概要
- 米10年国債利回りは2.8%を割り込み急低下
- 米総合PMIが47.5と50を下回り、9月は利上げ幅を縮小するとの観測が広がった
- リセッション懸念や利上げ幅縮小の観測が広がれば、為替にも大きな影響を与える可能性がある
- 7月のユーロ圏総合PMIは49.4と予想外の経済縮小となった
- ユーロ圏の民間部門の経済活動が予想外に縮小したことは、リセッションの懸念をあらためて示したと言える
- PMIの結果を受けてユーロ/米ドルは一時下落したが、その後は値を戻した
- ウクライナとロシア間での穀物輸出再開に向けた合意が成立
- 小麦先物相場が5カ月ぶりの安値、トウモロコシも8カ月ぶりの安値を付けた
- ロシアは穀物輸出再開に向けた合意から数時間後に港をミサイル攻撃
- アメリカとロシア間での緊張が高まれば、ドルを始めとする通貨への大きな影響が考えられる
米長期金利が2.8%割れ、利上げペース緩むとの観測
22日は米国債が急上昇し、10年国債利回りは2.8%を割り込み急低下しました。7月の総合購買担当者景気指数(PMI)速報値が、47.5と景気の拡大と縮小の節目である50を約2年振りに下回り、リセッション懸念が高まったことが背景にあるようです。
また、総合PMIが50を下回ったことを受け、 米連邦準備制度理事会(FRB)が7月に0.75%の利上げをおこなった後、9月は利上げ幅を0.5%に縮小するとの観測が広がっています。市場関係者は「景気は確かに減速しつつある。それが続けば、FRBは来週一旦75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを決定した後、引き締めペースを抑える可能性がある」と語りました。
22日の10年国債利回りは一時2.73%まで低下しましたが、終盤にかけては2.75%付近で推移しました。市場関係者は「10年債利回りは2.72から2.75%のレンジ割れを試すと見込まれるが、それが起きれば2.5%を目指すこともあり得る」と予想しています。
リセッション懸念や利上げ幅縮小の観測が広がれば、ドルの独歩高に対して修正が入ることやリスクオフに弱い豪ドルやニュージーランドドルの下落などが考えられます。そのため、為替にも大きな影響を与える可能性がありそうです。
ユーロ圏総合PMIは49.4、1年5カ月ぶりの低水準に
7月のユーロ圏総合購買担当者指数(PMI)は49.4と1年5カ月ぶりの低水準になりました。市場予想は51であったものの、結果は拡大と縮小の境目を示す50を下回ってしまいました。製造業の生産が冷え込み、サービス業は小幅な成長にとどまりました。ユーロ圏の民間部門の経済活動が予想外に縮小しており、リセッションの懸念があらためて示されたと言えます。
市場関係者は「新規受注の急減や受注残の減少、企業景況感の悪化は、いずれもこの先の落ち込み加速を示唆している」と述べました。さらに、「最も懸念しているのは製造業の苦境だ。生産者は売り上げが予想を下回り、売れ残りの在庫がかつてないほど積み上がっていることを報告している」と語っています。
また、PMIの結果を受けてユーロ/米ドルは一時下落しましたが、その後は値を戻しました。今後のユーロの値動きには注意が必要になりそうです。
ウクライナとロシアが穀物輸出再開合意、小麦が大幅安に
ウクライナとロシア間での穀物輸出再開に向けた合意がトルコと国連の仲介で成立したことを受け、22日のシカゴ市場では小麦先物相場が5カ月ぶりの安値となりました。加えて、トウモロコシも8カ月ぶりの安値を付けています。
小麦先物の中心限月は5.9%安の7.59ドルと2月初め以来の安値で取引を終えました。ロシアのウクライナ侵攻後の価格上昇分が戻った形になりましたが、時期的には例年よりまだかなり高い価格と言えます。また、トウモロコシ先物は5.6425ドルと昨年11月以降では最安値を付けています。
ただし、市場関係者は「重要な穀物輸出港ミコライウを含むウクライナの黒海全ての港が開くとの期待に沿わない合意だ」との認識を示しました。また、別の市場関係者は「ウクライナが今後3から6カ月で実質的に輸出可能な穀物の量や在庫の質、保険など多くの問題が存在する」と述べています。
さらに、ロシアは穀物輸出再開に向けた合意から数時間後にウクライナ南部オデーサの港を巡航ミサイルで攻撃しました。米政府は今回のミサイル攻撃について、「穀物輸出再開合意に対するロシアのコミットメントに重大な疑問を投げ掛けるものだ」と表明しました。加えて、米国防総省はウクライナへの戦闘機供与を検討しています。
アメリカとロシア間での緊張が高まればドルを始めとする通貨に大きな影響を与えることが考えられるため、今回の問題の進展には注目すべきでしょう。