- 米国の雇用統計:7月の米雇用統計では、非農業部門の雇用者数が予想を下回り、失業率が4.3%に上昇。これにより、9月の利下げが確実視される状況になっている。
- 労働市場の悪化:失業率の上昇は、労働市場への新規参入者の減少や、参加率の上昇に伴うものとされ、FRBは労働市場への影響を注視している。
- 8月の雇用統計予測:8月の米雇用統計では、雇用者数の増加と失業率の僅かな改善が予想され、景気悪化への懸念を和らげる可能性がある。
- ECBの金融政策:ECBは9月12日の会合で追加の利下げを決定する見通し。中銀預金金利は2025年に2.5%に達する予測だが、インフレリスクを警戒しながら慎重な金融政策を継続。
- 金融市場の影響:米国とユーロ圏の雇用・景気指標は金融市場に影響を与え、利下げを通じた景気支援が期待される一方、利下げの幅や速度に注目が集まっている。
米失業率再び上昇、雇用者数は予想以上に減速 – 9月利下げの可能性が高まる
7月の米国の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数は前月比で11.4万人増加したが、これは関係者の予想を下回った。失業率は4.3%に上昇し、ほぼ3年ぶりの水準に達した。これにより、労働市場が従来の想定よりも速いペースで悪化していることが示唆され、9月の利下げがほぼ確実となった。
非農業部門雇用者数の予想中央値は17万5000人増であった。前月の増加は17万9000人(速報値は20万6000人増)に下方修正された。失業率は市場予想の4.1%を上回り、4カ月連続で上昇した。一方、平均時給は前月比0.2%増(市場予想は0.3%増)で、前年同月比で3.6%増(前月は3.8%増、市場予想は3.7%増)と3年ぶりの低い伸びとなった。
失業率の上昇背景には、新たな労働者が労働市場に参入するよりも、離職者が増えたことが要因となった。一方で、労働市場を退出していた人が復帰し、参加率の上昇に寄与した。
今週、期待外れの経済指標が相次ぎ、景気が急減速しているとの懸念が高まり、株式市場で売りが誘発され、米国債利回りも低下した。米金融当局者は金融政策が労働市場を新型コロナ禍前の健全なトレンドに戻すよりも、むしろ過度に鈍化させていると考える可能性がある。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、インフレがコロナ禍のピークからおおむね下がってきていることから、労働市場への過度な打撃を防ぎたいと考えを示し、「早ければ次回9月の会合で政策金利の引き下げが選択肢となり得る」と述べた。
短期金融市場では、9月会合での0.5ポイント利下げが織り込まれつつある。 ある関係者は「こうした環境は利下げの加速につながる」と指摘。「米金融当局は既にリセッション回避、あるいは景気拡大維持に傾いている。インフレの上振れリスクがほぼ過去のものとなる中、今回の統計でその傾斜がさらに一段と強まるだろう」と述べた。
8月の米雇用統計が示す雇用者数増加と失業率低下の予想
8月の米国雇用統計が示す雇用者数の増加と失業率の低下は、金融市場の景気悪化の不安が緩和される可能性がある。8月の非農業部門雇用者数は前月比16.5万人増の中央値と予想されている。これは前月の11.4万人増よりも大幅に上回っている。また、失業率も4.2%(前月は4.3%)と僅かな改善が見込まれている。
米金融当局は、9月17日と18日に開かれる連邦公開市場委員会(FOMC)会議で政策金利の引き下げを行うと広く予想されている。ただし、8月の雇用統計の内容は、利下げ幅を事実上決定する可能性がある。現在、投資家たちは約0.35ポイントの利下げを予想しており、それが通常の0.25ポイントか、大きめの0.5ポイントになるか確信が持てずにいる。
ある市場関係者は、労働市場が鈍化しているものの、そのペースは緩やかであると指摘している。彼らは、「8月は全体的に見て、統計上の異常があったと考えられる7月の統計から、多少の反転が見込まれる」と述べている。このため、米国の非農業部門雇用者数の増加と失業率の低下により、景気悪化の不安が緩和されることが期待されている。
ECB、9月利下げ後も25bpペースか-中銀預金金利2.5%に到達も
欧州中央銀行(ECB)は12日に開く政策委員会の会合で、今回の金融緩和サイクルでは6月に続き2回目となる0.25ポイントの利下げを決める見通しだ。しかしユーロ圏の景気減速に対応し、よりハイペースの引き下げに動くことはなさそうだ。
来週の政策委会合で、中銀預金金利を3.75%から0.25ポイント引き下げた後も、ECBは同じ幅での利下げを継続し、中銀預金金利は来年9月に2.5%に達すると予測される。2026年を通じて、その水準のまま据え置かれる見込みだ。
ECB当局者らは、景気拡大ペースの鈍化となかなか収まらない基調的物価圧力が混在する厄介な状況に直面している。ユーロ圏最大の経済大国であるドイツでは、製造業の苦しい状況が1年余り続き、消費者は支出をためらっている。
ユーロ圏の金利がどこに向かうかについて、ラガルド総裁が明確なシグナルを発するとは大多数が予想していない。経済を巡る政策委内部の意見が割れていることを考えると、あらゆる選択肢をオープンにしておく可能性がある。
関係者は「見解の相違にもかかわらず、筋の通った政策見通しを示すことがラガルド氏の主な課題だ。いかなる金利の軌道にも事前にコミットせず、データ次第というアプローチを引き続き強調することで達成可能だろう」と指摘する。
ドイツ連邦銀行のナーゲル総裁やシュナーベル理事といったタカ派が根強いインフレリスクを警戒する一方、他の政策委メンバーは、必要以上に長く景気を抑制すべきでないという立場だ。
12日には金融政策決定と同時に最新の四半期経済予測も公表される。調査結果によれば、24年のユーロ圏成長率見通しは6月時点の0.9%から下方修正されそうだ。他の予測は据え置かれる公算が大きい。
関係者は「ECBが12日の会合で再び政策金利を引き下げ、中銀預金金利を3.75%から3.5%に変更するのはほぼ確実だ。賃金の伸びを示す先行指標が減速を示唆し、ヘッドラインインフレ率はECBの物価目標の2%に近づいており、ラガルド総裁は会見で、今回の対応が適切と強調する可能性が高い」と分析した。