概要
- パウエル議長の発言を受け、米経済がリセッション入りする可能性が市場で懸念され、米国債の利回りが低下
- バイデン大統領が「9月末までガソリン税を停止するよう連邦議会に要請する」と表明するも、需要が膨らめば価格の上昇につながるため、議会が応じるかに関しては不確実な状況
- ドルが今月に入ってから初めて週間ベースでの下落。市場では米金利について、リセッションへの対処として利下げ時期の予想を前倒しする動きが見られる
- ドルが年初から9%ほど上昇していることもあり、利下げ時期の予想前倒しはドル買いの意欲を失わせるものになりつつある
- 6月のユーロ圏の経済活動は大きく失速。ユーロ圏のPMI速報値は6月の総合指数が51.9となり、1年4カ月ぶりの低水準
- ユーロ圏のPMI速報値の結果は、高いインフレ率と低い経済成長が続くことを示唆していると考えられる
パウエル議長「景気後退リスクがあっても物価抑制に全力」
パウエル米連邦準備制度理事会（FRB）議長は上院銀行委員会の公聴会で、「インフレ抑制に強くコミットしており、景気後退リスクがあっても物価抑制に全力を傾けている」と述べました。この発言を受け、市場では米経済がリセッション入りする可能性が懸念され、米国債の利回りが低下しました。
市場関係者は「FRBの方針は他の中央銀行がより大きく動く可能性を高めており、ユーロ高やカナダドル高を招いている」と指摘しています。加えて、「ドル安は米国債の利回りと歩調を合わせて動いているためだと考えている」と述べました。また、「パウエル議長は、日本円に対して一段のドル高を容認している」との認識を示しました。
しかしながら、米経済がリセッション入りするとの懸念から足元の米国債の利回りは低下してきているため、ドル円は一旦下落に転じる可能性もありそうです。
リセッション入りに関しては、ガソリン価格の高騰が続くこともリセッションを招くのではないかと危惧されています。バイデン大統領は米国のガソリン価格が過去最高を記録したことを受け、夏のハイシーズンに当たる9月末までガソリン税を停止するよう連邦議会に要請すると表明しました。
ただし、ガソリン税を免除すれば需要が膨らむことで価格の上昇につながるため、議会が立法措置に応じるかに関しては不確実な状況となっています。
ドルが週間ベースで下落、市場が利下げ時期の予想を前倒し
ドルが今月に入ってから初めて週間ベースでの下落となりました。市場では米金利について、リセッションへの対処として利下げ時期の予想を前倒しする動きが出ています。この一週間は原油やコモディティ価格の下落でインフレ懸念が緩和され、株式市場が回復したため安全資産としてのドル買いが減少し、ドルの下落の大きな要因となりました。
市場関係者は「コモディティ価格の下落は、特に秋にかけて、ヘッドライン・インフレ率（総合インフレ率）の上昇を抑制し、積極的な金融引き締めの必要性を低下させる可能性がある」と述べました。また、24日のドルインデックス（指数）は104付近まで下落しています。
現在、市場ではFRBが7月の米連邦公開市場委員会（FOMC）で75ベーシスポイント（bp）の追加利上げをおこなった後、利上げペースを緩めるとの見方が出てきている状況です。さらに、金利は2023年3月に3.5%付近でピークを迎え、2023年7月までに20bp近く低下するとも予想されています。
ドルが年初から9%ほど上昇していることもあり、利下げ時期の予想前倒しはドル買いの意欲を失わせるものになりつつあるようです。
ユーロ圏の経済、物価上昇や供給目詰まりで6月は大きく失速
6月のユーロ圏の経済活動は大きく失速しました。コロナ禍からの回復を大幅な物価上昇が抑制しており、さらに製造業が供給の目詰まりに苦しんでいるようです。ユーロ圏の購買担当者指数（PMI）速報値は、6月の総合指数が51.9となりました。これは1年4カ月ぶりの低水準になります。
急激に高まるインフレやエネルギーへの懸念、金利上昇による借り入れコストの上昇が背景にあるようです。PMI総合指数が50以上であることから、依然として拡大を示す水準であると言えるものの、製造業の生産指数は2年ぶりに縮小となっています。
市場関係者は「コロナ禍の累積需要による追い風は既に弱まりつつあり、生活費の高騰や企業と消費者の信頼感の冷え込みで経済成長は失速の兆しを示している」と指摘しました。ユーロ圏のPMI速報値の結果は、高いインフレ率と低い経済成長が続くことを示唆していると考えられ、米PMIの結果も低調であったことからリスク資産は下げやすい状況が続いています。今後リスク回避の動きが強まる可能性もありそうです。
