概要
- 6月の米PCEは、総合の伸びが前月から鈍化して過去4カ月で最小に
- 9月のFOMCで利下げが実施される見込み
- 4〜6月の米GDP速報値は、結果が市場予想を上回った
- 市場関係者「ソフトランディングのシナリオが視野に入ってきた」
- カナダ銀行が2会合連続で政策金利を0.25ポイント引き下げ、追加利下げの可能性も示唆
- マックレムカナダ銀行総裁「追加利下げを見込むことは妥当」
米PCEの伸び鈍化で利下げ期待高まる
6月の米個人消費支出(PCE)は、総合が市場予想前年同月比2.5%上昇、結果も2.5%上昇となり、結果と市場予想が一致しました。また、価格の変動の激しい食品とエネルギーを除いたコア価格指数は、市場予想が前年同月比2.5%上昇、結果は2.6%上昇となり、結果が市場予想を上回りました。
PCEは米連邦準備制度理事会(FRB)が重視しているインフレ指標であり、コア価格指数は前月と同じだったものの、総合は前月の2.6%から鈍化して過去4カ月で最小の伸びとなり、インフレ状況の改善が示されています。インフレ状況が改善されれば高金利を維持してインフレを抑える必要が薄れることから、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが実施されそうです。
ある市場関係者は「FRBの観点から見た場合、データを累積的に判断すると、9月利下げの扉を開く上でインフレと労働市場環境の両面で十分進展していることを示していると考えられる」と述べています。現在、市場は9月に利下げが開始されて年3回0.75ポイントの利下げが実施されると予想しています。
まずは、7月31日にあるFOMCの会合後の記者会見で、パウエルFRB議長が9月の利下げを示唆する発言をするかどうかに注目です。8月2日には雇用統計も発表されるため、結果によってはドル円が乱高下する週になるかもしれません。
米GDPが予想を上回る伸び、経済の堅調さ示唆
4〜6月(第2四半期)の米実質国内総生産(GDP)速報値は、市場予想が前期比年率2%増、結果は2.8%増となり、結果が市場予想を上回りました。20年あまりで最高水準の金利が1年にわたって維持されながらも、米経済が持ちこたえていることが示されています。
これは経済のソフトランディング(軟着陸)を目指すFRBにとって好ましい状況ですが、失業率が3カ月連続で上昇し、クレジットカード延滞率がデータでさかのぼれる2012年以降で最高となるなどの懸念点もあります。ある市場関係者は「FRBにとっては完璧な統計だ。今年上期の成長は熱過ぎず、インフレは沈静化を続け、ソフトランディングのシナリオが視野に入ってきた」と語りました。
予想を上回るGDP発表後にドル円が上昇を見せたように、米経済が堅調さを維持すればドル円は上がりやすくなります。円を売って外貨を買うキャリートレードの巻き戻しが起こっていますが、7月30日から31日にかけて開かれる日銀の金融政策決定会合では金利が据え置かれるとの見方が依然として市場で主流であり、市場の見方はかなり慎重です。
早川元日銀理事は足元の日本経済が一時的な足踏み状態にある中、日銀が今月末の金融政策決定会合で追加利上げを行う可能性は低いとの見解を示しつつ、国債買い入れの減額はしっかりした規模になるとの認識を示しています。
もし日銀による国債買い入れ減額の規模が市場予想を裏切るような数字となったり、FRB関係者が向こう数カ月間の利下げ観測を後退させるような発言をしたりした場合には、一気に円安方向に傾く可能性もありそうです。ある市場関係者は「FRBが9月利下げを示唆せず、米国のデータが再び強まり始めた場合、円は160円を試す可能性がある」との見方を示しています。
カナダ中銀が2会合連続の利下げ、追加利下げの可能性も示唆
カナダ銀行(中央銀行)が2会合連続で政策金利を0.25ポイント引き下げ、さらに追加利下げの可能性も示唆しました。カナダの政策金利はこれで4.5%となっています。
マックレムカナダ銀行総裁は、「目標が視界に入っていることに加え、経済における過剰供給が増えており、金融政策審議において下振れリスクの比重が高まっている」との認識を示しました。加えて、「追加利下げを見込むことは妥当」との考えを改めて表明し、今後の政策決定は会合ごとに判断するとしました。
カナダ中銀の政策の軸足は、インフレの抑制から景気支援に移ったと言えます。カナダの6月の消費者物価指数(CPI)は2.7%となっており、目標の2%に近づきつつあります。現在、市場は年末までに2回、0.5ポイントの利下げをほぼ織り込んでおり、カナダドル円の下落要因になりそうです。