「相場を読むのは難しいけど、毎日コツコツ収益を得たい」そんな人にぴったりの投資手法がキャリートレードです。
この記事では、キャリートレードの仕組みからメリットやリスク、2025年最新の金利状況、具体的な戦略まで徹底解説。初心者から中級者まで、この1記事でキャリートレードの基本と実践がすべてわかります。
キャリートレードとは?魅力とリスクを解説
キャリートレードとは、低金利通貨を借りて高金利通貨に投資することで金利差から得られる収益(スワップポイント)を目的とする取引戦略です。
例えば、日本の金利が0%、米国の金利が5%の場合に円を売ってドルを買う(ドル円の買いポジションを持つ)ことで、金利差である5%分のスワップポイントが日割りで受け取れます(FX業者により金額は異なります)。
魅力は安定したスワップ収入
キャリートレードの最大の魅力は、為替変動に関わらず安定してスワップ収入が得られることこと。特に低金利の日本円と高金利の米ドルやメキシコペソの組み合わせはスワップポイントが多く、キャリートレードに適した通貨ペアです。
長期間保有することで着実に利益を積み上げられるため、初心者から上級者まで幅広い層に人気があり、特に忙しい会社員や主婦にとって最適な手法の一つです。
キャピタルゲインとの両取りも可能
キャリートレードではスワップポイントだけでなく、為替の値動きによるキャピタルゲイン(為替差益)も狙えるのも大きな魅力です。
例えば、ドル円を130円で買って135円で売れば、5円の為替差益が得られます。さらに、ポジション保有中に毎日スワップポイントが受け取れるのでダブルで利益を獲得可能です。
上昇トレンドにうまく乗れば、スワップポイントと為替差益の両方で利益を得ることができます。一方、下落トレンドになってもスワップポイントが得られるため、メンタル面も安定しやすく初心者や中級者におすすめの手法です。
リスクは政策金利や経済ショックによる暴落
キャリートレードには政策金利の変動や経済ショックによる急激な為替変動といった暴落リスクもあります。例としてドル円のロングポジションを保有している場合で解説します。
高金利通貨の米ドル金利が下がり、低金利通貨の円金利が上がった場合、金利差が縮小してスワップポイントが減少します。さらに、一般的には金利が下がると通貨の価値が減少するため、ドル円は下落し、値動きによる損失も発生します。
また、経済ショックによってリスクオフの動きが強まると、高金利通貨が売られて為替相場が急変動することがあります。過去には、2008年のリーマンショックや2020年のコロナショックの際に、多くの高金利通貨が暴落し、大きな損失を抱えた投資家も少なくありませんでした。
そのため、キャリートレードは「安定した収入源」という側面だけでなく、為替変動や金利変動によるリスクを常に意識し、適切なリスク管理を行いながら運用することが必要不可欠です。
キャリートレードに重要な各国の金利状況と今後の動向
キャリートレードを行う上で、各国の金利は最も重要な要素です。どの通貨ペアを選ぶかによって、得られるスワップポイントやリスクが大きく変わるため、主要国の金利動向を押さえておくことが欠かせません。
各国の金利状況(2025年6月28日時点)
国名(通貨) | 政策金利 |
日本(円) | 0.50% |
米国(ドル) | 4.25%~4.50% |
欧州(ユーロ) | 2.0% |
英国(ポンド) | 4.25% |
豪州(オーストラリアドル) | 3.85% |
NZ(ニュージーランドドル) | 3.25% |
カナダ(カナダドル) | 2.75% |
南アフリカ(ランド) | 7.25% |
メキシコ(ペソ) | 8.00% |
ブラジル(レアル) | 15.00% |
トルコ(リラ) | 46.00% |
日本(円)は長年続いたマイナス金利を解除し、0.5%まで金利を引き上げたものの、依然として世界的には極めて低水準です。日銀は賃金や物価動向を慎重に見極めており、大幅な利上げは当面ないとの見方が強いですが、引き続き円はキャリートレードに適した通貨と言えるでしょう。
米国(ドル)は2022〜2023年の急激な利上げで高金利を維持していましたが、2025年に入り景気減速懸念を背景に段階的に利下げを開始しました。今後もさらに利下げが進む可能性がありますが、金利は依然として高水準なためキャリートレードに適しています。
南アフリカ(ランド)、メキシコ(ペソ)、ブラジル(レアル)、トルコ(リラ)は高金利が続いており、スワップ狙いのトレーダーにとって魅力的な通貨です。ただし、これらの通貨は為替変動が激しく、政治リスクや資本流出リスクも高いため、上級者向けとされています。
キャリートレードの過去の成功・失敗例
