マルチタイムフレーム分析(MTF)は、多くの人が聞いたことはあるものの、具体的な使い方やエントリーでの活用方法が理解できていないケースが多いかもしれません。ここでは実際のチャート画像と共にマルチタイムフレーム分析を使用して、高精度なエントリー方法について詳しく解説します。
マルチタイムフレーム分析(MTF)とは?
具体的には:
- 長期足(月足、週足、日足など)のチャートで全体的なトレンドの流れを把握する方法
- 中短期足(4時間足、1時間足、30分足など)のチャートで見えない小さな動きを捉える方法
- より精度の高いエントリーを狙うための相場分析方法を実践する方法
などがあります。
チャートはフラクタル構造
フラクタル構造とは、図形の部分と全体が自己相似になっているものを指します。簡単には、「ひとつの図形のある部分を分解すると、同じ形が現れる」ことです。FXチャートでもフラクタル構造が存在しており、この性質を利用して高精度なエントリータイミングや場所を特定することが可能です。
例えば、日足のダブルトップの1つのトップの部分を拡大する(時間足を短く表示する)と、小さなダブルトップが見つかることがあります。同様に、ダブルトップの谷部分を拡大すると、小さなダブルボトムが見つかることもあります。
実際のチャートでは、大きなダブルトップの一つの山に小さなダブルトップが見つかることがあるだけでなく、他の転換パターン(三尊天井やトリプルトップなど)や、高値圏でのレンジ相場のような持ち合い相場が現れることもあります。
上図はユーロドルの日足チャートでダブルトップが確認できますが、1時間足にすると最初の山には小さなダブルトップが形成されていることがわかります。日足の二つ目の山を1時間足にすると、5つの山が出来ていて、どの山も前回の高値を更新できずに下落に転じる転換パターンが出現していることがわかります。
このようなマルチタイムフレーム分析を活用することで、相場の流れやエントリータイミングをより正確に把握することができ、リスクリワードの良いエントリーが可能となります。特に、FXトレードにおいては、様々な時間足のチャートを駆使することで、全体像と局所的な動きを捉えることが重要となります。
マルチタイムフレーム分析の手順
- 長期足でトレンドの流れを把握する
- 中短期足でエントリーポイントを判断する
それでは日足と1時間足を使ってトレードすることを想定し、実際のチャートでマルチタイムフレーム分析の具体的な手順をみていきましょう。
1 日足で1つ目の山ができたことが確認
この時点ではダブルトップになるかどうかはまだわかりませんが、レートが前回の高値に再接近してきたときに、前回の高値を上抜けば上昇トレンド継続、前回の高値の上抜けに失敗すればダブルトップになる可能性があると想定できます。
そこで、ダブルトップの二つ目の山になるかもしれない場所にレートが接近してきたら時間足を1時間にします。
2 1時間足を見る
日足のダブルトップの二つ目の山の形成の過程を細かく見ることができます。この時のユーロドルの場合は最終的に小さな山を5つ作りました。山1と山2は同じ高さ、山3が1と2より少し高く、そこから山4、山5と高値を切り下げています。
山1と2で作った暫定ネックラインは結果的に2回ダマシがあり、もう一段下に最終的なネックラインを形成し、そこを下抜けた所から相場の本格的な下落が始まっています。
このように天井圏でできるチャートパターンは、一般的なダブルトップや三尊天井のようにはっきりした形ではなくても、何度も上値を試しても上抜けできなかったという事実が転換パターンとして認識されます。
この例のような一見複雑に見える転換パターンもネックラインを引くことでその形が見えてきます。このような天井圏の転換パターンをパターンとして捉えるのではなく、ある一定の値幅で上下しているレンジと捉えることも間違いではありません。
3 1時間足で転換パターンが完成
ネックラインを下抜けた相場はそこからどんどん下落してゆき、日足でダブルトップを完成させました。
マルチタイムフレーム分析のメリット
1 よりよい位置でエントリーが可能
売りエントリーの場合はより高い場所、買いエントリーの場合はより安い場所からエントリーができます。
2 リスクリワードが良くなる
