概要
- 4月の全国消費者物価指数(CPI)は、総合・コア共に伸びが鈍化
- 市場の早期追加利上げ観測はやや後退
- 4月の米新築住宅販売件数は、結果が市場予想を下回った
- 高金利が続けば新築住宅販売件数の減少も続き、住宅市場が苦境に立たされる可能性
- FOMCの議事要旨「政策金利をより長期に高水準で維持することが望ましいとの認識で当局者が一致」
- インフレ率抑制のために高金利を長期間継続するとの観測が強まれば、ドル買いによってドル円の上昇も
日本のCPIが総合・コア共に伸び鈍化
4月の全国消費者物価指数(CPI)は、総合が市場予想前年同月比2.4%上昇、結果は2.5%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。生鮮食品を除くコア指数は市場予想前年同月比2.2%上昇、結果も2.2%上昇となり、結果と市場予想が一致しています。
インフレの基調を示すコア指数は、これで25カ月連続で日銀の目標とする2%を上回っています。ただし、総合は前月の2.7%上昇、コア指数は2.6%上昇から共に伸びが鈍化しており、市場の早期追加利上げ観測はやや後退しました。
ある市場関係者は「確かに2%を超えてはいるが、いわゆるデマンドプル、日銀が言う第2の力的な物価上昇圧力はどちらかというと弱まる方向にあるのだろう」と指摘しました。一方で、平均賃上げ率が33年ぶりの5%超えとなった春闘の高い賃上げ率のサービス価格への波及が、5月から8月ごろに徐々に出てくるとの見方もあります。
インフレ率が5月から高まってくるとすれば、9月または10月に日銀は利上げに踏み切るかもしれません。ただ、円安が基調的な物価に大きな影響を与えていると判断すれば、早い場合7月に利上げを行う可能性もありそうです。
今回のCPIの結果による早期追加利上げ観測後退で、ドル買い・円売りに追い風が吹きそうですが、介入への警戒感が再燃していることから、157円台は上値が重たくなることが予想されます。
米新築住宅販売件数が減少、高金利継続で購入意欲低下
4月の米新築住宅販売件数は、市場予想が67.9万件、結果は63.4万件となり、結果が市場予想を下回りました。前月は69.3万件であり、住宅価格と住宅ローン金利の高止まりを背景に前月から減少しています。
雇用統計やCPIが鈍化の兆候も示したことから、住宅ローン金利は足元でやや低下しましたが、FRBは依然として高金利を維持する姿勢を崩していません。高金利が続けば新築住宅販売件数の減少も続き、住宅市場が苦境に立たされる可能性があります。
現在、市場は11月に利下げが開始され、年間で計1回0.25ポイントの利下げが実施されると予想しています。少し前まで9月に利下げ開始、年間で計2回0.5ポイントの利下げが予想されていましたが、今年は利下げが無いと予想する市場関係者も増えてきました。
住宅関連指標は景気に対して先行性があるとされていますが、新築販売は契約時点で算出されるため、購入契約の完了時点で算出される中古住宅よりも、さらに1~2カ月先行性があると言われています。また、住宅の新築は家具・家電製品などの耐久財や建築資材などの需要が発生するため、関連産業への波及効果が大きく、今後も減少が続くと米経済の見通しに大きく影響することもありそうです。
FOMC議事要旨「長期的な高金利が望ましい」
4月30日~5月1日にかけて開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公開され、「政策金利をより長期に高水準で維持することが望ましい」との認識で当局者が一致していたことが分かりました。さらに、議事要旨では「正当化されるなら追加引き締めにも前向きだと、さまざまな当局者が言及した」としています。
パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は、FOMCの後の記者会見で、「インフレ率が持続的に2%目標に向かう道筋にあるとの確信を当局が強めるまで、利下げ実施は適切ではない」との見方を示していました。アトランタ連銀のボスティック総裁も、「金融政策が成長を鈍化させる効果は以前のサイクルよりも弱くなっており、インフレ抑制のために金利をより長くより高い水準に維持する必要性が強まっている」と語っています。
市場は利下げ時期を探っていただけに、今回の議事要旨についてタカ派的だと感じた市場関係者は多かったはずです。購買担当者指数(PMI)速報値も総合・製造業・サービス業が共に市場予想を上回り、インフレの再加速が示唆されています。
インフレ率抑制のために高金利を長期間継続するとの観測が強まれば、ドル買いによってドル円の上昇につながりやすいため、インフレ指標とFRBの動向には今後も注意が必要です。