10月のドル円攻略ガイド:円高アノマリーと金利差の行方

10月のドル円攻略ガイド:円高アノマリーと金利差の行方

10月のドル円は毎年「円高になりやすい」と言われる季節性アノマリーが意識される一方で、2025年は日米の金利差が依然として大きく、円安の基調も根強く残っています。「どちらに動くか読みにくい」「何を根拠にエントリーすべきか分からない」と感じるトレーダーも多いでしょう。

本記事では、最新の日米金利差や要人発言・経済指標をもとにしたファンダメンタルズ分析と、ダウ理論+水平線・移動平均線・RSIを使ったテクニカル分析を組み合わせ、10月のドル円相場を多角的に検証します。

さらに、短期〜長期のトレードスタイルに合わせたシナリオ別のエントリー戦略も具体的に紹介しますので、10月相場を戦略的に攻略したい方はぜひ参考にしてください。

目次

【2025年9月最新】日米金利差とドル円相場状況

2025年9月時点で、米国金利4.25%、日本金利0.5%で日米金利差は3.75%あります。2023年は金利差が最大5%以上あったことを考えると縮小傾向ですが、依然として3%以上の差があるため、大きな流れとしては未だに円安目線が強いと言えます。

金利差はドル円相場への影響が大きく、注目すべき要素の1つです。過去5年分の日米金利差とドル円レートの推移を見ても、影響が大きいことがわかります。

年月米国金利日本金利日米金利差ドル円レート
2025年9月4.25%0.50%3.75%146円~149円
2024年9月5.00%0.25%4.75%140円~149円
2023年9月5.50%-0.10%5.60%146円~150円
2022年9月3.25%-0.10%3.35%140円~145円
2021年9月0.25%-0.10%0.35%109円~112円

2021年は金利差が0.35%と小さく、ドル円は110円あたりを推移していました。そこから、米国がコロナによる経済への影響を打破するために利上げを開始し、日米金利差は広がる一方となり、ドル円レートは一気に140円を超えました。

米国は利上げを継続する一方、日本はマイナス金利のまま停滞しており、2023年には金利差が5.6%に広がり、ドル円は150円を突破。2024年には160円を突破し、日銀が為替介入せざるを得ない状況になりました(160円突破した際に為替介入が執行され、その後は150円台で推移しました)。

このように、金利差はドル円レートに大きく影響します。ただし、注意点として日米金利差とドル円レートが完全一致するわけではありません。実際に2024年と比べて2025年の方が金利差が小さいですが、ドル円レートは同じ水準です。

一致しない理由は、為替は事実ではなく、期待や予想で変動するからです。例えば、2025年9月は米国が0.25%の利下げを発表しましたが、「これ以上は利下げしないだろう」「日米金利差は依然大きい状態が続くだろう」と予想する人が多かったためドル円レートは下がらず、むしろ上がりました。

ただ、実際に日米金利差はドル円相場に大きな影響を及ぼしており、私は金利に注目してから利益を上げられるようになりました。特にスイングトレーダーにとって、金利動向を観察することがトレードを優位に進める第一歩になることは間違いありません。

【日米の金利動向】要人発言と経済指標から徹底考察

金利動向を予想する上で欠かせないのが、要人発言と経済指標です。2025年9月時点の発言内容や指標データをそれぞれ解説します。

【日銀】植田総裁の発言

2025年9月19日に日銀の植田総裁による記者会見が行われ、以下のような発言がありました。

  • 金利は0.5%で据え置き、利上げは見送り
  • ただし、政策委員9名中2名は0.25%の利上げを主張
  • 「経済・物価見通しが実現していけば、情勢改善に応じて政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」と発言

今回の会合では金利0.5%で据え置きとなったものの、委員の一部が利上げを提案していることから、市場では「年内の追加利上げ観測」が高まっています。植田総裁自身も会見で「経済・物価情勢次第では利上げの可能性を排除しない」と明言しており、今後段階的に金利が引き上げられるシナリオも意識されます。

