FXではさまざまな取引手法が存在します。取引手法を決める上でまずしなければならないことは、長期投資をするのか短期投資をするのかということです。本記事ではFXにおける長期投資と短期投資の違いやそれぞれの特徴を解説していきます。
FXにおける長期投資と短期投資の違い
FX取引には、取引期間に基づいて異なる手法があります。これらは大きく短期売買と長期売買に分けられ、それをさらに細かく分類したものが下記の表です。
トレード手法 | 区分 | トレードの期間 | 狙う利益 |
---|---|---|---|
スキャルピング | 超短期売買 | 数秒~数分 | 為替差益 |
デイトレード | 短期売買 | 1日 | 為替差益 |
スイングトレード | 中長期売買 | 1日~数週間 | 為替差益 |
ポジショントレード | 長期売買 | 数週間~数年 | 為替差益+スワップポイント |
短期売買には、スキャルピングとデイトレードが含まれます。スキャルピングは、数秒から数分という非常に短い時間で取引を行い、小さな為替差益を手法です。一方、デイトレードは1日の間に取引を完結させ、やはり為替差益を目指します。
長期売買には、スイングトレードとポジショントレードがあります。スイングトレードは、1日から数週間かけて取引を行い、為替差益を狙う手法です。ポジショントレードはさらに長期間、数週間から数年にわたって取引を保持し、為替差益に加えてスワップポイントも利益の対象とします。
それぞれの手法は取引の期間や狙う利益によって選択され、トレーダーの戦略や市場の見通しに応じて使い分けられます。
どれか特定の手法が特におすすめというわけではないので、自分の条件に合わせて手法を選びましょう。
FXにおける長期投資の特徴
それでは、具体的に長期投資にはどのような特徴があるのでしょうか。メリットとデメリットそれぞれを順番にみていきましょう。
長期投資のメリット
長期投資の具体的なメリットとしては、下記の4つがあげられます。
福利の恩恵を受けられる
複利効果は、投資した元本とその元本から生じた利益に再び利益が生じることで資産が増加する現象です。複利の効果により、長期にわたる投資では、元本にのみ利益がつく単利方式と比較して、資産の増加幅が大きくなる可能性があります。
たとえば、年利4%の投資商品に60万円を投じ、10年間運用した場合を考えてみましょう。単利であれば10年後の資産は84万円になりますが、複利で運用した場合は約88万8,000円にまで成長します。この差は、運用期間が長くなるほど顕著になり、特に30年のような長期間では複利効果の恩恵を大きく受けることができます。
安定した利益が見込める
長期投資は、短期投資と比べると安定したリターンを目指す方法といえるでしょう。短期間では価格が大きく変動することがありますが、長期にわたって投資を続けることで、これらの変動を平均化し、リターンを安定させることが期待できます。
ただし、長期投資でも、全ての投資が成功するわけではありません。定期的な見直しや、複数の投資先への分散投資が重要です。分散投資を行うことで、一つの投資先で損失が出ても、他の投資先での利益で補うことが可能になります。これにより、全体としての投資リスクを軽減することができます。
取引にかける時間が少なくすむ
短期投資では、株やFXなどの価格変動を常時監視し、利益を得るための適切な売買タイミングを見極める必要があります。これには多大な時間が必要で、日々の生活や本業に影響を及ぼすこともあります。一方、長期投資では、短期間の利益追求を目指さないため、投資後は頻繁に市場をチェックする必要が減ります。
特に本業を持つサラリーマンなど、忙しい日常を送る人にとって、長期投資は魅力的です。一度投資を行えば、日々の価格変動に一喜一憂することなく、自分の仕事や生活に集中できるため、投資と本業を両立させやすくなります。
スワップポイントによる利益が狙える
スワップポイントとは、異なる金利の通貨を取引することで定期的に得られる収益のことです。金利が低い通貨を売り、同時に金利が高い通貨を買うことで、その金利差に基づいた収益をスワップポイントとして受け取ることができます。
長期にわたってこのようなポジションを保有するほど、スワップポイントによる収益は蓄積され、より多くの利益を得ることができます。しかし、スワップポイントの金額は、取引している通貨ペアの基準となる国々の政策金利に左右されます。政策金利が変動すると、スワップポイントの金額も変わるため、投資を行う際には、これらの金利の動向を常にチェックし、理解しておかなくてはなりません。
金利が予期せず変動すると、期待していた収益が得られない、あるいは損失が発生する可能性もあるため、注意が必要です。
長期投資のデメリット
長期投資には下記のようなデメリットも存在するため、注意が必要です。
損切りするタイミングを見失ってポジションが塩漬けになる可能性がある
