クリスマスと年末年始は、FX市場において特別な時期です。この期間は、多くの企業が休業し、市場参加者が減少するため、流動性が低下し、フラッシュクラッシュのリスクも高まります。本記事では、この時期の市場の特徴と、トレーダーが取るべき戦略について詳しく解説します。ブローカーの営業時間の確認、ポジションの調整、マイナー通貨ペアの取引回避、短期取引の重要性など、年末年始のFX取引に役立つポイントをご紹介します。
クリスマス・年末年始のFX市場の特徴
クリスマス・年末年始のFX市場は、祝日が絡むため普段とは違う環境となります。「仕事が休みだからFXトレードにチャレンジしよう」と思っていても、普段とは異なる相場なので注意しなくてはなりません。まずはクリスマス・年末年始のFX市場の特徴を確認していきましょう。
多くの企業が休みになり参加者が減る
クリスマス・年末年始のFX市場は、世界中の多くの企業が休業することにより、市場参加者が著しく減少します。特に、アメリカを含む主要国では、12月24日のクリスマスイブから新年の1月1日までが一般的に休暇期間とされています。この期間中、企業の活動はほとんど停止し、金融機関の為替ディーラーも休暇を取ることが多いため、FX市場の流動性は大きく低下するのです。
この流動性の低下は、市場の価格変動に大きな影響を及ぼします。通常、市場には多くの参加者がいるため、一定の流動性が保たれ、価格の変動は比較的安定しています。しかし、この時期には参加者が少なくなるため、少量の取引でも価格に大きな影響を与えることも少なくありません。その結果、取引量は極めて低調になり、通常時に比べて価格の変動が大きくなることもあるのです。
特に、クリスマス休暇前は為替ディーラーがポジションを決済するため、相場が荒れやすい傾向にあります。年末年始の為替市場の傾向は下記の通りです。
- 12月24日:アメリカが休暇のためトレードは低調
- 12月25日:日本以外の主要国が休場
- 12月26日〜31日:日曜以外開いていますが、トレードは低調
- 1月1日:世界中の為替市場が休場し
- 1月2日〜:通常に戻りますが、クリスマス休暇直後のため低調が続く
クリスマス・年末年始の期間はアメリカ経済指標の発表もないため、市場の動きは限定的です。ヨーロッパやオーストラリアなどキリスト教徒が中心の国々も、クリスマスイブから元旦まで休暇となります。インドネシアやマレーシア、シンガポールのような多様な宗教や民族が存在する国々でも、クリスマス当日は祝日です。これらの国々の休暇も、FX市場の参加者減少に影響を及ぼします。このように、クリスマス・年末年始は世界的に休暇が多く、FX市場の活動は大きく縮小する傾向にあります。
普段よりも流動性が低下する
前述したように、年末年始のFX市場では、普段よりも流動性が低下します。参加者が少ないため、少ない資金で為替相場を動かすことが可能になりますが、これは必ずしも利益を生む機会とは限りません。流動性の低下は、大量の為替取引を困難にし、約定しにくくなることがあります。
たとえまではに優れたFXブローカーであっても、年末年始はスリッページが発生するリスクが高まります。
さらに、為替相場が静かであるかのように見えても、突然の急変動が起こる可能性があります。このような状況では、レート配信が滞ることも考えられるでしょう。そのため、プロトレーダーでさえ、この時期の市場への積極的な参加を控えることがほとんどです。
フラッシュクラッシュにも要注意
クリスマス・年末年始に特に注意しておかなくてはならないのが「フラッシュクラッシュ」です。フラッシュクラッシュに巻き込まれてしまうと、「損失が膨らんでしまって一瞬で強制ロスカット」なんてことになりかねません。
フラッシュクラッシュは、数秒から数分で終わることが多いですが、長期間続くこともあります。市場のボラティリティが拡大すると、特にアルゴリズム取引を利用する投資家にとって取引のチャンスが増えますが、予期せず価格が急落するリスクもあります。
過去には年末年始にフラッシュクラッシュが起こった事例があります。2019年1月3日、FX市場でフラッシュ・クラッシュが発生し、ドル円は108.9円から104.8円へ400pips以上急落し、AUDUSDも500pips下落しました。原因はアップル社の中国市場業績下降修正発表で、特に豪ドルが大きく影響を受けました。この時期、多くの日本人トレーダーが休暇中で、突然の市場変動に驚き、多くが大きな損失を被りました。
フラッシュ・クラッシュはFX取引の大きなリスクであり、市場の不確実性を象徴する現象です。このような突発的な市場変動は予測不可能であり、適切なリスク管理が重要です。