キャリートレードは、金利差を利用してスワップポイントを得るというシンプルな戦略ですが、成功にはタイミングの見極めが重要です。過去の成功例と失敗例を知り、キャリートレードの可能性と注意点を理解しましょう。
成功例
キャリートレードが上手く機能した代表的な例は、2022年から続いた歴史的な円安相場です。コロナ禍以降、米国は急激なインフレ抑制のために急ピッチで利上げを進め、政策金利は一時5%以上に達しました。一方、日本はゼロ金利政策を継続していたため、日米の金利差がかつてないほど広がりました。
結果的にドル円は115円から160円まで上昇し、この期間ドル円のロング(買い)ポジションを保有していた投資家は、スワップポイントによる継続的な収益に加え、為替差益によるキャピタルゲインも獲得できました。
また、ドル円の上昇に乗り遅れた場合でも、キャピタルゲインは狙いにくいものの、安定して毎日スワップポイントを受け取れたため、多くの投資家が利益を出せた相場でした。
失敗例
一方、2008年のリーマンショックでは、約5年間でドル円が115円付近から75円まで急激に円高が進行し、多くの投資家が強制ロスカットに追い込まれました。スワップ狙いで長期保有していたポジションも、値動きによる損失が大きくなり、多くの投資家が損失を被りました。
また、トルコリラも典型的な失敗例として挙げられます。トルコは金利が高いため、スワップポイント狙いの投資家に人気でしたが、社会情勢が不安定さや経済政策の不確実性により、2015年以降は下落トレンドが止まらず55円から3円台まで低迷しています。そのため、スワップポイントよりも値動きによる損失が上回り、多くの投資家が損しました。
【2025年最新】キャリートレード戦略のポイント
前述の通り、キャリートレードは大きな利益を生み出せる反面、通貨ペアの選定やタイミング、リスク管理が極めて重要です。ここでは2025年の相場環境を踏まえて、初心者から中級者までが実践しやすいキャリートレードの具体的な戦略を紹介します。
狙う通貨ペアはドル円(攻めるなら他のクロス円も可)
2025年6月時点では、日米の金利差は依然として大きく、ドル円はキャリートレードに最適な通貨ペアの一つです。スワップポイントが安定して得られるだけでなく、為替も長期的には円安傾向が続くとの見方もあり、比較的安心してポジションを保有しやすい状況です。
より高いスワップを狙いたい場合は、メキシコペソ円や南アフリカランド円、ブラジルレアル円なども選択肢になりますが、これらの通貨は政治・経済の不安定さが大きいため、あくまで「攻めの戦略」として慎重に取り組むべきです。初心者はまずドル円から始め、慣れてきたら他のクロス円へと広げていくと良いでしょう。
資金管理を徹底(初めはレバレッジ5~10倍が目安)
キャリートレードでは長期保有が基本となるため、資金管理が重要です。為替が逆行してもロスカットを避けられるよう、最初はレバレッジ5〜10倍程度に抑えることで、過度なリスクを避けつつ、効率的にスワップポイントを積み上げていけます。
暴落に備えた分割エントリー
為替相場は予想通りに動くとは限らないため、一度にまとめて購入するのではなく、エントリーポイントを複数に分ける「分割エントリー」が有効です。例えば、ドル円のロングポジションを1ロット(10万通貨)保有したい場合、140円・135円・130円・125円・120円といったように、0.2ロット(2万通貨)ずつ段階的に購入することで、万が一の下落時にも平均取得価格を抑えられます。
キャリートレードでは長期保有を継続する精神力も重要です。資金管理の徹底は、精神的な安定にも繋がるため、特に堅実に増やしていきたい方は必要な要素です。
苦しい時こそ仕込むチャンス
相場が不安定な時や円高局面は、一時的に含み損が出ることもありますが、スワップ狙いのキャリートレーダーにとっては、絶好の仕込み時になることも多いです。例えば、日銀総裁の発言や経済指標の結果によって一時的に円高が進行したとしても、基本的な金利差の構造が変わらない限り、トレンドは戻る可能性は十分にあります。
特にキャピタルゲインも狙いたい場合、短期的に苦しい場面で仕込むことがリターンに繋がるケースも多いです。そのためにも、一括で投資するのではなく、資金に余裕を持たせた分割エントリーをするのがおすすめです。
出口戦略も考えておく
エントリーポイントだけでなく、キャリートレードでは出口戦略も非常に重要です。例えば、「スワップ収入が〇円になったら一部利確する」「為替が〇円まで上昇したら利益確定する」など、あらかじめルールを定めておくことで、感情に左右されない冷静な運用が可能になります。
