概要
- 7月の米CPIは、市場予想が前年同月比8.7%上昇、結果が8.5%上昇となり、市場予想を下回った
- ガソリン価格が前月比7.7%低下と、2020年4月以来の下げ幅に
- 7月の米PPIは、市場予想が前月比0.2%上昇、結果は前月比0.5%低下と約2年ぶりに低下
- サプライチェーンの状態が改善しつつあるが、ロシアとウクライナの戦争などの影響で輸送スピードが落ちる可能性がある
- 米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、9月のFOMC会合で予想される利上げ幅について「50bpと見込んでいるが、75bpにもオープンな姿勢だ」と述べた
- 今年3.4%に達すると見込まれる政策金利については、「妥当な線」とした
- 米CPIの発表直後に、ドル円は135円近くの水準から132円台へ2円以上の急落
- 最近のインフレ指標への為替相場の反応は雇用統計並みであり、ポジションを持つ際は大きな値動きの想定を
米CPIが予想以上に減速、ガソリン価格の低下が要因
7月の米消費者物価指数(CPI)は、市場予想が前年同月比8.7%上昇、結果が8.5%上昇となり、市場予想を下回りました。ガソリン価格が前月比7.7%低下と、2020年4月以来の下げ幅になったことが要因として挙げられます。
インフレ率がピークに達した兆しがようやく現れたことで、FRB(米連邦準備制度理事会)への利上げ圧力は緩和を見せました。今回のCPIの結果は、FRBや市場、消費者にとって良いニュースと言えるでしょう。
とはいえ、前年同月比でのCPIの伸びは依然8%を超えています。そして、食品価格も前年同月比で10.9%上昇と大きく伸び、中間選挙に向けてバイデン大統領や民主党は気を緩めることはできそうもない状況です。
市場関係者は今回のCPIの結果について、「これは米金融当局にとって必要な数字だが、十分ではない」と語りました。加えて、「こうした内容をもっと多く確認する必要がある」としました。また、別の市場関係者は「今後は欧州の物価状況が米国のインフレよりも市場の関心を集め、ドル高は和らぐ公算が大きい。」との認識を示しました。
9月20、21日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合までにはCPIと雇用統計がもう1回ずつ発表されるため、こちらも注目すべきでしょう。
米PPIが約2年ぶりの低下
7月の米生産者物価指数(PPI)は、市場予想が前月比0.2%上昇、結果は前月比0.5%低下と約2年ぶりに低下しました。CPIと同じく、ガソリンなどのエネルギー価格の低下が主な要因となり、インフレ圧力の緩和として市場に好意的に受け止められました。
原油を含む商品価格はここ数カ月で大きく下げており、サプライチェーンの状態が改善しつつあるようです。ただし、ロシアとウクライナの戦争や米西海岸港湾の労働争議、中国のゼロコロナ政策などが米製品や部材の輸送スピードを落とす可能性も考えられます。
市場関係者は「今年下半期に財の価格の上昇が鈍化することは、しばらく前から広く予想されていた。サービス価格の詳細には予想外に強い部分も見受けられる」と述べました。サービス価格は今回0.1%の上昇となり、燃料マージンや輸送、倉庫の寄与度が高くなっています。
デーリー総裁、利上げ幅について「50bpと見込んでいる」
米サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で予想される利上げ幅について、「引き続き50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)と見込んでいるが、75bpにもオープンな姿勢だ」と述べました。加えて、9月20、21日に開催される次回のFOMC会合の前にもう一度、CPIと雇用統計の発表があり、「データ次第の態勢を保つことが至極当然だ」との認識を示しました。
また、7月のインフレ指標の数字について「多少の改善を示しているという点で意味のあるものだが、勝利ではない」と指摘しています。さらに、今年3.4%に達すると見込まれる政策金利については、「妥当な線」だとしました。
デーリー総裁の見解は今後の利上げ幅について非常に参考になるものの、デーリー総裁がハト派である点は留意しておくべきでしょう。
米CPI発表直後にドル円が2円以上急落
注目されていた米CPIの発表直後に、ドル円は135円近くの水準から132円台へ2円以上の急落を見せました。理由としては、CPIの結果を受けて、9月におこなわれるFOMCでの利上げ幅予想が、0.75%から0.5%に下方修正されたことが挙げられます。
結果的に、「高い利上げ幅を織り込んでいたポジションが多かったのだろう」と思わせるようなチャートの形状となりました。最近のインフレ指標への為替相場の反応は雇用統計並みになっており、ポジションを持つ際は大きな値動きを想定しておいた方がよさそうです。