概要
- 1月の米PCEは、コア指数が約1年間で最大の伸びに
- コア指数はFRBが重要視しており、利下げ観測がさらに後退する可能性がある
- 高田日銀審議委員「2%の物価安定の目標実現がようやく見通せる状況になってきた」
- 高田日銀審議委員の発言で、「3月の金融政策決定会合でマイナス金利を解除する」との観測が強まる可能性がある
- 1月の日本のCPIは、総合とコアが共に予想を上回った
- 22カ月連続で日銀の掲げる目標である2%を維持したことで、金融政策の早期正常化観測が強まりそう
米PCEコア指数が約1年間で最大の伸びに
1月の米個人消費支出（PCE）が発表され、食品とエネルギーを除いたコア指数は市場予想が前年同月比2.8%、結果も2.8%となり、結果と市場予想が一致しました。前月比では市場予想が0.4%、結果も0.4%となり、こちらも結果と市場予想が一致しています。
ただし、前月比での伸びは約1年間で最大の数値となっており、コア指数は連邦準備制度理事会（FRB）が基調的なインフレを判断する上で重要視していることから、利下げ観測がさらに後退する可能性がありそうです。FRBの要人からは、「インフレが持続的に鈍化しているといえるだけの確信はまだない」といった旨の発言が多く出ており、今回の結果はこのような認識を裏付けるものと言えるでしょう。
また、総合指数は市場予想が前年同月比2.4%上昇、結果も2.4%上昇となり、結果と市場予想が一致しました。前月比では市場予想が0.3%上昇、結果も0.3%上昇となり、こちらも結果と市場予想が一致しています。
3月の米連邦公開市場委員会（FOMC）会合は、FRBの要人達が早すぎる利下げを懸念していることから、利下げをする確率は低いと考えられます。アトランタ連銀のボスティック総裁は、「ここ数回発表されたインフレの数字は、この日公表されたものを含め、すぐに2%に到達するような進展ではなく、むしろいくらか起伏のある道のりになることを示している」とし、「このまま行けば、今夏に利下げを開始するのが適切になるだろうというのが私の見方だ」と語りました。
また、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は「持続的な2%インフレ目標に向けては、まだ長い道のりがある」とし、「最初の利下げが年内に適切となる可能性がある」との見解を示しています。現在、市場は利下げが6月に開始され、年間で計3回0.75ポイントの利下げがあると予想しています。
高田日銀審議委員「物価安定目標実現が見通せる状況に」
日銀の高田審議委員が「2%の物価安定の目標実現がようやく見通せる状況になってきた」などと発言したことで、円が買われてドル円が大きく下落しました。ただし、その後に「どんどん利上げをするということではない」との発言が伝わると、今度は円の売り戻しが入って下げ幅を縮小しています。
また、高田審議委員は「出口への対応も含め機動的かつ柔軟な対応に向けた検討も必要」とし、大規模金融緩和からのシフトが必要との見方を示しました。ある市場関係者は「中立からタカ派側の委員と見ていたので、そこまで前のめりでもないが、3月解除の可能性は排除していない口ぶりで、かなり近づいている印象を受ける」と語っています。
植田日銀総裁からも正常化に前向きな発言が出ており、3月の金融政策決定会合でマイナス金利を解除するとの観測が強まりそうです。ただ、「どんどん利上げをするということではない」ということであれば、積極的な円買いにはつながらず、長期的にはドル円の大きな下落圧力にならない可能性があります。
日本のCPIが予想を上回る伸びに、政策正常化に追い風
1月の全国消費者物価指数（CPI）は総合が市場予想1.9%上昇、結果が2.2%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。生鮮食品を除くコア指数は市場予想が1.8%上昇、結果が2.0%となり、こちらも結果が市場予想を上回っています。
22カ月連続で日銀の掲げる目標である2%を維持したことで、金融政策の早期正常化観測が強まりそうです。総合とコアは共に前月からは伸びが鈍化していますが、原材料高の落ち着きに伴うCPIの伸び鈍化は日銀の想定通りであることから、金融政策正常化への大きな影響はないと考えられます。
植田日銀総裁は春闘の動向を注目点として挙げており、まずは大企業の集中回答日である3月中旬がキーになりそうです。ある市場関係者は「サービス価格がじわじわと上がってきている。早ければ3月会合で政策修正という期待は今でも維持されていると思う」と述べています。
日銀の金融政策決定会合は3月中旬に予定されており、今回のCPIの結果が金融政策正常化への追い風になるとの見方から円が買われてドル円は下落しました。