ただし、過去にも日銀は利上げを示唆しつつ、国内景気や外部環境の不透明感を理由に見送った経緯があります。そのため、実際に利上げが実行されるかどうかは、インフレ率や為替市場の動向を含め今後のデータ次第となるでしょう。

【FRB】パウエル議長の発言

2025年9月18日(日本時間)にFRBのパウエル議長によるFOMCが行われ、以下のような発言がありました。

  • 政策金利を4.25%に0.25%引き下げを決定
  • FOMCメンバー12名中1名は0.5%の利下げを主張
  • 今後の利下げ判断はデータ重視で行うという姿勢を強調
  • 「労働市場は活力が弱まってやや軟化しており、雇用への下振れリスクは高まっている」

今回のFOMCでは、0.25%の利下げが発表されましたが、更なる利下げの可能性が大きな注目点となりました。議長は「事前に定められたコースはない」と繰り返し述べ、今後も経済・物価データを注視して柔軟に判断する姿勢を示しています。

特に焦点となったのは、インフレ抑制と雇用安定のバランスです。インフレ率は依然としてFRBの目標水準を上回る一方で、雇用指標の一部は弱まりつつあり、利下げを急ぐべきか慎重に進めるべきか政策当局の難しい判断が続いています。

市場では、今回の0.25%利下げに続いて「年内にさらに数回の利下げが行われる」との観測が強まっていますが、議長の発言からは過度な利下げ期待をけん制する雰囲気も感じられます。つまり、FRBは景気を下支えする姿勢を維持しつつも、インフレ再燃リスクを考慮して慎重に利下げペースを決めていく可能性が高いと考えられます。

【経済指標】雇用統計

金利動向に大きく影響する指標に、雇用統計(非農業部門雇用者数と失業率)があります。特に非農業部門雇用者数は市場の注目度が高く、予想と結果の差がドル円相場を大きく動かす要因となります。

下表は2025年1月から8月までの雇用統計データ(予想・結果・改定値)です。FRBはこれらの経済指標を踏まえて利上げ・利下げを判断するため、今後の政策を占う上でも極めて重要です。

2025年の非農業部門雇用者数データ

対象期間予想結果改定値
2025年08月7.5万人2.2万人7.9万人
2025年07月10.8万人7.3万人1.4万人
2025年06月11.4万人14.7万人14.4万人
2025年05月13.0万人13.9万人14.7万人
2025年04月13.0万人17.7万人18.5万人
2025年03月13.5万人22.8万人11.7万人
2025年02月16.0万人15.1万人12.5万人
2025年01月17.2万人14.3万人30.7万人

最新の雇用統計では、非農業部門雇用者数が2.2万人増にとどまり、予想を大きく下回る結果となりました。これは米労働市場の勢いが鈍化していることを示しており、景気減速の懸念が強まっています。

また、7月の雇用統計では速報値で7.3万人増と予想をわずかに下回る程度でしたが、その後の改定値で1.4万人増に大幅下方修正され、「想定以上に労働市場が弱い」という実態が浮き彫りになりました。

ただし、FRBの視点では雇用の伸び悩みは追加利下げを後押しする材料になりますが、同時にインフレが依然として目標を上回っていることから、利下げによるインフレ再燃リスクも抱えています。

つまり、雇用統計は悪化しており、利下げ方向の流れが強いことは間違いありません。しかし「雇用の弱さ」と「インフレの粘り強さ」という2つの要因が今後の金融政策を難しくしており、安易に雇用統計の悪化=利下げとは言い切れない状況です。

【検証】10月の円高アノマリーは本当なのか?

アノマリーとは、一般的な理論や法則で合理的に説明できないような値動きやパターンを指します。理論的に説明できないものの、一定の規則性があるため、アノマリーを重要な要素と考えるトレーダーもいます。

この記事では、10月は円高になりやすいというアノマリーを検証しました。結論として、直近のデータからは「10月に必ず円高になる」とは言えず、アノマリーを鵜呑みにするのではなく、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析を組み合わせた総合的な判断が求められます。