FXでクリスマス・年末年始にやっておくべきこと
クリスマス・年末年始はリスクの高い環境となるため、トレードするのはあまりおすすめできません。しかし、せっかくの休日ということもあり、FXトレードに没頭したいという方もいることでしょう。そんな方向けにクリスマス・年末年始にFXトレードでやっておくべきことを最後に紹介していきます。
取引しているブローカーの営業時間を確認しておく
クリスマス・年末年始にFXトレードを行う場合、取引しているブローカーの営業時間の確認が重要です。市場が開いている期間でも、FXブローカーによって取引可能な日程や時間は異なります。したがって、利用している業者の公式サイトで、営業時間を各自で確認することが必要です。
特に海外FX業者の営業時間は、クリスマスや元旦に大きな変動があります。例えば、ある大手業者では12月24日は翌02:00にクローズし、クリスマス当日は終日取引が停止します。12月26日は16:00からオープンし、大晦日は翌02:00にクローズ、元旦は終日停止となります。1月2日からは16:00から通常営業を再開します。これは海外FX業者に限らず、国内業者も元旦は終日クローズすることが多いです。
このように、年末年始のFXトレードでは、ブローカーの営業時間を事前に確認し、計画的に取引を行うことが重要です。営業時間の確認は、特にFX初心者にとっては必須の知識と言えます。予期せぬ市場クローズによる取引機会の損失を避けるため、事前にスケジュールを確認しておきましょう。
ポジションの調整を行っておく
年末年始のFX取引では、ポジションの調整が不可欠です。この時期は相場変動が高い確率で起こるため、多くのトレーダーがリスクヘッジのためにポジションを調整します。経験豊富なプロのFXトレーダーであっても、年末年始のポジション調整がなければ安心して年を越すことはできません。
一部のトレーダーは年末年始のボラティリティを利用して利益を得ようとしますが、多くの人はこの時期に休息を取りたいと考えます。ポジション調整とは、予期せぬ市場の変動に備えるリスクヘッジの手段です。特に年末年始は過去にも相場変動が頻繁に起こっており、適切な対策を講じないと大きな損失を招く可能性があります。
したがって、年末年始に向けてのポジション調整は、FXトレーダーにとって重要なプロセスです。この時期には、市場の不確実性が高まるため、慎重な取引戦略とリスク管理が求められます。ポジションの調整を通じて、予期せぬ市場の動きに対応し、安全なトレーディングを目指すことが重要です。
取引量の少なすぎるマイナー通貨ペアは避ける
FX取引において、マイナー通貨ペアの取引は特に初心者にはおすすめしません。トルコリラや南アフリカランドなどの通貨は、取引量が少ないため、小さな大口注文でも価格が大きく動くことがあります。このような通貨ペアは、フラッシュクラッシュのリスクが高いと言えます。
スワップ狙いでこれらの通貨を保有している経験豊富なトレーダーにとっては問題ないかもしれませんが、FX初心者がこれらの通貨でトレードするのはリスクが伴います。マイナー通貨ペアは市場の流動性が低いため、価格の変動が予測しにくく、突然の大きな動きに直面することもすくなくありません。
したがって、FX初心者はより流動性の高いメジャー通貨ペアを選ぶことをおすすめします。これにより、市場の動きをより理解しやすくなり、リスク管理がしやすくなります。
マイナー通貨ペアの取引は、市場の動きに慣れ、リスク管理の技術を身につけた後に取引しましょう。
長期ではなく短期取引を行う
クリスマス・年末年始FX取引において、短期取引は長期保有に比べて安全性が高いと言えます。スキャルピングやデイトレードは、注文から精算までをその日のうちに完了させる手法です。したがって、市場の急激な変動、特にフラッシュクラッシュのリスクを避けることができるメリットがあります。
長期保有の場合、フラッシュクラッシュが発生した際に逃げる手段が限られます。一方で、短期取引では、市場を離れることが容易であり、ポジションを持たない時間が多くなるため、フラッシュクラッシュの影響を受けにくくなるでしょう。短期売買手法を採用することで、リスクを大きく減らすことが可能です。
クリスマス・年末年始のFXトレードには要注意
クリスマスと年末年始はFX市場において独特な振る舞いを見せます。企業の休業による参加者の減少、流動性の低下、フラッシュクラッシュのリスクなど、この時期の市場は通常と異なる動きをします。効果的なトレードを行うためには、ブローカーの営業時間の確認、ポジションの適切な調整、マイナー通貨ペアの避けること、そして短期取引の重視が重要です。これらのポイントを押さえ、年末年始のFX取引に備えましょう。