FXのマーケットメーカー(MM)とは?ECN・STP方式の違いも理解しよう

FXのマーケットメーカー(MM)とは?ECN・STP方式の違いも理解しよう

FX取引を始める際、業者選びは非常に重要です。特に、マーケットメーカーやECN・STP方式の違いを理解することは、効果的な取引戦略を立てる上で欠かせません。本記事では、これらの方式の特徴や違い、それぞれのメリット・デメリットを詳しく解説し、最適なFX業者選びのポイントをご紹介します。

目次

FXのマーケットメーカー(MM)とは?

FXのマーケットメーカー(MM)とは?
金銭をやり取りしているイメージ

マーケットメーカーは、文字通り「市場を作る人々」という意味です。株式や通貨などの市場で常に売り価格と買い価格を提示し、市場の流動性を維持する金融機関を指します。

たとえば、外国為替市場では、銀行や証券会社が売り価格と買い価格を提示し、インターバンク市場(金融機関間で取引される市場)で取引を行います。この市場は物理的な場所ではなく、インターネットを通じて取引が行われます。

一方、FX業者が取引する市場は「対顧客市場」と呼ばれ、私たち一般の個人投資家はこの市場でFX業者と取引を行います。このように、マーケットメーカーは市場の安定と流動性を保つ重要な役割を果たしています。

FX業者のマークアップと利益構造

FX業者が顧客に提示する価格の仕組みは、実はとてもシンプルです。まず、FX業者はマーケットメーカーから通貨ペアの売り値(Bid)と買い値(Ask)を仕入れます。例えば、魚屋さんが市場から魚を仕入れ、それに自分の利益を加えた価格で販売するのと同じです。

FX業者もこの原理に従います。マーケットメーカーから仕入れた価格に、自社の利益を加えて顧客に提示します。

FX業者がのせる利益の加算部分を「マークアップ」と呼びます。

FX業者がマーケットメーカーからの仕入れ価格に利益を加えずに販売した場合、彼らには利益が発生しません。そのため、彼らは利益(粗利)を加えた価格で取引を提供します。

この利益はFX業者にとって重要です。利益がなければ、ビジネスを継続することはできず、顧客に高品質なサービスやトレーディング環境を提供することもできません。したがって、適切な利益を確保することは、FX業者にとっても、私たち個人投資家にとっても重要なのです。

FXにおけるマーケットメーカーの役割

マーケットメーカーはFX取引をする上での中核となる重要な役割を担っています。次にマーケットメーカーの具体的な役割について確認していきましょう。

価格の安定性を維持する

マーケットメーカーは流動性を担保して価格の安定性を維持する役割を担っています。流動性の高い市場では、価格が安定しており、ビッド(買い値)とアスク(売り値)の差(スプレッド)が狭いことが特徴です。市場の信頼性は、その効率性に大きく影響します。マーケットメーカーは、市場の変動が激しくても、さまざまな価格を設定できる能力と意志が求められます。

ただし、マーケットメーカーが価格の安定を図るのは単なる善意からではありません。市場を健全に保つことは彼らの利益にもつながるためです。価格の連続性が保たれない場合、マーケットメーカーは損失を被るリスクがあります。

継続的な活動を維持する

マーケットメーカーは、市場での継続的な活動と迅速な対応が求められます。資産が売買される際に常に取引の相手方として存在し、取引がスムーズに進むようにするのもマーケットメーカーの役割です。

リアルタイム取引は、信頼できるマーケットメーカーによって支えられています。金融機関は、このようなマーケットメーカーを通じて、顧客に迅速な取引サービスを提供することができます。

FX業者の注文の仕組み

FX業者の注文の仕組み
為替取引をしているイメージ

それでは、FX業者が採用している注文の仕組みについて紹介します。FX業者が顧客からの注文を処理する際、主に「DD方式」と「NDD方式」の2つの方法があります。これらの方式の違いを簡単に比較すると以下のようになります。

DD方式(Dealing Desk)の概要
  • ディーリングデスクの存在: あり
  • 特徴: スプレッドが狭いとされる
  • FX業者の利益源: スプレッドとポジションの取り込み(呑み)
NDD方式(Non-Dealing Desk)の概要
  • ディーリングデスクの存在: なし
  • 特徴: 約定力が高いとされる
  • FX業者の利益源: スプレッドと取引手数料(ECN方式で特に)

DD方式はディーリングデスクを通じて注文が処理され、スプレッドが狭いことが特徴です。一方、NDD方式ではディーリングデスクがなく、ECNやSTPを通じて直接市場に注文が送られ、約定力が高いことが特徴です。また、NDD方式では取引手数料が利益の一部となることが多いです。

