FX取引はチャンスとリスクが大きい世界です。特に海外FXは、ゼロカットシステムによってリスクを軽減できることが魅力の一つです。しかし、多くのトレーダーがその仕組みやデメリットを理解することは容易ではありません。本記事では、海外FXのゼロカットシステムについて詳しく解説し、国内FXとの違いやそのシステムがなぜ存在するのか、そして適切な海外FX業者の選び方を提供します。これが皆さんのFX取引を安全かつ効率的に行うための参考になれば幸いです。
海外FXのゼロカットシステムとは?
ゼロカットシステムは、主に海外のFX業者が提供するサービスで、トレーダーの口座残高がマイナスにならないようにするシステムです。
FX取引では、レバレッジを用いて大きな取引を行うため、急激な市場の動きにより大きな損失が生じることがも少なくありません。これにより、口座の残高がマイナスになり、トレーダーが追加の資金を提供しなければならない状況(追証)が発生することがあります。
しかし、ゼロカットシステムが適用されている場合、トレーダーの口座残高がゼロ以下になることはありません。つまり、投資した金額以上の損失が出ないようにすることができます。これは、特に大きなリスクを伴うFX取引において、投資家が安心して取引を行うための重要な制度となっています。
国内FXではゼロカットシステムがないため追証が発生してしまう
国内のFX業者では、ゼロカットシステムがないため、取引により損失が発生した際、口座残高がマイナスになる可能性があります。これは「追証」と呼ばれ、投資家が取引を行う際に十分に留意すべきリスクの一つです。
例えば、あなたが100万円を証拠金として設定し、レバレッジを活用して1,000万円相当の取引を行ったとします。もし市場が予想と反対に動き、証拠金の100万円を上回る損失が発生した場合、その損失分はあなたの口座残高から差し引かれます。これがマイナスとなると、追証が発生し、あなたは追加の資金を提供しなければならない状況に直面します。
国内FXでゼロカットシステムがない理由
なぜ国内FXではゼロカットシステムが採用されていないのか疑問を持つ方もいるかとは思いますが、それは日本では金融商品取引法第39条により、取引業者が顧客の損失を補填する行為が禁止されているためです。
第三十九条 金融商品取引業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
二 有価証券売買取引等につき、自己又は第三者が当該有価証券等について生じた顧客の損失の全部若しくは一部を補填し、又はこれらについて生じた顧客の利益に追加するため当該顧客又は第三者に財産上の利益を提供する旨を、当該顧客又はその指定した者に対し、申し込み、若しくは約束し、又は第三者に申し込ませ、若しくは約束させる行為
出典:e-Gov
この「顧客の損失を補填する行為」とはゼロカットシステムも該当するため、国内FX業者ではゼロカットシステムを採用できない仕組みになっています。
海外FXでゼロカットシステムがある理由
ゼロカットシステムは投資家の損失分を無償で補填する制度のため、ブローカー側にとってはコストにしかなりません。それでは、なぜ海外FXではゼロカットシステムが採用されているのでしょうか。
まず、海外のFX業者は日本の金融商品取引法の影響を受けません。したがって、日本法に規定されているような取引顧客の損失補填が禁止されているというルールに縛られず、ゼロカットシステムを導入しやすい環境にあります。その結果、顧客がトレードを通じて大きな損失を出した場合でも、その損失を補填することが可能となるのです。
次に、ゼロカットシステムを採用することにより、トレーダーはリスクを最小限に抑えつつ活発に取引を行うことができます。海外のFX業者はゼロカットシステムを通じて、顧客に安心して多くのトレードを行ってもらいたいと考えています。
さらに、一部の国では法律でゼロカットシステムの採用が義務付けられています。これにより、FX業者はトレーダーの潜在的なリスクを軽減し、より安全な取引環境を提供することが求められています。これらの理由から、海外FX業者はゼロカットシステムを採用しています。
海外FXのゼロカットシステムの仕組み
ゼロカットシステムは海外FXならではの優れた制度です。それでは、実際にゼロカットシステムはどのような仕組みになっているのでしょうか。ゼロカットが行われるまでの具体的な流れは下記のとおりです。
- 含み損が増える
- 証拠金維持率がブローカーが設定しているロスカット水準の値を下回る
- 強制ロスカットが執行される
- ロスカットされたが間に合わず口座残高がマイナスになる
