結果を評価し、米国の景気回復は底堅く、リセッションを回避する勢いだとしています。

経済が堅調であれば、利下げを急ぐ必要は無く、よりインフレ退治に力を入れることになるでしょう。

現在、市場はFRBが3月から利下げを開始し、年間で計6回1.5ポイントの利下げを実施すると予想しています。しかし、市場の予想は楽観的過ぎる可能性がありそうです。

ユーロ圏CPIは総合、コア共に予想を下回るも伸び加速

12月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は総合が市場予想前年同月比3.0%上昇、結果は2.9%上昇となり、結果が市場予想を下回りました。また、価格の変動の激しいエネルギーや食品を除いたコア指数は市場予想前年同月比3.5%上昇、結果が3.4%上昇となり、こちらも結果が市場予想を下回っています。

しかし、総合は前月の2.4%上昇から大きく伸びが加速してしまいました。これはユーロ圏を構成する各国政府が、高騰していたエネルギーコスト対策の支援を打ち切ったことが背景にあります。

インフレの基調を示すコア指数が5カ月連続で低下したことは欧州中央銀行(ECB)にとって朗報ですが、総合の加速は23年4月以来であり、ECBが目指すインフレ率2%への道のりが一筋縄ではいかないことが浮かび上がったといえます。

今回の結果は、ユーロ圏のインフレ率が昨年11月に底を打ち、2024年は2.5~3%の範囲で推移するとのECBの予測に沿う内容です。

現在、市場は2024年のECBの利下げを1.25ポイントと見込んでおり、最大で1.5ポイントの利下げが見込まれていたことを考えると、市場は慎重な見方にシフトしてきています。利下げ期待が低下すればユーロは売られにくくなるため、今後もCPIの動向は非常に注目されそうです。

FOMC議事要旨「高金利を当面維持」

米連邦公開市場委員会(FOMC)が昨年12月に開いた会合の議事要旨が公表され、「景気抑制的な政策スタンスを当面維持するのが適切」との見解で一致していたことが分かりました。さらに、「政策金利は今回の引き締めサイクルにおけるピークか、それに近い可能性が高いとの認識を参加者は示した」と記載されていました。

また、インフレ面で明確な進展が見られるとし、そうした傾向が続いた場合に、FOMCは24年中に政策金利を引き下げる意向だとしつつ、具体的な利下げのタイミングについてはなお不透明としています。

24年中に利下げが行われる確率は高そうですが、市場が予想している年間で計6回1.5ポイントの利下げというのはFOMC参加者の考えと大きな隔たりがありそうです。ある市場関係者は、「議事要旨にはFRBが今年3月から利下げを始めるという予想を妨げる内容は見当たらない」と語りました。

FRBには過度な引き締めを避けながら、インフレ率を目標の2%に近づけるという難しい舵取りが求められます。

週刊 注目ニュース 2024年1月8日

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