FRB副議長「早急な巻き戻し回避」、英格付け「ネガティブ」に

目次

概要

  • FRBのブレイナード副議長が「時期尚早な政策巻き戻しを避けることにコミットしている」と発言
  • ドット・プロットは年内に1.25ポイントの利上げが適切だと判断されていることを示唆
  • S&Pが英国の長期外貨建ておよび自国通貨建てソブリン格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更
  • 英国の財政状況へのリスクが今後2年で増大するとの見解が理由
  • ユーロ圏のインフレ率が9月にまた過去最高を更新、ECBに大幅利上げの継続を迫る圧力がさらに増した

FRBブレイナード副議長、「時期尚早な巻き戻し回避」

米連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード副議長が30日に講演をおこない、借り入れコストの上昇が世界的な金融安定に与えるリスクについて警戒する必要性を認めました。しかしながら、「インフレを抑制するため、米政策金利をしばらくの間高く維持する必要がある」とも語っています。

ブレイナード副議長は「金融引き締めの完全な効果が様々なセクターを通じて波及し、インフレを押し下げるまでには時間がかかる」との認識を示しました。加えて、「しばらくの間は景気抑制的な金融政策を維持し、インフレが目標に戻りつつあるという確信を得る必要がある。したがって、われわれは時期尚早な政策巻き戻しを避けることにコミットしている」と述べています。

ブレイナード副議長はハト派とされており、そのブレイナード副議長が世界の金融市場の混乱が深まる状況にあっても、米金融当局として利上げを継続する決意を示したことで、トレーダーは株価が下がってもFRBの助けが来ないことを頭に入れておく必要があるでしょう。

また、ブレイナード副議長は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合後に公表された最新の金利予測分布図(ドット・プロット)にも触れ、「年末にかけて、さらに来年に入っても追加利上げが実施される」ことを示唆していると説明しました。金利予測分布図からは金融当局者らが年内残り2回のFOMC会合で、さらに計1.25ポイントの利上げが適切だと判断していることが分かります。

つまり、11月1〜2日に開催される次回会合で4会合連続となる0.75ポイントの利上げが決まる可能性が高いことが示唆されていると言えます。さらに、12月には0.50ポイントの利上げがおこなわれることになりそうです。

FRBのタカ派的なスタンスと緩和を維持する日本銀行との対比はしばらく変わらず、ドル/円の目線も上方向が続くことが考えられます。

S&Pが英国の格付けを「ネガティブ」に変更

米国の格付け会社S&Pグローバル・レーティングが、9月30日に英国の長期外貨建ておよび自国通貨建てソブリン格付けの見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に変更したと発表しました。格付け自体は「AA」でそのままとなっています。

今回の変更はポンドの下落圧力につながる可能性があると言えるでしょう。S&Pは「ネガティブ(弱含み)」に変更した理由について、英国の財政健全性へのリスクが今後2年で高まるとの見通しを挙げました。

S&Pは英国のトラス政権が示した大型減税を柱とする補正予算案について、「政府の借り入れコストを押し上げる」としています。加えて、「8月時点で前年同月比9.9%と高止まりする物価上昇を抑制する取り組みを難しくし、財政不均衡を著しく拡大させる危険がある」との見方を示しました。

23日に英政府が発表した経済対策は1972年以来の大規模な減税となり、景気への長期的な効果を狙ったものですが、財政不安を招きポンド/ドルが一時過去最安値を更新したほか、英国債利回りも急上昇することになりました。しかし、トラス首相は「英国には変化が必要だ」と説明し、「大型減税が国のさらなる成功につながるとの考えから同計画をやり抜く決意だ」と述べています。

とはいえ、英中銀が債券の暴落を防止するため市場介入に踏み切るなど混乱が見られ、トラス首相の支持率はジョンソン前首相の支持率を下回っているとする見方もあります。

英国の混乱が長引けばポンドの長期的な下落も考えられるため、トレーダーは今後の展開に注目すべきでしょう。

ユーロ圏のインフレ率がついに2桁、また最高更新

ユーロ圏のインフレ率は市場予想が前年同月比9.7%上昇、結果が10.0%上昇となり、9月にまた過去最高を更新し、初の2桁台を記録しました。市場予想も上回っており、欧州中央銀行(ECB)に大幅利上げの継続を迫る圧力はさらに増したと言えます。

結果が市場予想を上回るのは5カ月連続であり、エネルギーと食品価格を除いたコアインフレ率も予想を上回って過去最高の4.8%に達しました。市場予想を上回る高いインフレ率が続く限り、大幅利上げがおこなわれる可能性は高まるでしょう。

ECBの政策金利発表とラガルド総裁の記者会見は10月27日におこなわれます。

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