- ブローカーが口座残高のマイナス分をゼロにリセットする
まず、取引を進めていく中で、投資家の持つポジションに対する含み損が増えていきます。それが一定の水準に達すると、次に証拠金維持率が動き出します。この証拠金維持率とは、口座の証拠金(自己資金)に対する使用中の証拠金(必要証拠金)の比率のことを指し、それがブローカーが設定したロスカット水準の値を下回ると、強制的にロスカットが執行されます。
ロスカットとは、証拠金が一定の水準以下になった場合に、ブローカー側が自動的に投資家のポジションを閉じることを指します。しかし、市場の急変により、ロスカットが間に合わず、口座残高がマイナスになる場合もあります。ここでゼロカットシステムが登場します。マイナスとなった口座残高を、ブローカーがゼロにリセットするのです。
海外FXのゼロカットシステムのメリット
海外FXのゼロカットシステムは、投資家にとって多くのメリットを提供します。
巨大な負債を背負うリスクを排除する
最も重要な要素としては、巨大な負債を負うリスクを排除することができます。具体的には、突然の市場の急変などで口座残高がマイナスになったとしても、ブローカーがそれをゼロにリセットするため、投資家は追加の資金を出す必要がありません。
投資家の精神的な負担を軽減する
取引を行う上で、大損した場合のリスクを考えると、心理的なプレッシャーは避けられません。しかし、ゼロカットシステムにより、そのようなリスクが排除されるため、より自由に、かつ冷静に投資判断を下すことができます。
初心者投資家にとっても特に有益
取引経験が少ない初心者は、市場の変動に対応するのが難しく、大損するリスクが高いです。ゼロカットシステムを利用すれば、そのリスクを抑えつつFX取引を学んでいくことが可能です。
海外FXのゼロカットシステムのデメリット
ゼロカットシステムは多くのメリットを提供しますが、海外FXのゼロカットシステムには一部デメリットも存在します。
ブローカーの信用度によるリスク
海外のFXブローカーによるゼロカットシステムの適用はそのブローカーの裁量によるため、ブローカーが倒産した場合や財務状況が悪化した場合などにはゼロカットが適用されず、投資家が大きな損失を被る可能性があります。
高リスクの取引を促す可能性がある
投資家が追証リスクを意識しなくなり、高レバレッジでの取引やリスキーな取引に手を出しやすくなるという懸念があります。これにより投資家自身のリスク管理が疎かになる恐れがあるのです。
ゼロカットシステムを採用する海外FX業者の選び方
海外FX業者でゼロカットシステムを利用する際には、以下の点に注意して選ぶことが重要です。
金融ライセンスを取得しているか確認する
まずは、海外FX業者が金融ライセンスを取得しているかどうかを確認しましょう。ライセンスを持つ業者はその国の金融監督機関により適切な運営がなされていると認定されているため、安心して取引を行うことができます。
大きなイベント時にはレバレッジを制限しているか確認する
FXでは影響度の高い経済指標発表などの大きなイベント時には市場が大きく傾く可能性があります。
例えば、2015年1月のスイスフランショック時には、米ドル/スイスフランで2,820pips、スイスフラン/日本円では3,947pipsの値動きがあったとされています。このような以上事態の時には、ハイレバレッジによる損失が膨らみ、業者が補填しきれず破綻してしまう可能性も考えられるでしょう。
また、価格が大きく動く可能性が高い状況では、ロスカットが遅れる可能性があるのでリスクが高いです。レバレッジ制限されていれば、リスクを自動的に抑えられるので、心配な方はレバレッジを制限の有無を確認しましょう。
顧客の資産は信託保全や分別管理により管理されているか確認する
業者が顧客の資産を信託保全や分別管理により適切に管理しているか確認することも重要です。信託保全や分別管理が適切にされている場合、業者が破綻した場合でも顧客の資産が運営資金と切り離されて管理されているため、返金の可能性が高くなります。
ゼロカットシステムはトレーダーを守る制度
本記事を通じて、海外FXのゼロカットシステムの本質とそのメリット・デメリットを理解することができたことと思います。また、海外FX業者を選ぶための重要なポイント、具体的には金融ライセンスの確認、レバレッジの制限状況、資産の保全・管理方法、そしてロスカット水準の確認などについても学びました。FXは高リスク・高リターンの金融商品です。ゼロカットシステムはそのリスクを一定の範囲に抑える手段ですが、必ずしも全てのリスクを排除するものではないことを理解し、自身のリスク許容度に合わせたトレードを行うことが重要です。