10月が円高なると言われる理由

10月が円高になると言われる理由は、大きく2つあります。

  • 3月決算企業の中間決算がある
  • 過去に大きな暴落が10月に起きている

日本の企業は3月決算が多く、中間決算が9月に行われます。そのため9~10月にかけて値動きが活発になる傾向があります。加えて、過去に世界恐慌やブラックマンデーのような大きな暴落が10月に起きたことで、「10月=暴落」を連想させ、アノマリーに繋がっている可能性が高いです。

【過去5年分】10月のドル円動向

10月の円高アノマリーは本当なのか?について、過去5年分のドル円レートを調査した結果を下表にまとめました(※ドル円レートはおおよその数値です)。

期間月初月末変動方向
2024年143.6円152.0円円安(8.4円)
2023年149.5円151.7円円安(2.2円)
2022年144.7円148.8円円安(4.1円)
2021年111.0円114.0円円安(3.0円)
2020年105.5円104.7円円高(0.8円)

今回検証してわかったことは、アノマリーは必ずしも発生するわけではないということです。確かに「10月は円高になりやすい」という定説はありますが、直近5年のデータでは円安方向に動いた年が圧倒的に多いことが確認できました。

アノマリーはあくまで「投資家心理」や「過去の出来事」に基づく傾向にすぎず、現在の金融政策や金利差、世界的なリスク要因によって大きく覆される可能性が大きいです。特に2021年以降は米国の積極的な利上げが続き、日米金利差が拡大したことで円安が進行し、アノマリーとは逆の動きになったと考えられます。

したがって、トレーダーは「10月の円高アノマリー」だけに頼るのではなく、最新の金利動向やリスクイベントを組み合わせて総合的に判断することが重要です。

テクニカル分析から見たドル円の値動き予想

次に、ファンダメンタルズ分析だけでなく、テクニカルの観点からもドル円の動きを確認していきます。この記事では、3種類のテクニカル分析を解説します。

ダウ理論+水平線

ダウ理論は「高値と安値の切り上げ・切り下げ」を確認し、トレンドを判断する考え方です。上昇トレンドでは高値と安値が切り上がり、下降トレンドでは切り下がっていきます。

この性質を利用し、ダウ理論で意識される高値・安値に水平線を引き、線付近で押し目買いや戻り売りを狙うのが基本的な戦略です。

2025年9月時点のドル円は、短期的には146円付近が安値(サポート)、149円付近が高値(レジスタンス)となり、146〜149円のレンジ相場となっています。そのため、短期的に利益を狙うなら、146円付近でロングまたは149円付近でショートがおすすめです。

一方で中・長期的には140円が強固なサポートラインとして意識されており、安値を切り上げる上昇トレンドが続いている状況です。ファンダメンタルズ分析では利下げの流れが強く、ショートしたくなる場面ですが、長期的に見ると上昇トレンドが継続しているため、安易なエントリーは禁物。

また、ショートはマイナススワップが発生するためスイングトレードには不向きです。長期的に利益を狙うならスワップがもらえて、円安の大きな方向感に沿ったロング戦略がおすすめです。

移動平均線(MA)

移動平均線(MA)は、一定期間の終値を平均したラインで、トレンドの方向や相場の勢いを視覚的に判断できる指標です。特に短期線(例:20日)・中期線(例:50日)・長期線(例:200日)を組み合わせることで、相場が把握しやすくなります。

一般的な見方は以下の通りです。

  • 価格が移動平均線の上にある → 上昇基調
  • 価格が移動平均線の下にある → 下降基調
  • 短期線が中期線を上抜ける(ゴールデンクロス) → 上昇トレンドの強まり
  • 短期線が中期線を下抜ける(デッドクロス) → 下落トレンドの強まり

2025年9月時点のドル円は、日足・週足で見ると全ての移動平均線より上にあり、短期的にも長期的にも上昇トレンドと考えられます。

ただし、移動平均線との乖離が大きい場面では調整で一時的にトレンドと逆行する可能性があるため、狙いは乖離が小さくなったタイミングです。他の指標と合わせて、チャンスが重なったタイミングでエントリーするのがおすすめです。

