概要
- 石破首相は、日銀総裁の「時間的余裕」の見解を強調し、急速な円安進行に対応する姿勢を示した。
- ユーロ圏の9月消費者物価指数(CPI)は伸び率が減速し、ECBによる利下げの見通しが強まった。
- 米国の非製造業景況指数が予想以上に上昇し、昨年2月以来の高水準に達した。
- ECBは、10月と12月の理事会で連続的な利下げが行われる見込みである。
- 米国のサービス業が堅調な伸びを見せ、製造業との乖離が一層鮮明になっている。
石破首相、市場の沈静化のため発言修正か
石破茂首相は、10月2日の記者会見で日本銀行の金融政策について、植田和男総裁の「時間的余裕はある」という発言を念頭に、自らの「利上げする環境にない」という発言を修正しました。この発言は、急速な円安進行に伴い市場の不安を沈静化させる意図があったとみられます。石破首相は、植田総裁が内外の経済や金融市場を慎重に見極め、緩やかに金融政策の正常化を進める必要があるとの見解に賛同する姿勢を示しました。
また、石破首相は記者団に対し、「デフレからの早期脱却と持続的な経済成長の実現に向け、日銀と密接に連携していく」と述べ、政府としての協力体制を強調しました。なお、石破首相の2日の発言を受け、金融市場では利上げ観測が後退し、円安が加速しました。そのため、石破首相が植田総裁の見解と一貫していることを示すことで、市場の沈静化を図ったとされています。
市場の動揺を受け、全国信用協同組合連合会の山下周チーフエコノミストは、日銀の独立性が損なわれるリスクを懸念し、石破首相が発言を微調整した可能性があると指摘しました。これまで異次元の金融緩和政策の長期化に対する疑問を呈していた首相ですが、今回の発言修正は、
ユーロ圏、9月CPI減速-利下げ見通し強まる
ユーロ圏では9月に発表された消費者物価指数(CPI)の伸び率が前年同月比で1.8%となり、2021年6月以来初めて2%を下回りました。これは欧州中央銀行(ECB)の目標を下回る水準であり、物価上昇が鎮静化しつつあることを示しています。コアCPI(食品、エネルギー、酒類、タバコを除く指数)も2.7%にとどまり、物価の抑制が続いています。ロイターの事前予想は2.8%でしたが、それをも下回る結果となりました。
これに伴い、ECBが10月17日の理事会で利下げに踏み切る可能性が高まりました。LSEGのデータによると、投資家の間で10月に0.25%の利下げが行われる確率は96%に達しています。さらに、12月の理事会でも0.25%から0.50%の追加利下げが行われると予測されています。
ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は、9月30日に行われたベルギーでの公聴会で、ユーロ圏の物価情勢について「目標を適切なタイミングで実現できる」との自信を示しました。この発言を受け、金融市場ではECBが連続的に利下げを実施するとの見方が強まりつつあります。
米ISM非製造業指数、予想以上の上昇
米国の9月の非製造業総合景況指数(ISM)は54.9に達し、2023年2月以来の高水準を記録しました。この伸びは、サービス業における新規受注の増加が主な要因であり、企業活動が活発化していることを示しています。特に、不動産、宿泊・飲食サービス、企業マネジメントなど12業種が活動拡大を報告しています。
一方で、製造業指数は6カ月連続で活動縮小を示しており、サービス業との乖離が一層鮮明になっています。製造業指数とのギャップは2019年末以来最大となり、二分化された経済構造が浮き彫りになっています。
また、サービス業の仕入れ価格指数は59.4に上昇し、1月以来の高水準となりました。需要の伸びが仕入れ価格の上昇を後押ししている一方で、企業は引き続き雇用を抑制している兆候も見られ、雇用指数は48.1に低下しました。ISMのミラー委員長は、レイオフよりも雇用増加の鈍化がこの低下の主因だとしています。
米国の経済指標が好調であることから、11月の利下げ幅は0.25%にとどまる可能性が高まっていますが、港湾労働者のストライキや大統領選挙など、不確実な要素が残っているため、今後の動向に注視が必要です。