長期投資は損切りルールを明確に決めておかないと、いつまでもポジションを持ち続けることになります。塩漬けになったポジションでの含み損が大きくなりすぎ、そのままロスカットになるということも珍しくありません。
FXにおける塩漬けとは、見通しが外れて含み損を抱えたポジションを損切りできず、そのまま長期間持ち続ける状態をいいます。
塩漬けをしてしまう心理的な理由は2つあります。1つ目は投資資金を大きく減少させてしまう不安です。FXに決済期限はないので「上がるまで待つ」ことは可能ですが、リスクが大きいためオススメできません。長期投資をする上では必ず損切りルールを決めてポジションを持つようにしましょう。
スワップポイントの支払いが大きくなることもある
スワップポイントとは、先述したように2つの通貨を交換するときに生じる金利差調整分のことです。FXでは、低金利通貨を売って高金利通貨を買うと、ポジションを保有している日数だけ、金利差分の利益を得られます。しかし、逆に高金利通貨を売って低金利通貨を買うと損失となります。
長期投資ではこのスワップポイントのマイナス分が膨らみやすく、コスト計算をする時に必ず考慮しておかなくてはなりません。特にマイナー通貨を取引する時にはスワップポイントが大きくなるので、取引する前に確認しておきましょう。
FXにおける短期投資の特徴
短期投資には長期投資にはないメリットやデメリットが存在します。次に、短期投資の特徴について確認していきましょう。
FXにおける短期投資のメリット
FXにおける短期投資の具体的なメリットは下記の通りです。
短期間で大きな利益を狙える
短期投資では、短い間隔で何度も取引をするため、利益をたくさん積み重ねることが可能です。特に、海外FXであれば数千倍のレバレッジをかけられるため、狙える利益も大きくなります。
例えば、ポンドなどのボラティリティが高いとされる通貨を狙えば、短期間でも大きな価格差が狙えるため、それだけ大きな利益を得られる可能性があるでしょう。ただし、大きなリターンを狙う時にはリスクが高くなるため注意が必要です。リスクを考えた上で取引するようにしましょう。
何度も取引ができ、経験が積める
短期投資では何度も取引を繰り返します。そのため、長期投資よりも多くの取引経験を短期間で積めます。特にFX初心者の方は、低リスクで何度も取引を繰り返した方がFXトレードの上達スピードも上がることでしょう。
リスクの少ない手法を使って短期投資を何度も行えば、資金をそれほど減らすことなく経験を積めます。ケースにもよりますが、短期投資はFX初心者向きの手法といえるでしょう。
FXにおける短期投資のデメリット
FXにおける短期投資には下記のデメリットもあるため注意が必要です。
スプレッドによるコストが膨らむ
スプレッドは、通貨ペアを売買する際の買値と売値の差のことです。FXでは、同じ通貨ペアでも買う時の価格と売る時の価格が異なります。この価格の差をスプレッドといいます。FXでは、通常は買いレート(ASK)の方が売りレート(BID)よりも高く、新規注文が約定した瞬間にスプレッド分の損失が発生します。
短期取引ではこのスプレッドで発生するコストが長期投資よりも多くなります。スワップポイントによるコストの影響は少ないものの、スプレッドによるコストには十分に注意が必要です。
FX取引をする一定の時間を確保する必要がある
短期取引では長期取引とは違って、ポジションを保有するとすぐに決済のタイミングが訪れます。そのため、ポジションを保有してから決済するまで基本的にはチャート画面を監視する必要があるのです。
短期とは言えども1日に数時間ほどチャート画面の前に居座っていることも珍しくありません。一定の時間をFX取引のために確保しなくてはならない点は、短期投資のデメリットといえるでしょう。
FXの長期投資・短期投資に向いているのはどんな人?
FXの長期投資・短期投資の特徴を踏まえた上で、それぞれの手法に向いている人の条件としては、下記のようになります。
長期投資に向いている人 | 短期投資に向いている人 |
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・毎日忙しく集中してトレードを行う時間が取れない人 ・小額から手軽に始めてみたい人 ・ファンダメンタルズ分析を集中的にしたい人 | ・短期的に大きな利益を狙いたい人 ・トレード時間が確保できる人 ・テクニカル分析を集中的にしたい人 |
長期投資・短期投資どちらが特におすすめだということはありません。条件によって合う人もいれば合わない人もいます。自分の条件と照らし合わせた上で、好みの手法を選びましょう。
自分に合った手法でFXを行おう
FXにおける長期投資と短期投資はそれぞれメリット・デメリットが存在します。自分にはどの手法が合っているかは、実際に取引を行うまでイマイチわからないでしょう。まずは気になる方から試してみるのがおすすめです。長期投資・短期投資に向いている人の条件などを参考にして、自分に合った手法を試してみてください。