RSI

RSIは、一定期間の値動きから「買われすぎ」「売られすぎ」を数値化する指標です。0〜100の範囲で表示され、RSIの基本的な見方は以下の通りです。

  • 70以上:買われすぎ → 上昇の勢いが弱まりやすく、反落に注意
  • 30以下:売られすぎ → 下落の勢いが弱まりやすく、反発の可能性
  • ダイバージェンス:価格が高値更新しているのにRSIが伸びない、あるいは安値更新しているのにRSIが下がらない → トレンド転換のサインになりやすい

2025年9月時点のドル円は、RSIが60台半ばで推移しており、上昇トレンドの中でやや買われ気味ですが、まだ過熱感は出ていません。今後、70を超えてくると上値が重くなりやすいため注意が必要です。また、価格が高値を更新してもRSIが追随せずに下がり始める「ダイバージェンス」が見られた場合は、短期的な調整や反転のサインになる可能性があります。

トレード戦略としては、RSIが70を超えた局面では利確やポジション縮小を検討し、30付近まで下げた局面では反発を狙うエントリーが有効です。特に、先ほどの水平線や移動平均線と重なる価格帯でRSIが売られすぎや買われすぎのシグナルを出した場合、より信頼性の高い判断材料となります。

テクニカル分析は、単一の指標だけでは信頼性が低くなりがちです。今回紹介したダウ理論+水平線、移動平均線(MA)、RSIを組み合わせることで、相場の方向感・勢い・過熱感をバランスよく把握できるようになります。

また、テクニカルは万能ではありません。米金利や日銀政策などファンダメンタルズの要因で一時的に大きな値動きが出ることもあるため、ファンダメンタルズとテクニカルを両面で確認することが重要です。

【シナリオ別】エントリー戦略3選

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析を合わせて、今後のエントリー戦略を3つ紹介します。

【短期目線】レンジ相場の上下限でエントリー

1つ目は、レンジ相場前提で短期的に利益を狙う方法です。現在のドル円は146〜149円のレンジ内で推移しており、この上下限は短期トレーダーにとって狙いやすいポイントです。

146円付近はサポート、149円付近はレジスタンスとして何度も意識されているため、この水平線を利用した逆張り戦略が有効です。

  • 146円付近まで下げたらロングを検討。サポート割れを損切りラインに設定し、反発の値幅を狙います
  • 149円付近まで上げたらショートを検討。ただし、ショートはマイナススワップが発生するため長期保有には不向きで、短期の値幅取りを意識します

【短期目線】レンジ相場をブレイク後にエントリー

2つ目は、レンジ相場をブレイクした勢いを利用した方法です。レンジ相場を抜けた直後は勢いが出やすく、短期トレンドが発生しやすい局面です。

  • 149円を明確に上抜けしたら、他の要素も確認してからロングを検討
  • 146円を明確に下抜けしたら、ショートを検討

FXでは下落は勢いがつきやすく、一瞬で落ちる可能性もあるので勢いでエントリーするのも戦略の1つです。ただし、ロングは騙しの可能性も高いので、他の要素もしっかり確認してから慎重にエントリーしましょう。

【長期目線】下落タイミングでロングエントリー

3つ目は、長期的にスワップをもらいながら、円安トレンドの流れに乗る方法です。中長期では依然として円安トレンドが続いており、140円が強固なサポートラインとして意識されています。短期的な下落局面を利用してロングを仕込むのが基本戦略です。

  • 140円付近や移動平均線、RSIでシグナルが出たらロングを検討
  • 長期目線なので、必ず3~5分割でエントリーする

この方法なら、スワップを受け取りながらトレンド方向にポジションを保有できるため、長期の資産運用にも向いています。

まとめ

2025年10月のドル円は、ファンダメンタルズ面では米利下げ観測が出ているものの、依然として日米金利差は3%超と円安優位が続く環境です。テクニカル面では、146〜149円のレンジを抜けるかどうかが短期の分岐点、中長期では140円のサポートが守られるかどうかが焦点です。

トレード戦略としては、レンジ上下限を利用した逆張りやブレイク後の順張り、長期の押し目買いを使い分けながら、移動平均線でトレンド方向を、RSIで過熱感を確認し、ファンダメンタルズのサプライズにも警戒することが重要です。

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