概要
- 日銀会合で、段階的に利上げを行う必要があるとの意見
- 金融資本市場が不安定な状況では、利上げを行うことはないと明言
- 7月の米国ISM非製造業景気指数、市場予想を上回る
- 今後の焦点は8月15日に発表される小売売上高
- 米国の新規失業保険申請件数は減少
日銀意見:経済や物価の反応を見ながら、適時かつ段階的に利上げを行う必要がある
日本銀行は7月30日と31日に開催した金融政策決定会合で、政策委員から経済や物価の動向を見ながら段階的に利上げを行う必要があるとの意見が出されました。8日に公表された「主な意見」では、2025年度後半の物価安定目標を前提に「中立金利は最低でも1%程度」との見解が示されました。
また、「急速な利上げを避けるためには、経済や物価の反応を確認しながら、適時かつ段階的に利上げを行う必要がある」との指摘もありました。利上げ後も「0.25%という名目金利は非常に緩和的な水準で、経済をしっかり支える姿勢に変わりはない」との見解が示されました。
さらに、「緩やかなペースの利上げは基調的な物価の上昇に応じて緩和の程度を調整するものであり、引き締め効果を持たない」との見方もありました。一方で、「金融政策の正常化が自己目的になってはならず、今後の政策運営は慎重に進める必要がある」との声も上がりました。
会合では、17年ぶりの利上げとなった3月会合以来、今年2回目の利上げが決定され、同時に国債買い入れの減額計画も発表されました。その後の会見で植田和男総裁は、経済や物価情勢が見通し通りに進めば「引き続き金利を上げていく」と発言し、市場には早期の追加利上げ観測が広がりました。しかし、直後に米経済の後退懸念が強まり、世界的に株価が下落するなど金融市場は一気に不安定化しました。
この市場の急変動を受けて、内田真一副総裁は7日の講演で「金融資本市場が不安定な状況では、利上げを行うことはない」と明言し、市場は円安・株高に反応しました。
米7月ISM非製造業景気指数は51.4を記録、景気後退への懸念が一部緩和
7月の米国ISM非製造業景気指数は51.4で、市場予想の51.0と前回の48.8を上回りました。6月は50を下回り、2020年5月以来の低水準でしたが、7月には50を超え、サービス業が回復傾向にあることを示しています。この回復の背景には、事業活動、新規受注、雇用指数が平均で5ポイント上昇したことが挙げられます。
新規受注は6月に縮小していましたが、7月には再び拡大し、サービス業の需要が健全であることを示しました。特に、娯楽・レクリエーション、宿泊・レストラン、芸術業界などの11業種が増加を報告しており、夏季休暇の影響も見られます。雇用も需要の増加に応じて拡大し、サービス業の雇用は2024年1月以来の50を上回りました。
ISMサービス業調査委員会長のスティーブ・ミラー氏は、「急いで再雇用する動きはないが、雇用凍結や解雇の急増も見られない」と述べています。これにより、製造業の景況感の悪化や失業率の上昇による景気後退懸念が一時的に和らぎました。
しかし、中長期的には低下傾向が続いており、4月から7月までの総合指数の平均値はパンデミック発生以来最低です。また、米国大統領選挙をめぐる不確実性も指摘されており、事業における意思決定の延期が選挙前まで続く可能性があります。ISMの指数は前月との比較であるため、9月の反動には注意が必要です。急速な景気後退懸念が和らいだとはいえ、警戒が不要になったわけではありません。今後の焦点は8月15日に発表される小売売上高に移ります。
米国の新規失業保険申請が約1年ぶりの大幅減少、労働市場への懸念が緩和する可能性
先週の米国の新規失業保険申請件数は、前週から1万7000件減少し、23万3000件となりました。これは過去1年間で最大の減少幅です。特に、最近申請件数が急増していた州での減少が全体の数字を押し下げました。このデータは、7月の雇用統計が示した労働市場の急速な冷え込みへの懸念を和らげる可能性があります。
申請件数の減少により、労働市場が急激に悪化しているのではなく、新型コロナウイルス禍前の正常な状態に戻りつつあるという安心感が広がるかもしれません。7月の雇用統計では、雇用主が採用ペースを大幅に落とし、失業率が4カ月連続で上昇しました。この結果、クラウディア・サーム氏が提唱した「サーム・ルール」に基づくリセッションの目安に達しました。
ある関係者は、労働市場のさらなる軟化が米連邦公開市場委員会(FOMC)の政策に影響を与える可能性があると指摘し、現在の状況を緩やかな景気減速と評価しています。今年に入り、失業保険の新規申請件数と継続受給者数は増加傾向にありますが、2019年の水準に近い状態を保っています。
また、別の関係者は、経済の軟化に伴いレイオフの範囲が広がっていると述べ、失業率が10月までに4.5%に達するとの予想を示しました。また、変動の少ない4週移動平均は24万750件に増加し、1年ぶりの高水準となりました。季節調整前の新規失業保険申請件数は約1万3600件減少して20万3054件となり、5月以来の低水準です。
テキサス州では、ハリケーン「ベリル」が上陸した7月上旬に申請件数が大幅に増加しましたが、最近は落ち着きを見せています。ただし、来週発表されるデータにはハリケーン「デビー」の南東部襲来の影響が反映されるかもしれません。
全体として、今回の失業保険申請件数の減少は、労働市場が急速に悪化しているのではなく、むしろ正常化の一環と捉えられるかもしれません。しかし、今後のデータにも引き続き注意が必要です。