例えば、前項で説明したように日足のダブルトップの二つ目の山の上から売りエントリーする場合、損切りは日足の一つ目の山の上に置くことができ、損切位置が明確かつ近い場所に設定することができます。また、利益確定は暫定ネックラインを想定できるため、リスクリワードが良いトレードが可能です。
3 利益を大きく伸ばせる
上位足(長い時間足)のチャートパターンを使って下位足(短い時間足)でトレードできるため、エントリーチャンスが増え、場合によっては利益を大きく伸ばすことができます。
マルチタイムフレーム分析のデメリット
1 正しい分析ができない可能性がある
組み合わせるチャートの時間軸が離れすぎていると、正しく分析ができない可能性があります。例えば、日足のダブルトップの二つ目の山の上からエントリ―を狙った場合に、1分足チャートで二つ目の山の転換パターンを探すと見ているパターンが小さすぎて正しい分析が難しくなります。
2 狙っている波がわからなくなる
例えば日足チャートのダブルトップの二つ目の山の上からエントリ―を狙って1時間足に切り替えたときに、1時間足の動きに必要以上に囚われてしまうと、日足の大きな流れや環境を忘れてしまい、どの時間軸のどの波を狙ってトレードしているのかがわからなくなってしまうことがあります。
マルチタイムフレーム分析を行う際は、環境認識をするチャートと実際にトレードをする執行時間足のチャートを事前にはっきりと分けておく必要があります。特に慣れないうちは自分がどの時間軸のどの波を狙ってエントリ―しているのかが曖昧になることで、損切位置や利益確定の判断に迷うことになるので注意しましょう。
マルチタイムフレーム分析を使ったエントリー方法
それでは具体的にマルチタイムフレーム分析を使ったエントリーのやり方を、下落トレンド中の戻り売りを例にあげて見ていきましょう。トレードの基準となる時間足は日足とします。
下落トレンド中の戻り売りポイントを探す
下図はユーロドルの週足チャートで長期下落トレンドが発生していることがわかります。この下落途中の赤い矢印で示した戻りのできるだけ優位な位置からエントリーをするためのマルチタイムフレーム分析を行います。
まず上位足の週足の環境認識では下落トレンドが発生していることがわかります。
チャートを日足にすると週足では見えにくかった前回安値を下抜けた後、その安値までレートが戻ってきて、そこで高値が抑えられている動きが確認できるため、前回の安値に引いたサポートラインがレジスタンスラインに転換していると判断できます。
また週足では長期下落トレンド中なので下落は明確な転換パターンが発生するまでは継続する(ダウ理論)と想定できるため、レジスタンスラインをバックに売りを仕掛ける良いタイミングが来ていることもわかります。
更に時間足を4時間にします。サポレジ転換ラインでレンジ相場を形成していることがわかります。山が6つある転換パターンと認識しても良いでしょう。このレンジの安値にネックラインを引き、そのネックラインを下抜けたところからエントリ―します。その際の損切位置は4時間足のレンジの高値の上に設定します。利益確定は週足レベルでの相場の転換が確認されるまでは利益を伸ばすことができるため、リスクリワードは非常に良いエントリーになります。
エントリ―した後、一旦相場は下落しましたが反発してもう一度ネックラインまで戻ってきた時点で、再度戻り売りの良いタイミングかもしれないと考え、今度は1時間足チャートに切り替えます。
1時間足チャートを見ると4時間足の安値に引いたネックライン手前でダブルトップを形成していることがわかります。このダブルトップのネックラインを下抜けた時点でエントリーします。損切りは1時間足のダブルトップの上に置くと良いでしょう。
日足チャートに戻した時に、二つのエントリ―の位置が確認できます。結果的に損切りに対して大きな利益が取れ、リスクリワードの良い精密なエントリ―ができたことがわかります。
まとめ
マルチタイムフレーム分析を用いることで、単一のチャートだけを見てトレードするよりも精度の高いエントリーやリスクリワードの良いトレードが可能になります。初心者は特に、わかりやすいパターン(ダブルトップや三尊天井など)を用いてエントリーし、マルチタイムフレーム分析に慣れていくことがおすすめです。