また、今後米国の利下げや日本の利上げにより、スワップポイントが減少し、キャリートレードの優位性が薄れる可能性もあります。さまざまな状況を想定して、定期的なポジションの見直しや撤退の判断基準をあらかじめ決めておくことが成功の鍵です。
キャリートレードのシミュレーション結果
キャリートレードでは、スワップポイントに加えて為替差益も狙えます。ここでは2025年6月時点のドル円相場をもとに、年間の想定利益とリスクをシミュレーションしてみましょう。
想定条件
- ドル円レート:145円
- 証拠金:100万円
- 最大レバレッジ:1,000倍
- ロスカット水準:20%
- 実効レバレッジ:5倍(500万円分のポジション)
- 保有ポジション:34,500通貨
- 保有期間:1年間
- スワップ※:360円/日
※6月28日時点のMYFX Marketsのドル円スワップポイントで計算
1年後のドル円レート | スワップ収入 | 為替損益 | 合計損益 | 損益率 |
160円 | 約13万円 | 約51万円 | +64万円 | +64% |
150円 | 約13万円 | 約17万円 | +30万円 | +30% |
145円 | 約13万円 | 0円 | +13万円 | +13% |
140円 | 約13万円 | 約-17万円 | -4万円 | -4% |
130円 | 約13万円 | 約-51万円 | -37万円 | -37% |
120円 | 約13万円 | 約-86万円 | -73万円 | -73 |
110円 | 約13万円 | 約-120万円(途中で強制ロスカット) | -100万円(強制ロスカット) | -100% |
このシミュレーションからわかる通り、キャリートレードはスワップ収入によって安定した利益を得られる反面、為替の値動きによって損益が大きく変動する戦略です。
例えば、ドル円が145円から160円に上昇すればスワップと為替差益の両取りで+64万円(+64%)と高い利益が見込めます。一方で、130円まで下落した場合には37万円の損失、さらに120円を割り込むとロスカットの可能性が現実味を帯びてきます。
スワップ収入は相場が逆行しても受け取れますが、為替差損がそれを上回ればトータルでは赤字になるため、「スワップだけを目的に無理にポジションを持ち続ける」ことは避けるべきです。
リスクを抑えたい方は、以下のようなポイントを意識しましょう。
- 実効レバレッジは5倍以下に抑える
- 相場が下落しても耐えられる資金設計をする
- 分割エントリーで取得単価を平均化する
- 想定外の円高が来たら早めに損切りを検討する
キャリートレードは長期的に資産を増やす強力な手段の一つですが、安定した収益の裏には冷静なリスク管理が不可欠です。無理のない範囲で運用を行い、自分なりのルールをしっかりと作ることが成功への第一歩です。
キャリートレードに関するよくある質問
キャリートレードに関するよくある質問をまとめましたので、参考にしてください。
キャリートレードの始め時はいつですか?
「低金利通貨と高金利通貨の金利差が大きく、かつ為替が安定しているとき」が理想的なタイミングです。2025年6月時点では、日本が低金利を維持しており、米国やメキシコは高金利を保っているため、今は比較的良いタイミングといえます。また、円高局面や一時的な調整時にエントリーすると、為替差益も狙いやすくなります。
どの通貨ペアがおすすめですか?
初心者にはドル円がおすすめです。為替の情報が豊富で流動性も高く、スプレッドも狭いため取引コストが安く済みます。
損切りはどのように考えれば良いですか?
キャリートレードではスワップ収入が得られる一方で、為替変動による損失が一定以上大きくなるとスワップだけではカバーできなくなります。そのため、損失額や自分の予想を元に、ポジション保有時点で「どこまで下がったら損切りするか」を明確に決めておくことが重要です。
スワップポイントは変動しますか?
スワップポイントは、政策金利や為替市場の状況に応じて日々変動します。また、スワップポイントの付与タイミングはFX会社によって異なり、夏時間と冬時間で付与時間が変わることもあります。
【まとめ】キャリートレードを上手に活用しよう
キャリートレードは、忙しい方でもコツコツと利益を積み上げたい人にぴったりの手法です。為替の下落や金利の変化といったリスクもありますが、レバレッジを抑えたり、分散してエントリーすることでコントロールはできます。
重要なのは、「安定したスワップ収入」と「為替差益」を狙いつつも、感情に流されず、自分なりのルールを持って長期的に運用すること。初めはドル円など安定した通貨ペアで少額からスタートし、相場に慣れてきたら他の高金利通貨にもチャレンジしてみてください。