概要
- 「日銀が3月に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決める見通し」との報道
- 大きなポイントになっていた春闘の平均賃上げ率が33年ぶりの高水準に
- もし実際に解除されればゼロ金利政策に移行し、ETFの買い入れが停止され、YCCも撤廃されると思われる
- 2月の米CPIは総合、コア共に、2カ月連続で予想を上回る伸びとなった
- ある市場関係者「今回のCPIはおそらく、政策をもうしばらく据え置く根拠と見なされるだろう」
- 小売売上高の増加ペースの減速が続いた場合、FRBの早期利下げ観測が強まる可能性
日銀が3月にマイナス金利解除決定の見通し
「日銀が3月に開く金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決める見通し」との報道があり、一時円が買われる展開になりましたが、その後は急速に売られました。今週は日銀の金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合が開催されることから、結果次第では日米の金融政策に振り回される荒っぽい値動きの一週間となる可能性がありそうです。
日銀は金融政策の正常化について、植田日銀総裁は春闘の動向が大きなポイントになるとの考えを示していましたが、連合が発表した春闘の第1回回答集計は平均賃上げ率が5.28%となり、33年ぶりの高水準となっていました。日銀はマイナス金利解除後も緩和的な金融環境を維持する方針を示しており、もし実際に解除されればゼロ金利政策に移行すると考えられます。
また、「長期金利の急上昇を避けるため、解除後も国債の買い入れは続けるが、市場を安定させる目的で続けてきた上場投資信託(ETF)の新規購入は停止する方向」との報道もあり、35年ぶりにようやく最高値を更新した日本株は、金利上昇に加えてETFの購入という下支えを失うことになりそうです。ただし、円の上値が限定的なら日本株にはプラスに働くと見る市場関係者もいます。
「マイナス金利政策の解除と併せて、大規模緩和の柱となってきた長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)も撤廃する方針」とも報道されており、日本の金融政策は大きな転換点を迎える可能性が高まっています。金利のある世界となることで、原材料コストが増した企業や利ざや縮小に苦しむ金融機関の収益改善を促すとみられる一方、膨大な債務を抱える政府や変動金利型住宅ローンの利用者への逆風が警戒されそうです。
米CPIが総合、コア共に2カ月連続で予想を上回る伸びに
2月の米消費者物価指数(CPI)は、変動の大きい食品とエネルギーを除くコア指数が市場予想前年同月比3.7%上昇、結果が3.8%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。前月は市場予想前年同月比3.7%上昇、結果が3.9%上昇となっており、前月も結果が市場予想を上回っていました。
また、総合指数に関しても市場予想が前年同月比3.1%上昇、結果が3.2%上昇となり、結果が市場予想を上回っています。前月は市場予想前年同月比2.9%上昇、結果が3.1%上昇となっており、前月も結果が市場予想を上回っていました。
総合指数だけでなく、物価の基調を示す指標として重視されるコア指数が2カ月連続で市場予想を上回る伸びとなっており、伸びの鈍化するスピードもスローダウンしています。今回の結果は、利下げに対する米連邦準備制度理事会(FRB)の慎重姿勢を補強する内容になったと言えます。
ある市場関係者は「今回のCPIはおそらく、政策をもうしばらく据え置く根拠と見なされるだろう」との見解を示しました。市場では利下げ開始を6月と予想していますが、今回の結果で利下げ観測はやや後退しています。ただし、イエレン財務長官は「毎月順調に進展するとは考えていないが、トレンドとしては明らかに良好だ」としており、インフレ高止まりへの過度な警戒は必要無いのかもしれません。
米小売売上高が予想を下回る、個人消費に黄信号
2月の米小売売上高は市場予想が0.8%増、結果は0.6%増となり、結果が市場予想を下回りました。建設資材店や自動車ディーラーの増加が目立ったものの、家具や健康用品、衣料品、無店舗小売りが減少しました。
労働市場が冷え込みを見せ始め、金利の高止まりや物価上昇も続いていることが、消費者の消費行動に大きな影響を与えているようです。ある市場関係者は「消費者は貯蓄がなくなっているが、金利が依然として高いため借り入れには慎重だ」との見方を示しました。
小売売上高の増加ペースの減速が続いた場合、FRBの早期利下げ観測が強まる可能性があります。現在、市場は6月に利下げが開始され、年間では計3回0.75ポイントの利下げを予想しています。