概要
- 2月の米PCEは、コア価格指数の伸びが前月から鈍化
- 今回のコア価格指数の鈍化は、FRBにとって朗報
- 南アフリカ準備銀行が3月の会合で、5会合連続の政策金利の据え置きを決定
- 景気の弱さが続いているが、インフレ再燃が懸念されることから当面金利を据え置かざるを得ない状況
- 3月の東京都区部CPIは、コア価格指数の伸びが2カ月ぶりに鈍化
- ただし、日銀が目標とする2%を2カ月連続で上回っており、市場が予想する日銀の利上げ時期に影響を与える可能性
米コアPCEの伸びが前月から鈍化
2月の米個人消費支出(PCE)は、価格の変動が大きい食品とエネルギーを除いたコア価格指数が市場予想前年同月比2.8%上昇、結果も2.8%上昇となり、市場予想と結果が一致しました。ただし、前月の2.9%上昇(速報値は2.8%上昇)からは伸びが鈍化しています。PCEのコア価格指数は、米連邦準備制度理事会(FRB)が基調的なインフレを判断する上で重視している経済指標です。
また、総合価格指数は市場予想前年同月比2.5%上昇、結果も2.5%上昇となり、こちらも市場予想と結果が一致しました。ただし、総合価格指数は前月の2.4%上昇から伸びが加速しています。
今年に入って複数のインフレ指標で物価上昇圧力が示されていましたが、今回のコア価格指数の鈍化はFRBにとって朗報です。ただし、FRB当局者は「インフレが持続的に低下傾向にあることを示すさらなる証拠が必要」としており、インフレ再燃を警戒して利下げを急がない姿勢を見せています。
高い借り入れコストや求人の減少、根強いインフレといった状況は見られるものの、労働市場はなお堅調であり、それが消費者の支出を支えています。ある市場関係者は「消費者が今後もこうしたペースで支出を続ければ、企業が現在の価格を維持するのは非常に難しくなるだろう」と語りました。
一方、別の市場関係者は「向こう数カ月に労働市場は冷え込み、個人所得の伸びは一段と減速する見通しで、それにより支出の伸びは総じて鈍化すると考えられる」とし、「経済状況が軟化する中で、このままいけば米利下げ開始は6月になる」との認識を示しています。FRBのパウエル議長は、PCEの結果について「ほぼわれわれの予想通り」だと説明し、「インフレ率が目標の2%に向けて順調に低下していると当局が確信するまで利下げは適切ではない」との考えを引き続き示しました。
現在、市場は6月に利下げが開始され、年間では計3回0.75ポイントの利下げがあると予想しています。
南アフリカ準備銀行が政策金利を5会合連続の据え置き
南アフリカ準備銀行(SARB)は3月の会合で、政策金利を8.25%に据え置くことを決めました。景気が低迷している南アフリカですが、インフレ圧力がくすぶることで利下げをすることができていきません。
金利据え置きは5会合連続となり、南アフリカ準備銀行は総合インフレ率が目標レンジ3〜6%の中間点である4.5%に達するのは2025年末とし、従来の予想から後ずれさせています。また、「政策金利の正常化開始時期も遅れる」としており、しばらくは8.25%という高金利が続きそうです。
2月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比5.6%上昇と、前月の5.3%から伸びが加速し、2カ月連続の加速となっていました。これによってインフレ再燃の警戒度が、一段と上がっています。
南アフリカでは電力不足や物流インフラの問題などがあり、これに加えて物価高と金利高が経済の重荷になってきました。しかし、インフレ再燃が懸念されることから、南アフリカ準備銀行は当面の間金利を据え置かざるを得ず、景気には逆風になると考えられます。
南アフリカランドにとって金利据え置きはプラスの材料ですが、景気の弱さが続く場合は上値を抑えるかもしれません。
東京都区部CPIが2カ月ぶりの伸び鈍化も、日銀目標を上回る
3月の東京都区部消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除くコア価格指数が市場予想前年同月比2.4%上昇、結果も2.4%上昇となり、市場予想と結果が一致しました。ただし、前月の2.5%上昇からは伸びが鈍化し、2カ月ぶりの鈍化となっています。
東京都区部CPIは全国の物価の先行指標とされており、市場が予想する日銀の利上げ時期に影響を与える可能性があります。日銀は3月の金融政策決定会合で17年ぶりの利上げに踏み切りましたが、今後の政策運営について植田総裁は、「物価見通しの上振れや上振れリスクの高まりは政策変更の理由になる」としていました。
東京都区部CPIのコア価格指数は今回伸びが減速しましたが、日銀が目標とする2%を2カ月連続で上回っています。さらに、政府が物価高騰対策として実施している電気・ガス代の負担軽減措置は5月に終了されることが発表されており、日銀を利上げに傾けることになりそうです。