概要
- 日銀が金融政策決定会合を開催し、金融政策の現状維持を決めた
- 植田日銀総裁の発言や米経済指標の結果が要因となり、ドル円は一時158円台半ばまで上昇
- 週明けには日本がゴールデンウイークに入ることから、流動性が低下して大きな値動きが発生するリスクが高まる
- 3月の米PCEは、総合・コア共に市場予想を上回る伸びとなった
- 継続的な物価圧力に対する懸念が強まり、米国の利上げ期待がさらに後退
- 4月の東京都区部CPIは、コアCPIの結果が市場予想を大きく下回った
日銀が金融政策維持も円売り加速
日銀が金融政策決定会合を開催し、金融政策の現状維持を決めました。ただ、植田日銀総裁が物価に対する円安の影響について、「今のところ大きな影響を与えているということではない」との見解を示したことや、米国の経済指標の結果が強い数値だったことを受け、ドル円は一時158円台半ばまで上昇し、週を終えることになりました。
米国の利下げ観測が後退する中、日米の金利差に注目した円売り・ドル買いが加速しています。ドル円は介入を思わせるような突然の急落も見られましたが、結局一時的な反落で終わりました。
ある市場関係者は円相場について、「信じられないほどの弱さだ」とし、「これほど弱ければ、確かに懸念を引き起こすだろう。円の動きは行き過ぎだと思う。われわれは円が現水準から下がるのではなく、上がるとみる」と述べています。別の市場関係者は、「協調した動きでない限り、タカ派的な政策メッセージの支援がなければ、いかなる介入も無駄だろう」と語りました。
週明けには日本がゴールデンウイークに入ることから、市場参加者が減って流動性が低下し、大きな値動きが発生するリスクが高まります。160円に向かって大きく上昇する可能性がありますが、逆に政府・日銀による為替介入を警戒しての急落にも警戒が必要です。
神田財務官は先月、「2週間で4%以上の円安進行は、ファンダメンタルズに沿っておらず、明らかに投機」との見方を示しており、ドル円はすでにこの基準に達しています。このことから、市場参加者は介入を思わせるような値動きに非常に敏感になるはずです。
週明けからの取引には、より慎重なエントリーと素早い損切りが求められるかもしれません。
米PCEが総合・コア共に予想を上回る伸びに
3月の米個人消費支出(PCE)は、総合が前年同月比市場予想2.6%上昇、結果が2.7%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。一方、価格変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア価格指数は、前年同月比市場予想2.7%上昇、結果が2.8%上昇となり、こちらも結果が市場予想を上回っています。
PCEは米連邦準備制度理事会(FRB)が重視する経済指標であり、そのPCEの結果が市場予想を上回ったことから、継続的な物価圧力に対する懸念が強まり、米国の利上げ期待がさらに後退しました。小売売上高の好調さから家計消費の堅調さも示されており、米国が今年利上げを実施したとしても年後半になりそうです。
ある市場関係者は「高金利でも経済が持ちこたえているという話と、インフレ圧力が根強いという話の両方がある。金融引き締めという観点から話をするのは正しいとは思わないが、すぐに緩和に向かう可能性はかなり低いと思う」と語りました。パウエルFRB議長もFRBが利下げ実施まで待つ期間は以前の想定よりも長くなることを示唆しており、米国はしばらくの間20年来の高金利が続く可能性が高まっています。
ある市場関係者は「景気の底堅さが続くことで、利下げが2025年まで先送りされるリスクもあり、来年の成長にとって重要な下振れリスクとなる」と述べました。現在、市場は9月に利下げが開始され、年間では計1回0.25ポイントの利下げ実施を予想しています。
米国と日本の金利差が長期間縮まらないとの観測が強まると、ドルが買われて円が売られやすくなるため、日銀金融政策決定会合後のドル円急騰の一因になりました。
東京都区部CPIの伸びが大幅に鈍化
4月の東京都区部消費者物価指数(CPI)は、生鮮食料品を除くコアCPIが、市場予想前年同月比2.2%上昇、結果が1.6%上昇となり、結果が市場予想を大きく下回りました。東京都区部CPIは全国の物価の先行指標とされており、インフレ率の低下によって日銀が利上げできない状況に追い込まれることが懸念されます。
プラス幅の縮小は2カ月連続であり、日銀が目標とする2%を3カ月ぶりに割り込みました。また、食料品価格の伸びと東京都による高校授業料の実質無償化が、今回のCPIの結果につながりました。
ある市場関係者は、食料品やエネルギー価格の動きから判断すると、「円安による輸入価格の押し上げの影響は今のところ目立っていない」との見解を示しています。