概要
- パウエルFRB議長が早期利下げに対する懸念を示した
- クーグラーFRB理事やボウマンFRB理事も、早期利下げに否定的な見方
- 豪中銀は政策金利の据え置きを決めたが、声明で「追加利上げの可能性も排除できない」と言及
- ブロック豪中銀総裁「インフレ率が引き続き高過ぎる」
- 1月の米ISM非製造業景況指数は、4カ月ぶりの高水準となった
- FRBが3月に利下げに着手する可能性が低下
パウエルFRB議長「拙速な利下げに伴う危険性を懸念」
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が「拙速に行動することの危険性は、仕事がまだ完了しておらず、過去半年間に得られた非常に良い数値が、インフレの先行きを巡る本当の指針でないことが後から分かる場合だ」と述べ、早期利下げに対する懸念を示しました。また、「多少の時間をかけて、インフレ率が持続的な形で2%に向けて低下しているとデータで引き続き確認するのが賢明な方法だ」としています。
利下げ時期に関しては、1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)会合後の記者会見と同じく、「3月の次回会合までにインフレ率が2%に向けて低下しているとの確信に達する可能性は小さい」と述べました。FRBは1月に開催した会合で、政策金利を22年ぶりの高水準に据え置くことを決めており、パウエル議長はその後の記者会見で3月の利下げの公算は小さいとの認識を示していました。
また、今年は大統領選がありますが、パウエル議長は政策判断に当たって「政治や選挙を考慮に入れることはない」とし、「信頼性は極めて貴重だ」と語っています。ウクライナと中東での戦争については、「米国への影響は現時点で大きくない」としました。
パウエル議長以外にも、クーグラーFRB理事が政策金利を近く引き下げる緊急性はほとんどないということを示唆しています。加えて、ボウマンFRB理事も利下げについて、「まだその段階に達していないというのが私の見方だ」と述べています。
ただし、依然として市場は今年5月に0.25ポイントの利下げがあり、年間で計6回1.5ポイントの利下げを予想しています。高金利を維持する意向を示しているFRBと市場の考えの間にある深い溝は、中々埋まる気配を見せません。
豪中銀「追加利上げの可能性も排除できない」
オーストラリア準備銀行(中央銀行)は、金融政策決定会合で政策金利の据え置きを決めましたが、声明で「追加利上げの可能性も排除できない」と言及したことなどを受け、豪ドルが買われました。米国ではFRBが市場の早期利下げ観測を後退させる動きを見せていますが、これに豪中銀も加わりました。
声明では、「インフレ率が妥当な時間枠の範囲内で目標に戻ることを最も確実にする金利の軌道は、データとリスク評価の進展次第と見込まれ、追加利上げの可能性を否定できない」と説明されています。ブロック豪中銀総裁は政策決定発表後の記者会見で、「インフレ率が引き続き高過ぎる」、「11月の利上げは間違いでなかった」と述べ、依然としてタカ派的なスタンスを取り続けています。
利下げについては、「消費者物価指数(CPI)が持続的に2.5%に達する確信が必要だ」との認識を示しました。2023年12月の豪州のCPIは3.4%であり、米国や欧州と比べてインフレ率の低下が進んでいません。
豪中銀のタカ派的なスタンスを考えると、米国や英国より豪州は利下げの時期が遅くなりそうです。豪ドルは短期・中期的に買われやすくなると考えられ、豪ドル円は割高感があるものの高値圏を維持しやすくなるかもしれません。
米ISM非製造業景況指数が4カ月ぶりの高水準に
1月の米ISM非製造業景況指数は市場予想が52.0、結果が53.4となり、結果が市場予想を上回りました。活動の拡大と縮小の境目を示す50を超えたことに加え、4カ月ぶりの高水準となっています。
新規受注の指数が3カ月ぶりの高水準となる55.0、雇用も前月から6.7ポイント上昇して50.5となり、拡大圏に持ち直しました。新規受注の増加と雇用の回復は、米経済の堅調さを示唆するものです。
ただし、仕入れ価格指数が7.3ポイント上昇して64.0と大幅な増加となっており、昨年2月以来の高さとなっています。ISMのニエベス委員長は今回の結果について、「利下げで見込まれる効果を念頭に、回答企業は景気に対して楽観的だ。しかし、インフレやそれに付随するコスト上昇圧力、現在続いている地政学的対立を理由に慎重にもなっている」と説明しました。
ISM非製造業景況指数が4カ月ぶりの高水準になったことを受け、FRBが3月に利下げに着手する可能性は低下したと言えます。ドル円にとっては上昇要因となりますが、13日には米1月消費者物価指数(CPI)が発表されることから、結果によっては一気に流れが変わることもあり得そうです。