「ECN方式」と「STP方式」の違い

トレーダーにとって、NDD方式が一般的に有利とされています。NDD方式の中には、「ECN方式」と「STP方式」という2つの異なる発注方法があります。次に、2つの発注方法の違いと、それぞれの方式のメリットとデメリットについて確認していきましょう。

約定力が非常に高い「ECN方式」

ECN方式は、「Electronic Communications Network(電子通信ネットワーク)」の略で、アメリカの金融商品を電子的に取引する私設取引システムのことです。ECN方式では、為替取引がECNという私設取引所を通じて行われます。

ECN方式では、個人トレーダー、ファンド、FXブローカー、証券会社、銀行などのさまざまな「Liquidity Providers(流動性提供者)」の売買注文が絶えずマッチングされ、取引が成立します。参加者の注文は板情報として表示され、どのような価格でどれだけの注文が出されているかが確認可能です。

ECN方式のマッチングはオークション形式です。売買注文が合致すると、コンピューターによって即座にマッチングされ約定します

ただし、反対注文が少ない場合はマッチングせず、取引が成立しないこともあります。

ECN方式の特徴

ECN方式の大きな特徴は、多くの大口取引先が参加しているため、約定力が非常に高いことです。スプレッドは常に最小とは限らず、スリッページが発生することもありますが、リクオートは発生しません。これにより、安定して取引を行うことが可能です。これがECN方式の主なメリットです。

取引の透明性が何よりも魅力

ECN方式を採用するFXブローカーは、取引量に基づいて手数料を取ります。生スプレッドに手数料を加えないため、取引の透明性がECN方式の大きな魅力の一つです。

しかし、この方式にはデメリットもあります。十分な約定力を確保するためには、一定の流動性(取引量)が必要です。そのため、取引量が少ない市場や特定の通貨ペアでは、取引が成立しないことがあります

さらに、ECN方式を採用しているFXブローカーでは、初回入金額が比較的高く設定されていることが多いです。これは、FX取引を気軽に始めたい人にとってはネガティブな点となる可能性があります。

FX業者が一度注文を呑む(決済する)「STP方式」

STP方式(Straight Through Processing)は、注文が直接市場に流れる発注方法です。STP方式を採用しているFXブローカーは、金融機関のレートを基にして、そのレートにスプレッドを加えてトレーダーに提示します。

STP方式では、ブローカーが提示するレートとカバー先のレートの差がブローカーの利益となります。カバー先が多ければ多いほど、より有利なレートを提供することが可能です。

STP方式のFXブローカーは、トレーダーからの注文を受けた後、まず自らがその注文を引き受け(呑む)ます。その後、ブローカーはすぐにカバー先に注文を出しますが、この時点でのレートによってはブローカーが損失を被ることもあります。そのため、ブローカーは損失を避けるためにリクオート(再提示)を行うことがあります

STP方式はInstant ExecutionとMarket Executionの2つに分類される

STP方式には、主に「Instant Execution(インスタントエクスキューション)」と「Market Execution(マーケットエクスキューション)」の二つの注文方法があります。

Instant Execution(インスタントエクスキューション)では、「即時注文決済」が行われます。トレーダーが注文すると、FXブローカーはすぐにその注文を引き受けますが、実際の取引はまだ発生していません。その後、ブローカーはほぼ同時にカバー先の金融機関に注文を流します。このため、ブローカーによる「呑み」は一瞬のことになります。

Market Execution(マーケットエクスキューション)はInstant Executionの反対で、FXブローカーがトレーダーの注文を直接カバー先の金融機関に出す方法です。この方法ではリクオートは発生しませんが、注文が即時に決済されない場合、スリッページが生じる可能性があります。

また、Market Executionを提供するFXブローカーの中には、「DMA(Direct Market Access)」という電子的なシステムを使って、トレーダーの注文を市場価格で成立させることがあります。DMAを利用すると、市場と直接つながることで透明性が高まり、遅延の少ない取引環境が得られます

ただし、市場の性質上、固定スプレッドは提供されません。そのため、固定スプレッドを提供しているFXブローカーは、DMAを使用していないと考えられます。

自分に適した取引環境を選択しよう

海外のFXブローカーの多くは、ECN方式とSTP方式の両方の口座を提供しています。透明性に関しては、ECN方式がより高いとされていますが、手数料やスプレッドの観点からは、STP方式が取引に有利な場合もあります。自分のトレードスタイルや取引額を考慮して、最適な方式を選びましょう。

マーケットメーカーとECN・STP方式を理解してFX業者を探そう

FX取引における業者選びは、マーケットメーカーとECN・STP方式の理解から始まります。各方式の特徴、メリット・デメリットを把握し、自分の取引スタイルに合った環境を選ぶことが成功への鍵です。価格の安定性や取引の透明性、約定力など、重要なポイントをこの記事で学んだ知識を基に、最適なFX業者を選びましょう。効果的なトレード戦略のために、これらの情報を活用してください。

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